学生時代は、大人と子どもの狭間で悩むことも多かった
――本作は1つの楽曲から3本の映画がつくられるという試みのもとで製作されました。最初にお話を聞いた時はどのように感じましたか?
小川未祐(以下、小川) これまでにあるようであまりなかった企画だなというのが、最初の印象でした。それから、監督の皆さんが若手の方ばかりで、それぞれ素敵な作品を撮られている方々が揃っていたので、すごく面白そうだなって。
――製作されたのは、「トイレのハナコ」(児山隆監督)、「豚知気人生」(枝優花監督)、「十年と永遠」(中川龍太郎監督)の3本で、小川さんは「トイレのハナコ」に出演されています。監督の印象はいかがでしたか?
小川 児山監督は以前にも他の現場でご一緒したことがあったんですが、その時はCMの撮影だったので、映画の現場で一緒にお仕事をするのは今回が初めてだったんです。なので、「やっと映画でご一緒できる!」とうれしかったですね。
――初対面の監督と顔見知りの監督とでは、気持ちの上で違いはあるのでしょうか?
小川 全然違いますね。特に私は、初めての方だと緊張してしまうところがあるので。すでに関係性ができているというのは、 現場に入る上ですごくありがたいといいますか、大事なポイントだったりします。
――3本の中で、本作は特にシリアスな作品かと思います。脚本を読んだ時や、改めて作品を観た時の感想を教えてください。
小川 まず完成した3作品を観た時に、それぞれ全く違うテイストになっていたのがすごく面白いと思いました。「トイレのハナコ」に関していうと、私は高校生という設定だったのですが、自分自身も学生時代に感じていたようなことがそのままの形で反映されていたので、そこはすごく共感できましたし、当時の気持ちを取り戻したような感覚がありました。
――小川さんが演じた主人公の季美は、思春期ならではの悩みを抱えている役柄です。最初から違和感なく役柄を受け入れられましたか?
小川 そうですね。自分と重なる部分はあったので。
――具体的に、どのような部分が重なったのでしょうか?
小川 学生時代って、こうといった明確な理由があるわけではないけれど、社会に対して何となくモヤモヤするとか、周りの大人にちょっとした嫌悪感を抱くとか……そういうことってあると思うんです。私自身も少なからずあったので、そういう部分が自分と共通していると感じました。
――ちなみに当時はどのようなことに悩んでいたのでしょうか?
小川 私はもともとダンスをやっていて、高校も通信制の学校だったので、一般的な学生生活を送ったのは厳密にいうと中学生までなんです。だけど、年齢的にカテゴライズされるのは学生ですし、とはいえお仕事の現場ではいろんな大人と関わる中で、未熟ながらも大人としての自覚を持たなければならない場面も多々あったりして。そういった大人と子どもの狭間で、日々感じるものが沢山ありました。
――そのような時に、誰かに吐き出したりはしていたのですか?
小川 うーん、どうでしょう。でも、素敵な大人にたくさん出会えたなというのは、この数年ですごく実感していて。そういう方たちといろんな話をしていく中で自然と考え方が変わったというか、大人になることはそんなに悪いことじゃないって思えるようになったので、そこはとても感謝しています。