脚本を読んで、すごく切なくてもどかしい気持ちになった
――今回の企画について、最初にお話を聞いた時はどのような印象を受けましたか?
菊地姫奈(以下、菊地) 秦基博さんの楽曲をベースにして3本の映画がつくられるということで、「一体どんな感じに仕上がるんだろう?」というわくわくする気持ちと、秦基博さんは以前から知っていてすごく好きなミュージシャンだったので、素直にうれしい!という気持ちでした。実際に完成してみて、さまざまな世界線を生きる人たちそれぞれに寄り添った作品になったんじゃないかなと思います。
――製作された「トイレのハナコ」(児山隆監督)、「豚知気人生」(枝優花監督)、「十年と永遠」(中川龍太郎監督)のうち、菊地さんが小川未祐さんとW主演を務めた「トイレのハナコ」は最もシリアスな作品です。脚本を読んだ時はどう感じましたか?
菊地 初めて脚本を読んだ時は、すごく切なくてもどかしいような気持ちになりました。現代の社会問題にも通じる描写もあったりして、目を背けてはいけないことが描かれていると感じたので、きっと観ていただいた方にもそうした問題を考える気持ちになってもらえる作品だと思います。
――菊地さんが演じたハナコは、10代の家出少女という役柄です。ご自身の年齢とほぼ同じ世代ですが、何か共感する部分や共通している部分などはあると思いますか?
菊地 ハナコは私にすごく似ているというか、監督の児山さんが私に寄せて何度も考え直してつくり上げてくださったキャラクターなので、共通する部分はすごく多いと思います。
――具体的にはハナコのどんなところにそう感じたのでしょうか?
菊地 たとえば、「そんなこと普通はしないよね」みたいなことを急にしちゃうところとか、あんまり物事を考えていなさそうな感じがあるところとかが、私とすごく近いというか(笑)。だから、撮影中もわりと自然体で演じることができました。
――役づくりをする上で監督と話し合ったことは何かありましたか?
菊地 私に寄せてつくっていただいた役なので基本的にはとても演じやすかったんですけど、それでもハナコの言葉で理解しにくい部分がたまにあったりしたので、そういう時は監督に何度も相談して一緒に考えながら頑張りました。ですから、私自身にとってすごく大切な作品です。
――撮影は横浜の野毛で行ったと聞いています。横浜の中でもディープなエリアと言われていますが、印象はいかがでしたか?
菊地 今まで見たことのないような街並みで……何だろう、ちょっとノスタルジックっていうんですかね?そんな感じの風景で楽しかったです。映画の雰囲気にも合っていて、すごくワクワクしました。
――現場の雰囲気はいかがでしたか?
菊地 ストーリー自体はシリアスでピリッと空気の張り詰めた作品ではあるんですけど、現場はそれとは全然違ったすごく明るい雰囲気でした。共演した小川さんとよくお喋りもしましたし、あと監督がいつもフィルムカメラを持ち歩いていて、撮影をしていない時にもパシャパシャ撮ってくれるのが、とても楽しかったです。