枝優花監督が描くのはシュールで不条理なストーリー。家族に翻弄される主人公を熱演

――今回、U-NEXTで独占配信された映画『イカロス 片羽の街』は、アーティストの秦基博さんの新曲「イカロス」をモチーフに、楽曲にインスピレーションを受けた3本の短編が束ねられた作品ということですが、企画を聞いた時はどんな印象を受けましたか?

菅生新樹(以下、菅生) 今回はオーディションだったので、オーディション合格の知らせを受けた後に「楽曲からインスピレーションを得て作る企画」と聞きました。そういった映画の作り方は珍しいことなのか、よくあることなのか、僕には分からなかったのですが、非常に新鮮で、面白い企画になりそうだと感じました。

――3作それぞれの作品は、ストーリー上は関連がなく独立しており、違ったドラマ展開に仕上がっていました。そんな中、菅生さんが主演された「豚知気人生」の脚本を読んだ時はどんな印象でしたか?

菅生 今回の脚本は枝優花監督のオリジナルストーリーで、「シュールだな」という印象でした。父親が転生するという話はありそうなんですが、心に響くストーリーでクスッと笑える状況にも関わらず誰一人としてふざけていなくて、全員いたって真剣で。そういうシュールな展開が面白そうだなと素直に思いました。

――ちなみに、菅生さん演じるツキが抱く父親に対する思いで、ご自身が共感する部分や、親子の関係性として理解できる部分はありましたか?

菅生 幼少期のツキも僕が演じた青年期のツキも、結局はずっと家族に振り回されているんですよね。それは父親だけでなく母親にもです。共感するといったことではないですが、自転車に乗るシーンや、捨てられたぬいぐるみをゴミ捨て場に取りに行くシーンなどに、ツキと父親の関係性が上手く表現されているなと感じました。

――父親役の渋川清彦さんの印象はいかがでしたか?

菅生 渋川さんは、一言でいえばカッコいい人でした。もちろん俳優歴的にも大先輩ですし、年齢も僕よりかなり上の方ですけど、現場での佇まいというか、どっしりと落ち着きのある様子を見て「カッコいい」と思いました。渋川さんにとっては当たり前かもしれないですが、僕から見れば、何事にも動じずに、いざお芝居になれば役に入り込む姿勢や、それでいて謙虚な物腰が「素敵な方だな」という印象です。

――「男が惚れる男」という感じでしょうか。

菅生 はい!まさにそういう方でした。