「監督に全て委ねる」ことに挑戦し、ストイックに役作りに取り組んだ映画

――今回、どのような経緯で『赦し』出演のお話をいただいたのでしょうか?

松浦りょう(以下、松浦) ケイズシネマで開催された『コントラ』の舞台挨拶にお伺いしたんです。監督にご挨拶した時の私のことを覚えていてくださっていて、『赦し』のオーディションに直接呼んでいただいたんです。そのあと、オーディションを経て、福田夏奈役として選んでいただきました。

――脚本を読まれた時、どのような印象を受けましたか?

松浦 オーディションで脚本の抜粋を読ませていただいた時から、正直、「これは私がやるべきだ」と思ったんです。もちろん、殺人を犯したり、刑務所にいたりしたことはないですし、誰かを殺したいという感情になったこともないんですけど。中学生や高校生の時、友達がほぼいないというか、自分から作りにいくことをしなかったタイプだったので、福田夏奈が抱えている孤独は、すごく分かると感じる部分があって。大好きな監督の作品で、「これはすごい作品になるぞ」という期待もあったので、「この役は絶対にやりたい」と思いました。

――ポスターを含め、福田夏奈を演じていらっしゃる時と、今の松浦さんとで、たたずまいが全く違う印象を受けたのですが……。

松浦 全然違いますよね(笑)。友達からもメインビジュアルの写真を見て「これはりょうじゃないみたい」って言われます。メイクなどで見え方を変えている部分もあるんですけど、福田夏奈役が決まった時、「普段のりょうは、福田夏奈よりも健康的でハツラツとしすぎているから、役作りをしっかりしてほしい」と監督から指示をいただいたので、そこを意識した結果かなと。

――具体的には、どのように役作りをされていたのでしょうか?

松浦 実際に殺人を犯した方のインタビューや記事を読んだり、刑務所での生活を調べて、できるだけ近い環境に身を置いたり。その間は、人とあまり関わらず1人で部屋にいる生活をしていました。役作りを2ヶ月くらい行った状態で撮影に臨み、撮影の時も私だけ隔離するような環境をつくっていただいていました。それと、体重も3kgほど落としたりして。だからなのか、撮影期間中には、なんか知らぬ間に涙が流れている……みたいなこともあって、自分でも、撮影当時の自分と今の自分の精神状態って全然違うなと感じます。

――これまでご出演された映画でも、そのようなストイックな役作りをされていたのですか?

松浦 あそこまで自分を追い込んだのは初めてでした。でも今回は、自分に対する修行じゃないですけど、監督に全て委ねてみようと思って。監督が「これをしろ」と言ったら、言われたことを100%するように自分に課していました。

――いろいろな資料を読んで役作りをされていたとおっしゃっていましたが、元々裁判や犯罪といったテーマに興味はありましたか?

松浦 関心はあるのですが、私、ニュースを見るのも怖いくらいの怖がりなんですよ。感情移入しやすい人間なので、ニュースを見ていても自分のことのように感じてしまって。亡くなった方のご家族の方のインタビューとかも、いたたまれなくなって見られないんです。役作りをしている間は正直、精神的に参っちゃって、悪夢を見てしまい眠れないこともありました。なので、最後のほうは、夜だけは自分の生活に戻そうと。夜に松浦りょうとしてしたいことをする生活に変えたら、割とバランスを取れるようになったんですけど、そういうところも含めて、手探りで取り組んでいる感じでした。

――福田夏奈を演じられるなかで、特に印象に残ったシーンはありますか?

松浦 基本的には、演じたらそのままOKをいただけることが多かったんですけど、ポスターにもなっているシーンだけは、監督のなかにはっきりと理想のイメージがあったらしくて、何度やってもOKが出なくて。あまりにもできなくて、最後のほうは泣いてしまったんです。皆さんにご迷惑をおかけしつつも、慰めていただいたりもして、そのあとに挑戦したらやっとOKが出て。だからちょっと泣き腫らしたような目になっているんです。あとで監督に聞いたら、「あれも演出であえて厳しくしたんだよ」っておっしゃっていて、本当?って思っちゃいましたけど(笑)。

――映画を観に来られるティーンに向けて、見どころを教えてください。

松浦 私自身、自分が出ていることは関係なく、「本当にすごい映画だな」と感じた作品です。98分がこんなにあっという間で、こんなに没頭できる映画ってなかなかないな、と。福田夏奈は殺人という罪を犯してしまったし、それは絶対ダメなことだけど、その背景にある関係性自体は身近にあると私は思うんです。だからこそ、お友達とかご家族とか、人との関係に少しでも悩んでいたり、何か抱えているものがあったりする方は、観ていただけたらきっと伝わってくるものがあると思います。