高校時代に組んだガールズバンドで遠征したことも

――『未完成STAR』の聴きどころを1曲ずつ紹介してください。まずは、アニメ「⽼後に備えて異世界で8万枚の⾦貨を貯めます」のオープニング主題歌「光ったコインが⽰す⽅」からお願いします。

前田 物語の始まりに相応しい疾走感のあるビートが、“夢を叶えたいんだ”という歌詞と相まって、前向きな気持ちになれる曲です。自分の殻を破るような感覚で、熱い気持ちをぶつけながら歌いました。

――「Fantasy」はいかがでしょうか?

前田 中毒性がありピアノフレーズが印象的なダンスチューンで、最初に聴いた時は鳥肌が立ちました。突き抜けた曲で、攻めの姿勢がめちゃくちゃ格好いい。特に “存在証明”、“ここが私のステージ”という歌詞は、私の思いを反映していただけて、うれしかったです。

――続いて「ポジティブガール」についてお願いします。

前田 今の前田佳織里の対外的なイメージを表したような曲で、一つひとつに真摯に向き合い、努力を重ねてキラキラ輝くような、ポジティブな姿は私の理想でもあります。みんなの背中を押す応援ソングになったらうれしいです。

――リアルな前田さんはポジティブですか?

前田 みんなからは「めっちゃポジティブだよね」と言われます(笑)。人見知りもしないし、楽しいことが好きだから、ポジティブというか明るいのかな。悩む時は、悩む時間を作って切り替えるようにしています。

――悩んだ時は人に相談するほうですか?それとも自分で解決するほうですか?

前田 悩みの答えが分かっていることが多いので後者ですね。どうしようもない時は、家族のLINEに変なスタンプを送ったりしています(笑)。実家で飼っているチワワの写真を返信で送ってくれるので、それを見るとほっこりした気分になり、悩みを忘れます。

――では続いて「花⾹リ春薫ル」についてお願いします。

前田 EPのリリース日が3月15日なので、「春の歌を作りたいです」とお願いして作っていただきました。他の3曲は比較的アップテンポな曲だから、歩きながら聴いてもらえるような、ややスローテンポな曲を希望しました。素敵な曲ですよね。

――春は好きですか?

前田 春生まれというのもあり、一番好きな季節です。春の間はずっと浮かれています(笑)。新年度でワクワクするし、「部屋の模様替えをしてみようかな」と思ったり、新しい場所を散歩してみたくなったり、新しいことにチャレンジしてみたくなります。

――先ほどのお話にあった高校時代のガールズバンドは、どのようなきっかけで始められたのですか?

前田 映画の『BECK』のように成り行きで始めました。ダンス同好会という部活の見学に行った時に、偶然出会った子から「私、ギターやりたいんよ。バンド組まん?」と声をかけられて。私は当時めちゃくちゃカラオケにハマっていて、歌い手さんに憧れていたから「実はボーカルをやりたい」「じゃあ組もう」という流れになりました。バンドメンバーは4人で、中学時代にパーカッションをやっていた子をドラムに誘い、もう一人は塾が同じだった他校の子が軽音部に入ったと聞き「学校は違うけど入ってくれない?」と押しかけました(笑)。でも、学校では部活としては認めてもらえず、署名運動をしてもダメで。仕方がないので、自分たちでスタジオを借り、週3回くらいの頻度で集まって活動していました。

――どんな曲を演奏していましたか?

前田 チャットモンチーさんやELLEGARDENさんのカバーをしていました。地元のバンド大会に出るために、オリジナルソングも作りました。

――前田さんも曲を作られたのですか?

前田 一応、歌詞を考えましたが、ギターの子にめちゃくちゃダメ出しされました(笑)。

――ライブハウスで活動されていたのですか?

前田 はい。ありがたいことに、演奏を聴きに来てくれるファンの方がいて。他県のライブハウスさんからお声がかかり、遠征に行ったこともあります。

――地元には、他にも同世代のガールズバンドはいましたか?

前田 北九州の小倉で活動していたのですが、当時はガールズバンドが流行っていて私たちを含めて3グループありました。私たちはチャットモンチーさん、もう一つのバンドはSCANDALさん、もう一つはステレオポニーさんのカバーと、うまくすみ分けてお互いに意識し合っていました(笑)。

――オリジナルはどういう曲でしたか?

前田 チャットモンチーでボーカル・ギターを担当していたえっちゃん(※橋本絵莉子の愛称)の歌声に影響を受けて作ったかわいい曲でした。でも、今振り返ると恥ずかしいです(笑)。

――大会にも出られていたそうですね。

前田 はい!準優勝しました。高校時代に一番打ち込んでいたのはバンド活動ですね。ビビるくらい練習して、めちゃくちゃハマっていました。バンドのみんなで「いつか、デモテープを作りたいね」と言っていましたが、それぞれの道を考えるようになって、バンドとしてプロになる夢は叶いませんでした。