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作品を通して、自分を肯定してもらえたら

――ゲームアプリのキャラクター・ナポレオンが現実に飛び出してくるという不思議な設定の『ナポレオンと私』ですが、作品の印象としてはいかがですか?

武田 最初にお話をいただいたときは「ファンタジー寄りの作品なのかな」と思っていたんですけど、本読みをしたり実際にお芝居をしていく中で、ファンタジーではなく現実世界に沿ってストーリーが進んでいくので、とても身近に感じられる作品だなと思いました。『ナポレオンと私』というタイトルの通り、観てくださる方が“私”の気持ちになって一緒に物語を歩んでくれたらうれしいなと思っています。

――確かに設定こそ奇想天外ですが、物語は主人公の自宅やオフィスで展開されます。

武田 そうなんです。ごく普通のアラサー女子の前にポンとナポレオンが現れて、飛び出てきた瞬間は違和感があるんですけど、ナポレオンがだんだん現実世界に馴染んでいく感じが面白いなと思います。

――武田さんが演じた主人公・春子は、自分に自信が持てず恋も仕事も前に進めない28歳。演じる上でどのような意識をされましたか?

武田 自分と重ね合わせて観ていただきたいという気持ちが強かったので、できるだけ等身大でいることを意識しました。たとえば、つい強がってしまう瞬間だったり、泣きたいけど笑ってごまかしてしまう瞬間だったり、「その気持ち、分かる」と思っていただきたかったので。私自身も春子の気持ちがすごく理解できたし、きっと同じような経験をしている女性も少なくないと思うので、そういう感情も乗せながら演じました。

――演技に関して、頃安祐良監督から何か指示はありましたか?

武田 春子ってけっこう悩んでいる女の子なので、最初は「どうせ私なんて……」みたいな内気な性格の子として演じようとしていたんです。でも監督からは「決して残念な子には見えてほしくない。むしろみんなの前ではずっとニコニコしていてほしい」と言われて。確かにずっと内気だと観ている方も共感しにくくなっていたと思うので、監督の助言は大きかったです。

――ナポレオンとの共演シーンはいかがでしたか?現実ではありえない状況なので難しかったのでは?

武田 ナポレオンはゲームアプリの中に存在するキャラクターなので、(※ナポレオン役を演じた)濱(正悟)さんはキャラに近づけるよう努力されたと思います。逆に私は作り込まずに演じようと決めていたので、それこそ春子とナポレオンが初めて出会うシーンはちぐはぐ感があるんですけど、それがむしろリアルだなって。「あなた誰!?なんでここにいるの!?」と驚いている春子とやけに冷静なナポレオンの対比は注目していただきたいポイントです。

――ちなみに、撮影現場はどのような雰囲気だったんですか?

武田 初日はそれこそナポレオン役の濱さんが立っているだけで違和感がすごくて、みんなで笑っていましたね。でも2日目からはナポレオンの存在が身近に感じられるようになってきたので、逆に撮影後、濱さんが私服に着替えると「あれ、誰?」みたいな感覚になりました(笑)。

――濱さんの印象は?

武田 濱さんと初めてお会いしたのは(※ナポレオン役を決める)オーディションの場でした。そのときはあいさつ程度で特に会話もなく、クールな印象でしたね。でも実際に撮影現場に入るとすごくチャーミングで、周囲を笑わせてくれる方だったので印象がガラッと変わりました。

――濱さんのチャーミングエピソードはありますか?

武田 よくものまねをしてくれましたね。たとえば濱さんがニャンちゅうのものまねをしてくれているときに私がふざけて「うんそうだよね、しんちゃん」って言ったら、即座にクレヨンしんちゃんのものまねで返してくれて!それがとても楽しかったです(笑)。

――では、本作に込めた武田さんの想いを聞かせてください。

武田 作品の中では恋や仕事など人生に悩むアラサー女子が主人公として描かれていますが、悩みってきっと性別や年齢関係なく抱えているものだと思うんです。そういう方々にこの作品を観ていただいて、自分を一つでも肯定してもらえたらなって。「自分のことを好きになってみよう」と少しでも思ってもらえたらうれしいです。

悩みがあることは、悪いことじゃない

――ところで、武田さん自身はどのような10代を過ごされたんですか?悩みなどは抱えていましたか?

武田 私は高校生のときに事務所に入って役者の仕事を始めました。当時から私にはお芝居と空手という2つのやりたいことが明確にありました。「今の私は恋愛なんかしている場合じゃない!」みたいな頑固な子だったので(笑)、友達が恋愛トークをしていてもその輪に加われないのはちょっと悩みでしたね。とはいえ、そのことはまったく後悔していません。悩むことってマイナスに捉えられがちですけど、それだけ自分と真剣に向き合っている証拠だと思うんです。もちろん悩みがないのも素晴らしいことだけど、悩みがあることも悪いことじゃないと思うので、悩んでいる自分を否定しないであげてほしいです。

――武田さんが役者を目指したきっかけを教えてください。

武田 6歳くらいの頃ですね。我が家には金曜や土曜の夜に家族みんなで映画を観るという習慣があって、そこでジャッキー・チェンの映画とかを観て「私もこういうのをやりたい!」って言ったんです。すると父がオーディション雑誌を買ってきてくれて、そこからオーディションを受けるようになりました。

――オーディションに合格するまでにかなり苦労されたとか。

武田 そうなんです。事務所に所属するために小学生の頃からオーディションを受け続けていたんですけど、300回は落ちているんです。同級生から「お前じゃ芸能人なんて無理だよ」って否定的な言葉を浴びたこともありますし、実際にオーディションに行っても周りには自分よりかわいくてお芝居も上手な子がいっぱいいるから「自分じゃ無理だ」って思ったこともありました。

――それでもオーディションを受け続けられたんですね。

武田 はい。300回以上落ちましたけど、高校2年生のときにやっと受かって今の事務所に入ることができました。だから、今の10代の皆さんも失敗を恐れないでほしい。私もオーディションを経験して「なんで落ちたんだろう」と自分と向き合って、失敗からいっぱい学ぶことができました。私の場合は空手も、勝つだけじゃなく負けてからのほうが強くなれました。成功だけがすべてじゃないと思います。

――6歳で夢を見つけて、そこからまっすぐに夢を追われているんですね。

武田 小さな頃に夢を見つけられたことは、自分にとってはすごく良かったなと思っています。もちろん私の周りにはやりたいことが見つからなくて悩んでいる同世代の子もいましたけど、年齢を重ねていくうちに新たな夢ややりたいことも見えてくると思うので、10代のうちは焦らなくて大丈夫だと思います。

――武田さんも、役者としてお芝居を続けることで“新たな夢”が見つかりましたか?

武田 はい。今も海外でお仕事はさせていただいているんですけど、もっともっと海外の作品に携わっていきたいという思っています。あとは、自分で企画をして、世界に持っていけるようなアクション映画を作りたいという夢もあります。数年前、韓国での映画祭で各国のアクション映画に携わる方々が集まって国際会議をする機会があって。そのときに「日本には忍者や侍の映画はたくさんあるのに、空手や武道を題材にした映画がなぜないのか」と言われたんです。確かにハリウッドでは『ベスト・キッド』のような空手を題材にした映画はたくさん作られているのに、日本ではなぜか少ないんです。なので私としては、日本の武道を題材にした作品を作って世界に広めたい。それが私の夢ですね。

――では最後に読者へ向けて一言お願いします。

武田 『ナポレオンと私』は「この映画を観て人生が変わりました!」というような作品ではないと思うんですけど、「もうちょっと自分のことを好きになってみよう」とか「明日は自分の言いたいことを言ってみよう」とか、気持ちをプラスにしてくれる作品だと思います。心に少しでもモヤモヤしたものを抱えている方はぜひ観ていただけたらと思います。

Information

『ナポレオンと私』
2021年7月2日(金)より、池袋HUMAXシネマズ、渋谷HUMAXシネマ、横須賀HUMAXシネマズ他全国ロードショー

武田梨奈
濱正悟
綾乃彩 岡林佑香
永吉明日香 白鳥紗良 米村真理 金子祐史
笈川健太 村田唯 輝海 荒井レイラ
染谷俊之
主題歌「realizer」浦島坂田船
監督:頃安祐良 脚本:鈴木規子

WEB制作会社で営業アシスタントとして働いている28歳の大原春子(武田梨奈)。同僚たちの結婚ラッシュで焦りを感じてはいるものの、ここ数年、恋愛から遠ざかっている春子は、絶賛人生迷子中……。同僚の伊原ゆか(綾乃 彩)から恋愛ゲームを勧められるも、これまで恋愛ゲームに興味がなかった春子は乗り気になれずスルー。ある日、憧れている会社の先輩・岩田伸吾(染谷俊之)が新プロジェクトのメンバーを募集していることを知るのだが、岩田は春子にとって高嶺の花。後輩の西園寺里穂(岡林佑香)も岩田先輩を狙っている様子だが、春子は何もできず、ただ見ているだけ。不釣り合いな自分が情けなく、寂しさを紛らわすように恋愛ゲームをインストールしてみると、画面の中にいるナポレオンというキャラクターが目に飛び込んできた。「こんなイケメンがリアルにいたら幸せだけど実際いないしなー。はぁ、誰か幸せにしてー!」と叫んだその時、画面の中からナポレオン(濱 正悟)が現れた!? ナポレオンは《春子が本当に幸せを見つける手助けをする為に現れた》という。あり得ない状況に混乱する春子だったが……。ナポレオンと春子の奇妙な同居生活が始まった。いつも見守ってくれるナポレオン。少しずつ変わっていく春子が見つける、本当の幸せとは何なのか? 憧れの先輩・岩田への切ない片思いの行方はいかに? 異世界から現れた英雄が愛を運んできてくれる《妄想系ラブストーリー》。

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武田梨奈

女優

1991年、神奈川県生まれ。2009年に映画『ハイキック・ガール!』で主演に抜擢される。映画『デッド寿司』(2013年)でテキサス「Fantastic Film Festival 2012」にて主演女優賞、第1回ジャパンアクションアワードのベストアクション最優秀賞(女優)を受賞。『組谷物語-おくのひと-』(2014年)では第26回東京国際映画祭「アジアの風」にてスペシャルメンションを受賞するなど、多くの映画祭で受賞を果たす。代表作はBSテレ東ドラマ「ワカコ酒」(2015年~)の主演を務めるほか、映画『進撃の巨人』(2015年)、『三十路女はロマンチックな夢を見るか?』(2018年)、『世界でいちばん長い写真』(2018年)、『いざなぎ暮れた。』(2020年)など多数の映画に出演。今後は映画『吾輩は猫である!』『ジャパニーズ スタイル Japanese Style』、日米印合作映画『Shambhala-シャンバラ-』などが待機中。

Photographer:Toshimasa Takeda,Interviewer:Yutaka Satoh