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世界中から注目されている村上春樹原作の話題作

世界三大映画祭の1つであるカンヌ国際映画祭。『ドライブ・マイ・カー』は日本映画として唯一、パルム・ドールを競うコンペティション部門に出品された。

本作は村上春樹の短編小説の映画化。原作を収録した『女のいない男たち』(文春文庫刊)は、19か国語に翻訳されていて、バラク・オバマ元大統領が「2019年のお気に入りの本」に挙げたことでも話題となった。

ストーリーを紹介。

主人公、舞台俳優で演出家の家福(西島秀俊)は、愛する妻(霧島れいか)と死別してしまい、悲しみに苛まれ、行き場のない喪失感を抱えて生きていた。妻との記憶が刻まれた愛車で演劇祭に向かった家福の前に、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーみさき(三浦透子)が現れる。家福はみさきと過ごしていく中で、あることに気づかされていく。孤独な2人がたどり着いた場所とは――?

胸に迫るストーリーで、観る者の心が突き動かされる圧巻のラスト。実力派俳優たちが集結したことで世界的に注目を集めている。カンヌ国際映画祭開幕を目前に控えて行われた壮行会イベントでは、濱口竜介監督をはじめ、西島秀俊、三浦透子、霧島れいかが集結。カンヌ映画祭への意気込みを熱く語った。

濱口竜介監督は2016年『ハッピーアワー』で、ロカルノ、ナント、シンガポールをはじめ数々の国際映画祭で主要賞を受賞。2020年にはベネチア映画祭で銀獅子賞を受賞した黒沢清監督の『スパイの妻』の脚本も担当。現在世界中から最も注目を集めている日本映画の監督の一人である。2018年に公開された商業映画デビュー作『寝ても覚めても』に続いて、今回が3年ぶり2度目のカンヌ国際映画祭に出品となる。

舞台に登壇した濱口監督は、「自分としても、素晴らしいものが映っている映画だと思っているので、コンペティションに選ばれた結果は誇らしく感じています」と自信たっぷりに語る。

主演を務めた西島も「これからもっともっと大きくなる濱口監督の作品に参加させていただいて、非常に光栄です。一俳優として素晴らしい体験ができて、今回カンヌという場所で世界中の方たちに観てもらえるのはとても嬉しいことです」と笑顔を見せた。

登場人物たちのバックボーンまで感じさせる物語

完成した作品の感想を求められると、西島は「架空の人物たちが架空の物語を生きているんですが、そこに真実が映っていると感じる瞬間が多くて、今の日本に生きる人たちの心の中が鋭く描かれた作品です。それは同時に世界中の人たちも同じように感じている普遍的なものに繋がっているとも思います」と本作の魅力を語る。

2時間59分もの上映時間だが、「物語に没頭して観られるので、あっという間に感じると思います。体感としては1時間半ぐらいの感覚かな」と、西島は実感を込める。

三浦も満面の笑みを浮かべて、「登場人物たちのバックボーンまで感じさせる物語だからこそ、目も耳も捉えて離さない緊張感をずっと味わえました」と語った。

さらに霧島も、「試写で完成作品を観終わったあと、『すごい映画ができた』という感動に包まれて、監督にこの興奮を伝えたいんですけど、うまく言葉で出てこなくて、監督にも『すごい』しか言えなかったんです」と、試写で興奮したことを振り返る。

自ら脚本も手掛けた濱口監督は、「キャストの皆さんの感想を聞いて嬉しく思っています」と顔をほころばせた。

濱口監督は村上春樹の作品の映画化に際して、他の作品の要素(『シェエラザード』『木野』)を一部取り入れた上で、「原作小説の登場人物がそれぞれ長編にし得るほどの魅力とポテンシャルを備えており、1つの問いかけとして、映画はどう答えるのか。村上春樹さんは文章で物語を紡いでいきますが、自分は役者さんと一緒に作っていくので、役者さんが役を演じることが喜びになるように、現場の環境を整えていきました」と明かした。

西島は撮影現場を振り返って、「濱口監督の演出方法はたくさんあって、ひたすら本読みをやり続けたり、映画本編にはない『かつてあったであろう』過去をリハーサルで演じてみたりと、すごく刺激的な体験でした」と回想。「国も年齢もまったく違う海外のキャストたちと共有できたのも素晴らしくて、僕は本読みが好きになってしましました」と、濱口監督の演出を絶賛した。

霧島も「撮影に入る前に長い時間、西島さんと本読みをさせていただいて、そこで感じたものをそのまま現場に持っていくといくことができたと思います、私も本読みが心地よくて、落ち着いて演技に入れることができました。今では本読みがないと物足りないぐらいです」と語った。

劇中での運転シーンのために免許を取得したという三浦も、「運転が上手に見えるように準備しました。車の中というプライベートな空間で、家福とみさきが理解し合っていく過程がすごく丁寧に描かれていく映画なので、相手の表情や心の変化を感じるとるためにも、本読みが役作りに直結できました」と同意した。

日本にこんな素晴らしい俳優がいるんだということを世界に広めていきたい

トークがどんどんと盛り上がっていく中で、濱口監督、三浦透子、霧島れいかの3人が、7月6日から開催されるカンヌ国際映画祭に参加することを発表。

西島は残念ながら予定が合わず、国内に残ることになったのだが、カンヌに出発する3人に向けて、「世界中の人の反応が知りたい。意外な反応などもあると思うので、この映画がどのように世界の人の目に映ったのか。是非聞かせてほしいです」と、熱いメッセージを送った。

濱口監督は「本当に西島さんあっての映画なので、そのお披露目の場に西島さんがいないのは、正直に寂しいという思いです」と話し、それだけに「日本にこんな素晴らしい俳優がいるんだということを世界に広めていきたい」と、改めて意気込みを述べた。

三浦は「どんな場所なのか楽しみで、いろんなものを目に焼き付けていきたい」と喜びを語り、霧島も「今からワクワクが止まらないです」と満面の笑みを浮かべた。

記者から濱口作品の魅力を聞かれた西島は「今という時代を生きる人たちの心の中をちゃんと映した作品」として、「人と人はどうしても気持ちが繋がりきれずに、相手のことが分からないところがある。特に断絶が広がっていると言われている現在、濱口監督はそういった現実を真正面から描きつつ、最後は言葉を紡ぎ続けることで辛い現実を乗り越えようとしている」と、素直な気持ちを述べた。

三浦も濱口監督の作品の魅力は「言葉の力にある」と分析。「普段の濱口監督も丁寧に言葉を選んで話される方で、そういう濱口監督が時間をかけて選んだ言葉のパワーが、登場人物たちの台詞一つひとつに常に宿っていると思います」と語った。

霧島も「とても繊細な言葉を慎重に選んで、映画の中で真実を突いてくるような印象です。人生で見つけられない何か大切なものを見つけてくれるような、私たちを導いてくれる力がある」と、監督の言葉を賞賛した。

原作者の村上春樹にどのような思いを伝えたいのかと問われた西島は、「個人的に高校生の時からずっと作品を読んでいて、村上春樹さんのファンでした。村上さんの小説を自分が演じることがあればと、いつもどこかで考えていました」と感慨深げに語った。

さらに西島は、「かつて村上春樹さん原作の市川準監督の『トニー滝谷』(2004年)という映画でもナレーションを務めたこともありますが、今回の『ドライブ・マイ・カー』の話をいただいた時はどうしても自分で演じたいと思った。毎日全身全霊を込めて演じたのでとても幸せです」と、熱量を込めて述べた。

濱口監督も、「村上春樹さんに試写会のご案内をお送りしたところ、『一般公開された時に地元の映画館で観ます』というお返事をいただきました。映画化の許諾を得る際に、原作と映画とでは細部のディテールが異なることはお伝えしたのですが、実際に村上さんが映画をご覧になられて、どう感じられるのか、非常に楽しみです」と答えた。

キャストたちが監督の演出に絶大な信頼を寄せる『ドライブ・マイ・カー』。カンヌ映画祭の現地で世界中の人々が本作にどのような反応を示すのか。否が応にも期待が膨らむ壮行会イベントとなった。

Information

『ドライブ・マイ・カー』
8月20日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

西島秀俊
三浦透子 霧島れいか /岡田将生
原作:村上春樹「ドライブ・マイ・カー」(短編小説集『女のいない男たち』所収/文春文庫刊) 監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介 大江崇允 音楽:石橋英子
©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
配給:ビターズ・エンド

妻との記憶が刻まれた車。孤独な二人が辿りつく場所――。驚異的なストーリーと胸に迫る演技が導く、心突き動かされる圧巻のラスト!俳優であり演出家の家福は、愛する妻と満ち足りた日々を送っていた。しかし、妻は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう。2年後、演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。行き場のない喪失を抱えて生きる家福は、みさきと過ごすなかであることに気づかされていく――。原作は、村上春樹による珠玉の同名短編小説。この作品に惚れ込み映画化を熱望、自ら脚本も手掛けるのは、いま世界が最も熱い注目を寄せる気鋭・濱口竜介監督。主演を務めるのは日本映画界に欠かせない名優、西島秀俊。みさきを三浦透子が演じるほか、岡田将生、霧島れいか、と実力派俳優陣が集結した。

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