登場人物たちのバックボーンまで感じさせる物語

完成した作品の感想を求められると、西島は「架空の人物たちが架空の物語を生きているんですが、そこに真実が映っていると感じる瞬間が多くて、今の日本に生きる人たちの心の中が鋭く描かれた作品です。それは同時に世界中の人たちも同じように感じている普遍的なものに繋がっているとも思います」と本作の魅力を語る。

2時間59分もの上映時間だが、「物語に没頭して観られるので、あっという間に感じると思います。体感としては1時間半ぐらいの感覚かな」と、西島は実感を込める。

三浦も満面の笑みを浮かべて、「登場人物たちのバックボーンまで感じさせる物語だからこそ、目も耳も捉えて離さない緊張感をずっと味わえました」と語った。

さらに霧島も、「試写で完成作品を観終わったあと、『すごい映画ができた』という感動に包まれて、監督にこの興奮を伝えたいんですけど、うまく言葉で出てこなくて、監督にも『すごい』しか言えなかったんです」と、試写で興奮したことを振り返る。

自ら脚本も手掛けた濱口監督は、「キャストの皆さんの感想を聞いて嬉しく思っています」と顔をほころばせた。

濱口監督は村上春樹の作品の映画化に際して、他の作品の要素(『シェエラザード』『木野』)を一部取り入れた上で、「原作小説の登場人物がそれぞれ長編にし得るほどの魅力とポテンシャルを備えており、1つの問いかけとして、映画はどう答えるのか。村上春樹さんは文章で物語を紡いでいきますが、自分は役者さんと一緒に作っていくので、役者さんが役を演じることが喜びになるように、現場の環境を整えていきました」と明かした。

西島は撮影現場を振り返って、「濱口監督の演出方法はたくさんあって、ひたすら本読みをやり続けたり、映画本編にはない『かつてあったであろう』過去をリハーサルで演じてみたりと、すごく刺激的な体験でした」と回想。「国も年齢もまったく違う海外のキャストたちと共有できたのも素晴らしくて、僕は本読みが好きになってしましました」と、濱口監督の演出を絶賛した。

霧島も「撮影に入る前に長い時間、西島さんと本読みをさせていただいて、そこで感じたものをそのまま現場に持っていくといくことができたと思います、私も本読みが心地よくて、落ち着いて演技に入れることができました。今では本読みがないと物足りないぐらいです」と語った。

劇中での運転シーンのために免許を取得したという三浦も、「運転が上手に見えるように準備しました。車の中というプライベートな空間で、家福とみさきが理解し合っていく過程がすごく丁寧に描かれていく映画なので、相手の表情や心の変化を感じるとるためにも、本読みが役作りに直結できました」と同意した。