三つ巴の頂上決戦

最後に開催されたのが、2日間のメインイベントともいえる「男子エリート」。すでに競技を終えた選手たちもコートに熱視線を送っている。本番の3分間のライディング前には「パトックタイム」と呼ばれる練習時間が設けられているのだが、ここではコートの状態を確認するほかに、観客へのアピールや、ライバル選手への精神的揺さぶりも重要となってくる。否が応でも会場の緊張感は高まる。

決勝に進出した8名は実力者ばかりだが、中でも注目すべき選手は3名。前回のJapan Cup優勝者である伊藤真人選手。驚異的なスピードと正確性で注目される早川起生選手。この競技の第一人者であり、2021年世界選手権2位を獲得した佐々木元選手。30歳のディフェンディングチャンピオンか、19歳のニューカマーか、36歳の絶対的エースか。予選通過順位では伊藤選手が5位、早川選手が2位、佐々木選手が1位となっていた。

3選手の中で最初に登場した伊藤選手は、抜群のスピードと高難易度のトリックを滑らかに決める技量で貫録を見せつける。緩急をつけた技の組み立ても申し分ない。芸術性の高いライドは唯一無二だ。

一方、リアトリックで信じられないようなスピンをいきなり決めた早川選手には「これはヤバい!」「人体改造しているんじゃないですか?」とMC2人も唖然とした様子。その後もノーミスのまま、最後までアグレッシブなルーティンを連発していく。人間業とは思えない動きの数々に会場からはため息も漏れるほどだった。

あまりにも完璧な早川選手の次にライディングすることになった佐々木選手は、「少し考える時間をください」と神妙な表情を見せる。しかし勝負が始まってしまえば自身の名前がついた「元スピン」をはじめ、世界レベルのテクニックを惜しみなく披露。

全選手がライドし終えると、ジャッジ4人が白熱した議論を重ねている様子が見え隠れする。スコアは本当に僅差のようで、いつも以上に結果発表に時間がかかり、自然と会場の緊張感も高まっていく。

結果は3位が伊藤選手、2位に佐々木選手、そして1位に輝いたのは早川選手。表彰台に立った佐々木選手は「公式競技では、通常みんなミスのない演技を心がけるもの。だけど、早川選手は新技を出すなど“攻めたライド”を披露しました。そんな彼の様子を見て、正直、“守って2位を目指そうか”という考えも頭をよぎりましたが、それではやはり男が廃る。全力を出し切って勝負に出ることにしました。結果的には2位になりましたが、やり切ったことで今は清々しい気持ちです」と万感の想いでマイクする。

▲左から佐々木選手、早川選手、伊藤選手

一方、優勝した早川起生選手は 「もともとプレッシャーに弱いことに加えて、コロナ影響もあったし、一緒の大会に出場している弟たちも先に表彰台に上がっていたので……本当によかった」と安堵の表情でコメント。「これからも今回以上に攻めたライディングをして、もっともっと見ている人が面白いと感じるような選手になりたい」と改めて決意のほどを激白。フロアの3階まで埋まったオーディエンスから惜しみない拍手が若き新チャンピオンに送られた。

この日、早川選手によってBMXフラットランドの歴史が塗り替えられたのは間違いない。優勝が告げられた瞬間、はにかむような笑顔を見せる早川選手に対して佐々木選手と伊藤選手は「おめでとう」と握手を求めた。