ショッピングモールは現代のリアルな青春の舞台

――『サイコト』の舞台は群馬県高崎市をモデルとした架空の地方都市です。あえて首都圏から離れた場所を舞台に選ばれたのはなぜでしょうか?

イシグロ ショッピングモールや団地が並ぶ地方都市を舞台にしようと提案したのは、大さんからでした。今の地方都市に住まう少年少女の青春の舞台は、遊びも食べ物も、生活にまつわる全てが揃うショッピングモールなんですよね。都市部に生きる人って本当にわずかな割合なので、今一番日本全国で同じような青春の風景が広がっている場所はどこ?となった時、ショッピングモールだと。そこでドラマが動き出すのが一番たくさんの人に刺さるんじゃないかという話になり、舞台づくりをしていきました。

――地方都市と音楽をどのように掛け合わせていこうと考えられましたか?

イシグロ 僕は劇中における音楽は、ことさら強調するのではなく、自然にその場所で流れているものであった方がいいと思っています。地方都市の牧歌的な風景に、今作の主題歌を歌ってくれたnever young beachさんの音、大貫妙子さんの歌、牛尾憲輔さんの劇伴といった、ポップな音を当て込んだ時、地方の光景が今まで見たことない全く違うカラフルな風景になるのではないか?というヴィジョンが浮かびました。

――確かに、田園風景が広がる光景のバックで、牛尾さんによる流麗な音が流れた瞬間、あぜ道がものすごくスタイリッシュな風景に変わった気がしました。

イシグロ 見え方が変わりますよね。音楽映画としての姿を前面に押し出していないながらも、すごく音楽の力を感じる作品になったなと思います。