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撮影現場でも品川ヒロシ監督とディスカッション

――今回、主演を務めた映画『リスタート』が映画初出演とのことですが、とても初めてとは思えない演技力でした。

EMILY ありがとうございます!たまたま私が出演した『家、ついて行ってイイですか?』を見た品川ヒロシ監督が声をかけてくださって、「音楽の仕事があったら声かけてくださいね」って言ってたら、「演技は興味ない?」と言われて。正直やったこともないし、自信もなかったんですけど、私はハングリーなので(笑)。「なんでもやります」って言ったら、いきなり主演というお話で、「そんなことある?」みたいな。もう信じられなかったですね。

――撮影までの準備期間はどれぐらいあったんですか?

EMILY 1か月くらいです。品川監督がマンツーマンで本読みをしてくださって。「質問があれば夜中でもいいから連絡ちょうだい」って言われたので、私は言葉通り受け取って、夜中に連絡して「こう台本に書いてあるけど理解できない」「この主人公、自分勝手じゃないですか?私は応援できないんですけど」みたいなことを言ったら、品川監督はディスカッションするだけではなく、セリフを変えてくれることもありました。

――役者さんの意見を柔軟に聞いてくれるんですね。

EMILY 話し合った結果、品川監督が「確かにそうだね」と納得してくださる時もあれば、「未央は弱いところもあって、でもみんなに支えられている子だから」と私が腑に落ちるまで話してくださる時もありました。

――初演技で、そこまで意見を言えるEMILYさんもすごいです。

EMILY 生意気なことを言わせていただきました。というのも私自身、演技は最初で最後だろうという気持ちでお請けしたので、遠慮なく、伸び伸びやらせてもらいました。

――主人公の未央は、EMILYさんへの当て書きだったそうですが、初めて脚本を読んだときの感想はいかがでしたか?

EMILY セリフもそうですし、上手くいかずに追い詰められている感じとか、言い訳を探しちゃってる感じとか身に覚えがあったので、最初は演じるのが怖くなっちゃったんです。あまりにも未央が自分に近くて、ネタにできないというか。なので品川監督にも「私にこの役できるんですかね?」みたいな話もして。でも、これを乗り越えられたら自分にとってものすごく成長できる機会だなと思ってやらせてもらいました。

――それだけ未央に共感できたということですね。

EMILY 監督が私たち(HONEBONE)の曲を全部聴いてくださって、さらに私のブログを遡って読んでくださって、私の考え方をすごく探ってくれたんですよね。だから未央が自分そのもので、より怖くなっちゃったんです。ただ「私じゃないな」って感じるところもあって、そこはディスカッションをして察してもらいました。

「この映画でどうにか成り上がろうぜ」という空気が撮影現場にあった

――クランクインして、実際の演技はいかがでしたか?

EMILY 私の演技が上手くいかないときは、すぐに品川監督がカメラを止めてくれて、「ちょっと今のはわざとらしかった」と紐をほどいてくれるような演技指導をしてくれましたし、「EMILYとしてはどう思う?」とディスカッションもしてくれたので、すごく演じやすかったです。

――地下アイドルを演じるシーンはいかがでしたか?

EMILY ものすごく恥ずかしかったですね(笑)。普通の役者さんだったら、役をもらっただけでも「ありがとうございます」って話なのに、私は「足は出したくない」とか「ダンスは踊れません!」とか泣き言を言っていたんですけど、品川監督は真剣に取り合わず、「できるできる大丈夫!」みたいな感じで乗せてくれました。

――演技自体に恥ずかしさはありましたか?

EMILY 恥ずかしいのかなって思ったんですけど、初めて役者さんたちが集まって本読みをしたときに、中野英雄さんや黒沢あすかさんなどキャリアのある方たちもいらっしゃる中で、恥ずかしいなんて言ったら失礼だなと思ったんです。だから全体の本読みの初日から恥ずかしさは抜けて、「演じきっている人の方がかっこいいじゃないか」という気持ちで臨めました。

――映画のクライマックスとなるライブシーンは北海道・下川町で撮影されたんでしょうか?

EMILY はい。下川町の倉庫を借りて、地元の方にも数百人来ていただきました。

――普段のライブとの違いはありましたか?

EMILY 普段と全く変わらなかったんです。というのも役者さんやスタッフさんだけではなく、下川町の人たちも来てくださったので、自然とミュージシャンの私になったんです。演技しなきゃいけないところなんでしょうけど、目の前にいる人たちがライブに飽きて、HONEBONEのEMILYってつまらないと思われたくなかったんですよね。映画なので同じ曲を何回も撮ったんですけど、全部本気で歌いました。

――映画の前半は東京が舞台で、途中から下川町へと移りますが、ロケーションが違うことで演技に変化はありましたか?

EMILY ありました。ストーリーを順番通り撮っていったので、東京にいるときは都会の喧騒や窮屈さを感じていたんですが、北海道に移動して、下川町という町の独特な魅力に浄化されていって、だんだん演技もほどけていく感覚がありました。

――撮影現場は熱気にあふれていたそうですね。

EMILY 「この映画でどうにか成り上がろうぜ」という空気がずっとありました。中野さんやあすかさんも最初は落ち着いていらっしゃったんですけど、途中から「この映画は何か違う!」と言ってくださったんです。中野さんは「初めて演技をしたときに感じた懐かしい自分に会った気がする。この気持ちを大事にしたい」と話してくださいました。

――完成した映画を見ていかがでしたか?

EMILY セリフを言ってる自分が恥ずかしいという気持ちはずっとありつつ(笑)。初演技だけど頑張って演じている自分の姿を見てほしくなりましたし、私と同じくもがいている役者さんたちを見てほしいなと思いました。自分の名前を上げようと必死な役者さんたちが集まって、本気で映画を作っている姿に何かを感じてほしいです。

24歳ではっきり答えを持って活動した方がいいことに気づいた

――EMILYさんは東京出身ですが、地方からシンガーソングライターを夢見て上京してきた未央の気持ちは理解できましたか?

EMILY 正直、上京の孤独はわからないんですが、父が栃木県出身で「こんな町は嫌だ」という気持ちで上京したと聞かされていたので、それを未央に落とし込んだ部分はあります。あと私自身、ハングリー精神はあるんですけど、「あいつより上に行ってやる!」という気持ちは希薄で。個人的な意見ですけど、ミュージシャンを目指して東京に来た上京組に、そういう気持ちを強く感じてきました。そういう過去に会ったことのあるミュージシャンを思い出して演技の参考にさせていただきました。

――EMILYさんがミュージシャンとしてやっていこうと決めたのはいくつぐらいの時ですか?

EMILY 15歳です。誘われてバンドを始めて、若かったから「天下獲るぜ!」という気持ちで音楽活動を続けて。『NANA』というマンガが流行っていた時期でしたから、いつかお偉いさんが、たまたま自分たちのライブを見て、名刺を渡してくれて「ウチの事務所に来なよ」という展開があるはずだと、私に限らず多くの人が夢見ていたと思います。でも、大人になるにつれて、そんなことは限られた人間にしかないのがわかってきて。わかった時にはすでに遅くて、もう戻れないところに来ているなと思いました。そこで実現不可能な夢を見るのは一度やめて、どうやって食べていけるかの方にマインドチェンジしました。

――それはいくつの時ですか?

EMILY 24歳ぐらいです。大学も卒業して、フリーターをしながら音楽活動を続けていました。でも先輩に「その年でヤバくない?これからどうすんの?」と言われて、ハッとしたんです。ずっと答えがないままやっていたので、はっきり答えを持って活動した方がいいことに気づきました。そこからは誰かのお世話になろうという気持ちはなくて、自分たちで食べていけるだけの力をつけようと思いました。今思うと大学4年間を無駄にしたなと思います。モラトリアムというか、守られた世界にいて、全てが中途半端になってしまったのかなと思います。

――ミュージシャンを目指すティーンは多いですが、諦めない秘訣はなんでしょうか?

EMILY 自分なりの目標を立てて、こなしていくだけですね。誰しも続けることが苦手だと思うんですけど、1つだけでも何かを長く続けられたら、周りの見方がガラッと変わる瞬間があります。それまでは面倒くさくても、飽きちゃっても、続けるべきだと思います。

Information

『リスタート』
2021年7月9日(金)より北海道先行公開中
2021年7月16日(金)、ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル新宿ほか全国公開

EMILY(HONEBONE) SWAY(DOBERMAN INFINITY / 劇団 EXILE)
品田誠 朝倉ゆり(エラバレシ) 夏目ベール(純情のアフィリア) 藤井俊輔 向井日菜海
阿部隼也 かんた 岩崎う大 もりももこ
西野亮廣(キングコング) 松田大輔(東京ダイナマイト) 庄司智春(品川庄司)
小杉竜一(ブラックマヨネーズ)
黒沢あすか 中野英雄

監督・脚本:品川ヒロシ 音楽:HONEBONE 撮影:Yohei Tateishi
照明:淡路俊之 津田道典 美術・装飾:遠藤剛 編集:須永弘志 録音:光地拓郎
衣裳:宮本まさ江 ヘアメイク:泉宏幸 助監督:高土浩二 制作担当:金城恒次
チーフプロデューサー:片岡秀介 古賀俊輔 プロデューサー:木本直樹 大日方教史
エグゼクティブプロデューサー:羽根田みやび 製作岡本昭彦
クラウドファンディングパートナー:MOTION GALLERY
スペシャルサポート:下川町 制作プロダクション:ザフール 制作:吉本興業
配給・宣伝:吉本興業 ハピネットファントム・スタジオ 製作:吉本興業
© 吉本興業

北海道下川町で育った未央は、シンガーソングライターを目指して上京。10年の月日が経ち、思い描いた夢とは異なるものの、地下アイドルとして一生懸命に活動していた。ある日、意図せず起きた有名アーティストとのスキャンダルによって、世間からのバッシングを受け、SNSで炎上。夢に破れ傷つき、故郷に帰ってきた未央だったが、周囲とも上手く接することが出来ずひとり殻に閉じこもってしまう。そんな中、同級生の大輝は、未央を思い出の場所へと連れ出す。自然豊かな景色、支えてくれる仲間や家族の存在によって、未央はゆっくりと前を向き始める―。

公式サイト

EMILY(HONEBONE)

アーティスト

東京都高円寺出身。フォークデュオ「HONEBONE」のヴォーカル担当。日本語にこだわったリアルな歌詞を歌い、これまでにアルバム5枚、ベストアルバム1枚をリリース。笑いあり涙ありのライブは全国で完売続出、歌のみならずEMILYのキレのあるMCも特徴的。個人のInstagramフォロワーは3万人を超え、中国・Weiboアカウントは開設わずか3日で2.6万人からフォローを受けるなど、SNS上でも話題を呼ぶ。キャラを生かしたメディア出演、New Balance、TOYOTA、BOSE等のWeb広告モデルなどマルチに活躍の場を広げる。バラエティ番組「家、ついて行ってイイですか?」(TX)の出演をきっかけに品川ヒロシ監督に見出され、演技未経験ながら、本作でスクリーンデビュー・初主演を飾っている。

Photographer:Toshimasa Takeda,Interviewer:Takahiro Iguchi