「この映画でどうにか成り上がろうぜ」という空気が撮影現場にあった

――クランクインして、実際の演技はいかがでしたか?

EMILY 私の演技が上手くいかないときは、すぐに品川監督がカメラを止めてくれて、「ちょっと今のはわざとらしかった」と紐をほどいてくれるような演技指導をしてくれましたし、「EMILYとしてはどう思う?」とディスカッションもしてくれたので、すごく演じやすかったです。

――地下アイドルを演じるシーンはいかがでしたか?

EMILY ものすごく恥ずかしかったですね(笑)。普通の役者さんだったら、役をもらっただけでも「ありがとうございます」って話なのに、私は「足は出したくない」とか「ダンスは踊れません!」とか泣き言を言っていたんですけど、品川監督は真剣に取り合わず、「できるできる大丈夫!」みたいな感じで乗せてくれました。

――演技自体に恥ずかしさはありましたか?

EMILY 恥ずかしいのかなって思ったんですけど、初めて役者さんたちが集まって本読みをしたときに、中野英雄さんや黒沢あすかさんなどキャリアのある方たちもいらっしゃる中で、恥ずかしいなんて言ったら失礼だなと思ったんです。だから全体の本読みの初日から恥ずかしさは抜けて、「演じきっている人の方がかっこいいじゃないか」という気持ちで臨めました。

――映画のクライマックスとなるライブシーンは北海道・下川町で撮影されたんでしょうか?

EMILY はい。下川町の倉庫を借りて、地元の方にも数百人来ていただきました。

――普段のライブとの違いはありましたか?

EMILY 普段と全く変わらなかったんです。というのも役者さんやスタッフさんだけではなく、下川町の人たちも来てくださったので、自然とミュージシャンの私になったんです。演技しなきゃいけないところなんでしょうけど、目の前にいる人たちがライブに飽きて、HONEBONEのEMILYってつまらないと思われたくなかったんですよね。映画なので同じ曲を何回も撮ったんですけど、全部本気で歌いました。

――映画の前半は東京が舞台で、途中から下川町へと移りますが、ロケーションが違うことで演技に変化はありましたか?

EMILY ありました。ストーリーを順番通り撮っていったので、東京にいるときは都会の喧騒や窮屈さを感じていたんですが、北海道に移動して、下川町という町の独特な魅力に浄化されていって、だんだん演技もほどけていく感覚がありました。

――撮影現場は熱気にあふれていたそうですね。

EMILY 「この映画でどうにか成り上がろうぜ」という空気がずっとありました。中野さんやあすかさんも最初は落ち着いていらっしゃったんですけど、途中から「この映画は何か違う!」と言ってくださったんです。中野さんは「初めて演技をしたときに感じた懐かしい自分に会った気がする。この気持ちを大事にしたい」と話してくださいました。

――完成した映画を見ていかがでしたか?

EMILY セリフを言ってる自分が恥ずかしいという気持ちはずっとありつつ(笑)。初演技だけど頑張って演じている自分の姿を見てほしくなりましたし、私と同じくもがいている役者さんたちを見てほしいなと思いました。自分の名前を上げようと必死な役者さんたちが集まって、本気で映画を作っている姿に何かを感じてほしいです。