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防衛戦は失冠してしまわないよう緊張感を持って挑んだ

明治記念館での女王就位式に参加した西山女王は、えんじ色のあでやかな着物姿で登壇した。司会者から「素敵ですね」とつぶやかれると、笑みを浮かべた。

株式会社マイナビ出版の代表取締役社長・滝口直樹氏や、公益財団法人 日本将棋連盟の会長・佐藤康光氏。同タイトル戦第3局の開催地・時宗総本山遊行寺を誘致した藤沢市観光協会の会長・湯浅裕一氏も挨拶。

その後、佐藤氏から就位状を受け取った西山女王。滝口氏からも“マイナビ杯”と優勝賞金“500万円”のパネルを手渡され「ありがとうございます」と関係者や報道陣へ会釈した。

多くの祝電も寄せられ、謝辞では「今回の防衛戦は奨励会を退会した直後ということで、そのままの流れで失冠(タイトルを失うこと)してしまわないよう緊張感を持って挑んでおりました」と同タイトル戦を振り返った西山女王。

「昨年に続きギリギリのところで防衛できてホッとしております」と胸をなでおろし、「来年は“永世女王(連続5期達成で獲得する称号)”がかかったシリーズということで、新たな結果を求めて今から頑張っていきたいなと思っております」と決意を新たにした。

壇上で行われた佐藤氏との「パターゴルフ三番勝負」では「高校の同級生でプロゴルファーの友人がいるのですが、掃除の時間にほうきをパターに見立ててやり方を教えてもらって以来」と不安な表情を浮かべた西山女王。結果は、エキシビジョンを含めた“四番勝負”となり両者引き分け。最後、丁寧なスイングでみごとにカップインを決め、笑顔を浮かべた。

囲碁の世界で活躍する姉と姉妹でタイトルを取る!

女王就位式の直後、インタビューに応じてくれた西山女王。奨励会を退会後、女流棋士として気持ちも新たにのぞんだ「第14期マイナビ女子オープン」の感想や、勝負へかける姿勢などを聞いた。

――タイトル戦「マイナビ女子オープン」の4連覇おめでとうございます。今回は、西山女王にとってどんな意味を持っていましたか?

西山 奨励会を退会し4月で女流棋士となって初めての参加だったので、将来を占うタイトル戦になると思っていました。私にとっては、女流棋士としての生き方を問われるような。勝つか負けるかで周りの印象と自分のスタートを切る気持ちが、だいぶ変わるかなと思っていて。今まで以上に緊張して挑んでいました。

――人生にとって、大きな区切りだったわけですね。

西山 女流棋士となるまでは、いろんな立場があって、難しかったんですよ。奨励会員として三段リーグを勝ち抜き四段になる必要がありましたし、できるだけ長くタイトルを防衛しなければいけないので、タイトルホルダーとして何をやるべきかも考えていました。公式戦でも規定の成績を達成すればプロへ編入できる決まりもある中で、三兎を追うではないですが、頭の中がこんがらがっていて。今はもうとにかく、目の前の将棋を頑張る。女流棋士として「仕事が将棋」と決まりましたし、自信も生まれてきた気もしますね。

――来年は永世女王をかけた戦いに。そのプレッシャーは?

西山 自分が手にしたものを取られるかもしれない立場なので。維持できる保証はないですし、タイトルについてはホッとした気持ちもありません。日夜、力を付けようと励んでいる女流棋士の方はたくさんいますし、気が休まる暇もないです。

――囲碁の世界で活躍されている姉・西山静佳棋士とは「姉妹でタイトルを取る」と目標を掲げているそうですね。タイトル戦の最中は支えられていましたか?

西山 姉も囲碁でのタイトルを目標としているので、私がどんな心境なのか想像しやすいのかなと思います。家でも配慮してくれて、応援するよりも「負けたって人生だ」と接してくれて。私から話題に出すときだけ「負けてもいいじゃん」みたいに気楽に返事してくれたので癒やされていました。

高校時代に学んだ数学的な考えは将棋に生きている

――今回のタイトル戦に関わらず、常に熾烈な“勝負”を繰り広げる世界で活躍されています。対局後、自分なりに結果をどう受け止めているのでしょうか?

西山 勝ったときは手放しで喜びます。反対に、負けるとやはり落ち込みます。それでも、結果には理由があるので改善点を探します。敗局を振り返るのは辛いですけど、自分の指した将棋を見直して。駒の運び方だけではなく、時間の使い方を間違えて負けるときもあるので、イメージトレーニングも欠かせません。

――落ち込んだとき、どのように自分を奮い立たせていますか?

西山 昔読んだ本に「精神の辛さは肉体の辛さを超えない」という言葉があり、身体を鍛えるために、筋トレに打ち込むようにしています。あと、深呼吸です。将棋の勉強に限らず、誰しもしんどいときに呼吸を忘れる瞬間があると思うんです。疲れをそのままにしないよう、常に自分と体と向き合っています。

――高校時代、すでにプロを目指して奨励会へ入っていた西山女王は、将棋と勉強を両立されていましたよね。当時を振り返ってみていかがですか?

西山 文武両道という言葉のように、どちらもリンクしていると思っていました。特に数学的な考えは、将棋に生きていると今でも思っていて。理系出身の棋士の方から「結局、0手でやった計算になる」と聞いたこともあります。一瞬でサッと時間配分を計算しているのを見ても、合理的に生きていらっしゃると思えますし。私も、勉強を頑張ったことで自然と身についたのかなと感じています。

――将棋界で活躍されている西山女王から、このサイトを見ている若い読者に向けて目標達成のためのアドバイスをお願いします。

西山 この先でどうなりたいのか、前向きにイメージしながら取り組むのが大事だと思います。私も将棋の勉強をしているときは、常にタイトルを獲得した自分を想像しながら打ち込んでいるので。できるだけ具体的に、未来の自分を想像しながら目標に向かって頑張ってください。

西山朋佳

女流棋士

1995年6月27日、大阪府出身。日本将棋連盟所属。2021年4月1日に「奨励会」を退会し、女流棋士に転向。マイナビ女子オープン4連覇中。

Photographer:Toshimasa Takeda,Interviewer:Syuhei Kaneko