コロナ禍でお互いに伝わり合う何かが必要だなと感じるようになった

――7月21日リリースのニューアルバム『Momi』は制作方法に大きな変化があったそうですね。

Nakamura いつも制作期間は2、3カ月間なんですけど、コロナ禍でもあったので去年の5月ぐらいから時間をかけて作りました。歌詞の感覚とか、いろいろなものを変えようと思っていたので、スタッフからたくさんの意見を聞いて、何度も何度も歌詞を書き直しました。

――これまで周囲の意見を聞いた上での歌詞のリテイクは、あまりしてこなかったのでしょうか?

Nakamura 今までは歌詞メインで曲を作ってきて、私の世界観を大事にしてくれていましたし、制作期間も短かったので、そこまでみんなの意見を聞くこともなかったんです。今回は私の歌詞を見て、みんながそれぞれの意見をくれたので、それを元に歌詞を書き換えることもあって。その後に、メロディーに合う歌詞をひたすら探すという作業をしました。

――過去のインタビュー記事を拝見しましたが、歌詞先行でメロディーをつけていたと仰っていました。

Nakamura 歌詞先行でメロディーをつけて、その後に聴いてみて、ちょっと歌詞が上手くハマってなかったとしても、「でもこの歌詞がいいみたい!」な感じで歌詞を優先していたんです。でも今回は、「この歌詞はどうすれば言葉を薄めずに、このメロディーにハマるのか」と辞書などを見て考えて、その一行のために何ヶ月もかけることがありました。

――周囲の意見を取り入れることに抵抗はありませんでしたか?

Nakamura なかったです。去年はリセットできて、肩の力が抜けたというか。デビューして5年間がむしゃらに走ってきたけど、フッと休める時間ができたんです。それが、めちゃくちゃ大きくて。今まで自分の型にはめていた部分は、みんなから見るとどうなのか?と思って、もっといろんな人に聴いてもらえる歌詞の世界に広げたいなと考えたんです。それで今回は周りの意見を積極的に聞きました。

――自分の意見を主張するのではなく、何気ない日常を綴った歌詞が印象的だったのですが、歌詞の面でどういう変化がありましたか?

Nakamura 今までは日記に近くて、自分100%で、それをみなさんに置き換えてもらえたらって感じでした。でも今回はそれを、「じゃあこの日記を友達に伝えるとしたらどうするの?」みたいな形で歌詞を変換してみました。日常生活の当たり前から感じたことを書くというのは変わっていないんですけど、表現の面ではいろいろ変わってきたかなと思います。自分の生活の中で感じたことをそのまま書いていたけど、スタッフから「俺は分かんなかった」と言われたこともありました。みんな全然違う性格だけど、どこを直したら共通言語になるのか、そのためにどこに落とし込めるかという作業に時間をかけました。

――曲調も以前より他者に寄り添う感じというか、歌い方も温かみを感じます。

Nakamura ありがとうございます。やっぱり去年のことがいろんな意味で大きくて。私は休めたけど、医療の人はすごく大変だし、お店を閉める仲間もいたりして、いろんな辛いことが周りで起こっています。だからこそ、お互いに伝わり合う何かが必要だなっていう部分が自分に増えていきました。今までは誰かにっていうよりも、自分のためにほとんど歌っていたんです。だから、どんなに厳しく言ったって、どんなに強く歌ったって、自分に言いきかせたいだけ。それぐらいやらないと人には届かないと思っていたんですけど、年齢とかいろんなものを重ねた上で、ちゃんと寄り添える部分が歌でもできたらいいなと思って、歌い方なども研究しながら作りました。

――以前は強い歌詞を歌うことも多かったですが、今回はアレンジ面も含めて、全体的に柔らかさを感じました。

Nakamura 去年ベストアルバムを出して、本当は動くはずだった一番忙しい時期がなくなりました。その時に周りがちゃんと見えてきて、「何をそんなに力を入れてやってきたのかな?」と思ったんです。「私はもうちょっとこうだな」っていう部分がいろいろと出てきました。これが今、私の素直な状態なのかなっていう感じです。