格闘ゲームのeSportsキャスターは国内に10人前後
―eSportsキャスターとは分かりやすく言うと、どのような職業なのでしょうか?
なない メインでやっているのは格闘ゲームの大会の実況と解説です。大会を盛り上げるために、今何が起きて、どういうことが行われているのか、だからこのプレイヤーはすごいぞというのを分かりやすく説明するように心がけています。
―YouTubeチャンネルもやってらっしゃいますが、こちらもお仕事の一環ですか?
なない YouTubeは完全に趣味です。もともと配信はやっていたので、基本的にマイナスになることはないかなと。ただプレイヤーはもちろん、キャスターも配信活動は大切で、自分の人となりを知ってもらうためにやっている部分もあります。とはいえ、そこまで堅苦しい宣伝とかはしてなくて、基本的にはゲームをやったり、他のプレイヤーと交流したりしています。
―ゲームによって、それぞれeSportsキャスターがいらっしゃいますが、格闘ゲームに限って言うと何人ぐらい日本にいらっしゃるんですか?
なない 本当に少なくて、格闘ゲームメインでキャスターとして一線で活動している人は僕を含めて10人前後です。
―なないさんは格闘ゲームの中でも『ストリートファイターⅤ』(以下、「ストⅤ」)をメインに活動されていますが、知識だけでなくプレイヤーとしての実力もないとダメなのかなと素人目に見て思うのですがいかがでしょうか?
なない もともと僕自身がプレイヤーとしてプロの方とも対戦していました。機会があってこういう活動をするようになったので、ある程度はやり込んでいます。ただ間違ったことをしゃべっていなければプレイヤーとしての実力は不要だと思います。そこまでプレイは上手くないけど解説が上手かったり、世界中のシーンを追っていて知識が膨大にあったり、そういうキャスターの方もいらっしゃいます。
―なないさんはお仕事に生かすために、プライベートで「ストⅤ」をプレイすることも多いんですか?
なない 配信上でプレイすることが多いです。これまでもプレイしてきた蓄積がありますし、他のプレイヤーや大会の配信を見て、情報を仕入れることも多いです。
―なないさんはプロゲーマーとの交流も深いですが、そこから得られる情報も大きいですよね。
なない そうですね。トッププロの間では、「ストⅤ」はオフラインが主流なのですが、僕も日常的に参加して情報交換もしますし、実際に対戦もしていました。たとえばキャラとキャラの組み合わせによって「どちらのキャラが有利なの?」とか、「さっきの連携ってどういう仕組みになっているの?」とか、対面のほうが質問もしやすいですね。実況解説をしているときも、そういう突っ込んだ話を入れたほうが、プレイヤーも視聴者も面白いと思います。今はコロナ禍なので、それができなくなっていて苦労するところがあります。
―なないさんは現在、専業のeSportsキャスターとして活動されていますが、2019年から今年4月まではプロゲーミングチームとマネジメント契約を結ばれていました。どういうきっかけで契約をされたのでしょうか?
なない もともとエンジニアをやっていて、メーカーで製品開発をしていました。それと並行してキャスターの仕事もやっていました。会社として副業OKではあったんですけど、なかなか融通は利かなくて、かなり無茶なスケジュールでした。海外の大会だと、日本時間の土日の深夜から朝まで行われることが多かったです。可能な限り休暇を使ってスケジューリングをしていましたが、夜通しキャスターをやって、そのまま徹夜で会社に行くという感じでした。平日に来る仕事は断っていたので、もったいないなと思っていました。そんな時にバーニングコアに所属している立川選手から、「うちのチームでキャスターを探している」ということでオーナーを紹介してもらいました。