eスポーツ元年に新規事業の話が舞い込む

――プレイヤーからeスポーツに関わる仕事に就くきっかけを教えてください。

中野 2018年は「eスポーツ元年」とも言われ、メディアなどでも注目が高まり始めた年なのですが、当時勤めていた会社の社長が、たまたまテレビで「DetonatioN Gaming」の梅崎社長の話を聞き、eスポーツ事業に関心を持ったんです。そこで、以前ゲーム大会で優勝した経験があると話したことがあった自分に、「eスポーツを新規事業でやってみないか」と声がかかりました。

――もともとeスポーツの仕事に興味はあったのですか?

中野 プロとして最前線で活躍するウメハラ(梅原大吾)さんやときどさんのことは動画などで観ており、凄いな、上手いなと思っていました。しかし、eスポーツの業界がどういったものなのか、何をすればいいのかが全くわからない状態だったので、話をいただいたときは悩みました。最終的には、そのときに社内でやっていた仕事にやりがいを感じていなかったことと、この先伸びる可能性があるゲームの仕事を面白そうだなと感じたことで、手探りの状態からチャレンジしてみることに決めました。

――実際に始められたときの状況はどのようなものでしたか?

中野 事業部を立ち上げてから半年くらいは、選手としての活動がメインでした。社内の一角にモニタやプレイステーション4を会社が用意してくれて、そこで一日、お給料をもらいながらゲームをしていました。ちょうどその頃、『ストリートファイター』シリーズが30周年ということで、過去のタイトルを詰め合わせた『ストリートファイター 30 th アニバーサリーコレクション』が発売され、海外でも賞金付きの大会が開かれていたんです。そこで『ストリートファイターZERO2』の大会で優勝した大貫さん、『スーパーストリートファイターIIX』の大会で優勝したFoo助さんと共に、フロリダの格闘ゲーム大会「CEO2018」に出場。全員がベスト8に残るという結果を残すことができました。

――そこから法人化をする経緯はどういったものだったのでしょうか?

中野 その当時はまだスポンサーを獲得するという考えを持っていなかったので、海外大会に行くとなると、費用は会社からの持ち出しとなり、すべて赤字でした。事業化するには利益を出さなければいけないので、2019年2月に「株式会社スサノオ」として法人化をし、同時にeスポーツ施設を立ち上げ、本格的にeスポーツ事業に参入することになりました。

――現在の事業内容はどのようなものになりますか?

中野 事業は大きく3つです。イベントの企画運営事業、SG8(スサノオゲーミング8)のチーム運営事業、eスポーツ施設「Area8(エリアエイト)」の運営事業です。

――イベントの企画運営とは主にどのようなことをされるのでしょうか?

中野 企業からeスポーツを使ったイベントをやりたいという依頼が来たときに、何のゲームを使うのか、会場をどこにするのか、大会形式にするのか、エキシビションにするのか、プロゲーマーを呼ぶのか、実況や解説は必要なのか、大会のルールはどういったものにするのかなど、企画の立案から実際に人員を配置しての運営、機材を導入しての演出、配信に至るまで幅広く行っています。

――チームの運営とはどのようなものになりますか?

中野 プロ選手やストリーマーと契約を結び、マネジメントや、活動のサポートをしています。7月に株式会社antrerが運営する「KURENAI GAMING」と合併をし、国内最大規模の新チーム「GUREN」として新たな活動を始めました。

――運営されているeスポーツ施設「Area8」についても教えてください。

中野 社内に併設されたスペースに、テーブルと椅子、モニタを設置してあり、2〜30名が収容可能となっています。大会で使用できるようなステージを用意し、その横には実況席や解説席、配信を行うための機材を設置したスタジオを設けているため、大会の開催から配信までをワンストップで行えるようになっています。現在はコロナ感染対策も厳重に行った上で、コミュニティなどの希望者に貸し出しをしています。

――eスポーツ事業を始める上で、苦労された点はありますか?

中野 ゲームをビジネスとする上で、著作物を扱ってお金を稼ぐというのは大変だなと実感しました。イベントで使用するための使用許諾をとるのにも、日時や場所、どのような使い方をするかなど詳細に申告しなければならず、時にはロイヤリティなども支払わなければいけません。メーカーの大切な著作物を使用させていただくわけですから、今考えれば当たり前のことなんですが、始めた頃はまだ知識が浅く、その点は苦労しましたね。