「こういう映画に出たくて俳優になりました」という声が多かった

――2018年公開の『孤狼の血』第1作目の反響は凄まじかったですね。

白石 東映からのオファーが「めちゃくちゃ暴れてくれ」というものだったので、ファーストシーンから豚のうんこを食わせたりして(笑)。それが、あんなに褒められるとは思ってもいなかったので、戸惑いのほうが大きかったです。「怖くて見られなかった」「エグいのは苦手」という声も多かったですけどね。

――前作が大ヒットして、続編のプレッシャーはありましたか?

白石 原作にも『凶犬の眼』という続編があるんですが、前作で原作とは結末を変えたこともあって、「このままじゃできないけどどうしよう」という話になりました。ある種オリジナルに近い形なので、そこまでプレッシャーはなかったです。全くなかったと言ったらウソになりますけどね。先ほどお話ししたように褒められるべくして作った映画でもないので、脚本家の池上さんとは、「前作で褒められようと思った?」「いや、思っていない。今度こそ褒められない映画を作りましょう」というやり取りからスタートしました。

――前作公開時に、白石監督にインタビューさせていただいたとき、「東映から『仁義なき戦い』のような熱量を取り戻したいと言われた」と仰っていたのですが、今回も『仁義なき戦い』は意識しましたか?

白石 そこまで意識してないです。前作も『仁義なき戦い』というよりは、同じ深作欣二監督で〝東映実録やくざ映画〟の系譜に連なる『県警対組織暴力』を意識しました。今回、意識したとしたら、やはり深作監督の『やくざの墓場 くちなしの花』で、警察映画の延長として考えていました。

――深作監督作品でいうと、鈴木亮平さんの演じた上林成浩は『仁義の墓場』の主人公・石川力夫を彷彿とさせる凶暴性をひしひしと感じました。

白石 それはありますね。確かにクランクイン前に『仁義の墓場』は見ました。賭場のシーンがあるんですけど、これまで撮ったことがなかったので、深作監督はどんな感じで撮っていたのかなと参考にしました。

――今回は若い役者さんがキャストの中心になっていますが、東映実録やくざ映画のテイストを理解してもらうために参考映画などは見てもらったのでしょうか?

白石 『やくざの墓場 くちなしの花』は見てもらいましたけど、それぐらいです。年齢に関係なく『仁義なき戦い』などの深作監督作品は普通に見ていますからね。「『孤狼の血』に出演する以上は見ておこう」みたいなのもあると思いますし、「こういう映画に出たくて俳優になりました」と、みんな言ってくれるんですよ。前作の公開後、会う俳優会う俳優から「僕も広島に行きたいです」みたいなアピールが結構あったんです。そのおかげで今回のキャスティングをしやすかった部分もあったと思います。

――今回はリスペクト・トレーニング(制作現場でキャスト・スタッフが安心して働ける環境を作るための取り組み)を導入したことも話題になりました。

白石 日本映画界は連綿と体育会系的なノリが残っていますから、そういうところから変えていかないと世界から置いてきぼりをくらっちゃうなと。それにリスペクト・トレーニングを導入したからといって、作品の善し悪しに影響はないですからね。

――反響はいかがでしたか?

白石 良い取り組みだと言ってくれる人もいましたし、舞台関係者など違う業界からも「ニュース見ました」と声をかけてくれる人がいました。一方では変わらず現場でハラスメントをしている人がいるという話も聞こえてくるし、まだまだ道は長いですね。