お互いが作用しあうような感覚を現場で感じた

――浅野いにおさんによる漫画の原作『うみべの女の子』を読んだときの印象はいかがでしたか。

青木 十代の恋と性が表現されているんですけど、「思春期」と一言では言い表せないくらいに濃密で、触れたら壊れてしまいそうな繊細さというのが随所に描かれているなと思いました。自分が中学生のときとは違った学生生活ですが、どこかしらに自分が生きてきた中で重なる部分があって。ズキズキと傷が痛むような感覚があったので、実写化するにあたって、それを繊細に体現できたらいいなと思いました。

――漫画の実写化作品は、どうしても原作を意識せざるを得ない部分もあると思います。

青木 漫画としてすでに世に出ていて、それを支持するファンの方々や影響を受けている方々がいます。だから映像化するにあたって、まずはビジュアル面をしっかりと考えないといけないと第一に思いました。一方で、漫画原作だからといって表面的なものにならないように気をつけました。コピペするような感じではなく、登場人物たちの気持ちを生身で感じ取ることを大切にしました。

――どのように役作りをしましたか?

青木 役作りに関しては人それぞれだと思うのでどれが正解とか一概には言えないと思うんですが、僕自身はヘアメイクさんとスタイリストさんにすごく助けていただきました。漫画原作という点で、衣装や見た目は大きな要素だと思うんですよね。あと石川(瑠華)さんが「小梅を体現するんだ!」という強い心持ちで現場にいらっしゃったのも心強かったです。表面的じゃない、お互いが作用しあうような感覚というのを、現場で感じさせていただきました。石川さんがどういう意識で演じられていたのかは分からないですけど、影響されていた部分は少なからずありました。

――石川さんも、撮影現場で青木さん演じる磯辺から感じ取ったことを大切にしたと仰っていました。

青木 小梅のアクションによって磯辺が変わっていくことが重要だと思っていたので、そういう意味では僕も影響されていたと思います。石川さんが真っすぐにエネルギーを発信していたのが、お互いに良かったんじゃないかなと思います。

――現場での石川さんの印象はいかがでしたか?

青木 石川さんは小梅に対する思い入れというか、熱量、意識みたいなものが人一倍強い方でした。聞いた話によると、制服やマフラーを着けて小梅になりきってオーディションに行ったそうです。そういう小梅への思いみたいなもので、石川さんの体は支配されているんだろうなというのが現場でも伝わってきました。