ドキュメンタリーは大変なのでこりごり

――結末の分からないドキュメンタリーですが、卒業制作なので提出期限もあります。それに間に合わせるための段取りなどはあったのでしょうか?

長瀬 本当に何もなくて、「とりあえず回してみよう」だったので、大槻さんにも心配されたくらいです。

――撮影はどのくらいかかりましたか?

長瀬 大学4年生の5月ぐらいに撮影を始めて、提出期限ぎりぎりの12月までカメラを回していたので、半年以上ですね。

――ドキュメンタリーにあまりいいイメージなかったということですが、主観を入れずに客観的にカメラを回そうなど、気をつけた部分はありますか?

長瀬 あまり意識はしてなかったんですけど、大槻さんが気を遣って、いろいろ話しかけてくれて、「ここ撮って!」とか言ってくれたので、ずっとカメラを回しながら大槻さんの近くを歩いているような感じでした。

――先ほどお話に出た知久寿焼さんや、曽我部恵一さんなど、長いキャリアを誇るミュージシャンが多数出てきますが、その中に入っていくのは緊張しませんでしたか?

長瀬 あんまりなかったかもしれないです。もちろん会う前に大槻さんから「明日誰々さんがゲストで来るから」と聞いて、そのときは緊張するんですけど、会ってみると普通に話してくれるので緊張はしなかったです。

――知らない人とコミュニケーションを取るのは得意なほうですか?

長瀬 基本的に人と接するのは苦手です。でも大槻さんの人柄が大きくて、自然と私も輪に入って行けたのかもしれません。普段はできるだけ知らない人と話したくないので、大槻さんがいなかったらうまくコミュニケーションをとれなかったかもしれないです。

――撮影した素材を編集する上で意識したことはありますか?

長瀬 最初に編集した時点では20分ぐらいの尺で、ただ大槻さんが酔って歌って、ライブ映像を繋げただけの取り留めのないものだったんです。それを観た大槻さんから、「それで大丈夫なの?」と言われたので、改めて撮った素材を見直すうちに、1つテーマを決めようと。大槻さんの「酔いどれ東京ダンスミュージック」という楽曲を軸に構成しようと考えました。

――最終的な尺は57分ですが、そのうち大槻さんがお酒を飲んでない時間はどのくらいなんですか。

長瀬 ほぼないんじゃないかな(笑)。大槻さんはお仕事をしてるときと、寝ているとき以外はお酒を飲んでるタイプなんですよ。インタビューのときすらそうですからね。

――完成した映画を観た大槻さんの反応は?

長瀬 そんなに面白い反応はありませんでした(笑)。ただ「自分が出てる映画だから良いか悪いかは分からないけど、ゲストの方が出てくださったライブが映像として残ったのは嬉しい」と言ってもらえました。

――卒業制作の時点では、完成形じゃなかったそうですね。

長瀬 自分としては「これでいいのかな」みたいなところで出しちゃったんです。卒業制作は確かナレーションが入ってないバージョンで、もともとナレーションは入れたくないと思っていたのですがなんかイマイチだなって。それで改めて編集をし直して、最終的に完成したのは大学を卒業した年の7月です。

――「東京ドキュメンタリー映画祭」にはご自身で出品されたんですか?

長瀬 はい。大槻さんからいろいろ言ってもらったのもありましたが、自分としても「せっかく作ったんだから応募してみてもいっか」という感じで出品しました。

――今回、劇場で公開に至るまでの経緯を教えてください。

長瀬 東京ドキュメンタリー映画祭で上映されたときに、配給の方が見てくれたみたいで、大槻さんに連絡があって、それがきっかけで話が進んでいきました。初めて聞いたときは信じられなかったですし、嬉しさと恥ずかしい気持ちがありました。

――東京ドキュメンタリー映画祭の出品から劇場公開まで2年以上経っていますよ。

長瀬 配給の方からお話をいただいた後、しばらく連絡がなかったので、これは消滅だなと思っていたんです。そのときに大槻さんから「YouTubeに上げないか」と提案されたんですが、それを断ったタイミングで連絡があって、具体的に劇場公開の話が進んでいきました。

――どうしてYouTubeに上げたくなかったんですか?

長瀬 YouTubeって消費されるイメージで、たくさんの人に観てもらうという意味ではいいのかもしれないですけど、興味もないのにオススメ動画として流れてきたら、パッと観てピって飛ばされそうな感じがして嫌だったんです。自分としては、多くの人に観てもらいたい気持ちもありつつ、そうやって飛ばされてしまうのが、あまりにも悲しいなと思ったんですよね。

――また映画を撮りたい気持ちはありますか?

長瀬 あります。ただドキュメンタリーは大変なのでこりごり(笑)。撮りたいなと思う人が現れたら撮るかもしれないですけど、やっぱり当初の目標だったフィクションを撮りたいですし、構想もあります。

――具体的に動き出しているんですか?

長瀬 脚本は書いているんですけど、コロナ禍で人を集めて撮ることに踏み切れない部分はあります。ただ映像制作は、ずっと続けていきたいです。