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濃厚な準備段階の時間があったから培われた精神力

――重いテーマを扱いながらも、前向きさがあって、色々なことを考えさせられる作品でした。

佐久間 ありがとうございます。実現するまでにかなり時間がかかったんですが、その間に台本をいただいて、原作も読ませていただきました。本当に素晴らしい小説だと思いました。すごく読みやすい文体で、どんどん先に読み進めていけるのですが、気がついたらとんでもないところに連れていかれるような、すごい引力がある作品で。実写化するには、丁寧に大切に演じないといけないという責任感がありました。

――演じるにあたって、役とはどのように向き合いましたか?

佐久間 ホリガイという人物像を、私一人だけでなくて、監督や共演者の皆さんと作っていきました。撮影に入る前に監督とプロデューサーさんに何度か時間を作ってもらって、ホリガイの人物像の内面、外見など、履歴書みたいなものを一緒に作っていったんです。そこから共演者の奈緒ちゃん、森田想さん、小日向星一君と一緒に話し合う機会を作っていただいて。作品に対する想いなどを伝えさせてもらううちに徐々に実感がわいて、役が立体的に見えてきた感じです。濃厚な準備段階の時間があったから、この作品に向き合えるだけの精神力がついたように思います。

――履歴書のようなものを作る、というのは面白いですね。どんなことが書かれているんですか?

佐久間 雨の日は長靴を履くか履かないか、水筒の中身は何か、お茶はティーバッグで出して入れているのか、部屋は散らかっているからマメじゃないのかも、など、細かいことをいっぱい話しました。私の幼少期の体験なども材料として出しながら、「でもホリガイだったらもっとこっちかな」みたいに提案させていただいて面白かったです。

共演の奈緒とは贅沢な出会いだった

――イノギを演じた奈緒さんとのお芝居が本当に素晴らしかったです。

佐久間 私がもともと奈緒ちゃんの作品をすごく見ていて。ドラマ「あなたの番です」、朝ドラ「半分、青い。」、映画『ハルカの陶』など、奈緒ちゃんが出演した作品への熱い感想を伝えました。仕事のことも、仕事に関係ないこともたくさん話す中で、信頼関係が出来ていった感じがします。言葉でお互いを知るというよりも、空気感というか、一緒にいて落ち着くところが、イノギさんとホリガイの関係だと思うんです。奈緒ちゃんとは初めて会ったときからそういう感覚があったので、贅沢な出会いだったと思います。

――佐久間さんも奈緒さんも、同世代で様々な作品に出演されていて、刺激を受けることもあったのではないでしょうか?

佐久間 たくさんありました。話していて思ったのは、私は物事を「自分にとってどうか」という基準で考えることが比較的多いのですが、奈緒ちゃんは、この映画のテーマでもあるように、他者に対して思いやりがあって、そういうところから自分が動く方だと感じました。だから尊敬できるところがたくさんあって、価値観が似ている部分もあって、出会えてよかったなと思います。

――特に好きなシーンはどこですか?

佐久間 気持ちがホッコリしたのは牡蠣鍋のシーンで、自分で観ても楽しそうだなと思いました。シリアスなシーンですと、ヨッシー(吉崎)の「人は朝起きて歯を磨くみたいに簡単に死ねちゃうんだな」というセリフは、現場でも鳥肌が止まりませんでした。今生きている人たちが、もういない人たちを考えて生きていくという時間を、あの一瞬で感じたというか、今生きていることも当たり前じゃないんだなと強く感じたシーンです。

――辛いシーンも多いですが、演じていて、気持ちが役に引きずられることはありましたか?

佐久間 あまりなかったです。ただ、その期間に会った友達からは「顔つきが違うね」と言われました。良い意味ですり減ってる部分があったんでしょうね。自分では意識していなかったですが、友達に気づかれました。

――ホリガイが目指す児童福祉司というお仕事については、ご自分でも調べたりされましたか?

佐久間 監督から頂いた資料だけでなく、ノンフィクション作品を読んで参考にさせていただきました。もともとノンフィクションの作品が好きで読んではいたのですが、特に石井光太さんというノンフィクション作家さんの本はネグレクト、なぜ児童虐待が生まれてしまうのかを取材されていて、よく読んでいました。

――とても難しいテーマが出てきますが、学びがたくさんありますよね。自分たちの悩みとも近いお話が出てくるというか。

佐久間 ホリガイの悶々とした自分に対してのコンプレックスとか、自信のなさとか、人間関係とか。そういうところから覚悟を持って成長していく話でもあるんですけど、いざ実際に自分が演じてみて、過去を振り返ってみると、悩んでいたことも苦しかったことも、すごく美しくて輝かしい思い出だったんですよね。

――改めて映画の見どころを聞かせてください。

佐久間 高校生や大学生は、特にこのご時世では考えることがたくさんあると思うんですけど、ただ毎日を一生懸命生きているだけで素晴らしいし、特別なことです。苦い出来事の先に、輝かしい自分になれることは絶対にあると思います。この映画からいろいろなことを、それぞれの感性で感じてほしいなと思います。

読書好きの佐久間由衣がおススメする作家

――佐久間さんは読書がお好きだということですが、普段はどのようなものを読まれますか?

佐久間 西加奈子さんや川上未映子さんが好きです。自分の中にもあるはずなのに言葉に出来ないという感情を言葉に出来て、小説の中に散りばめられているような作品が好きで。この映画の原作の小説にもそれを感じました。

――佐久間さんが学生のときに読まれた本で、印象的だったものはありますか?

佐久間 太宰治を漁るように読んでいました。敬意を持って「太宰治」と呼び捨てにさせてもらうんですけど(笑)。太宰治が好きな人は皆さん言うのですが、「こういう気持ちになるのは自分だけじゃなかったんだ」という感情に出会ってしまったんです。あんまり人に言えない自分の心の中の苦い部分、暗い部分、黒い部分がすごく細かく描かれています。そこに共感してしまって、太宰治の沼にハマっていきました。

――読者の隠れていた感情を引き出してくれるというか、太宰治作品ってすごいですね。

佐久間 私、キャラ変を過去に何度かしていて(笑)。中学生の頃は本当にひょうきん者で常に人を笑わせるのが楽しいという、ちょっと芸人的ポジションでした。でも高校生で太宰治と出会ってしまって、もっと内面的なものに向き合っている時間が長くなったというか。読書を通していろいろな経験ができました。

――W online読者にオススメの小説を教えてください。

佐久間 川上未映子さんの『あこがれ』という小説です。弟が現役高校生なのですが、プレゼントしました。私にとっても特別な本で、出口がないと思っていた世界に、ちょっと出口を見つけてくれるというか、自分を導いてくれるような、とても温かい作品なので、ぜひ読んでいただきたいです!

Information

『君は永遠にそいつらより若い』
2021年9月17日(金)よりテアトル新宿ほか全国公開中

大学卒業を間近に控え、児童福祉職への就職も決まり、手持ちぶさたな日々を送るホリガイは、身長170cmを超える22歳、処女。変わり者とされているが、さほど自覚はない。バイトと学校と下宿を行き来し、友人とぐだぐだした日常をすごしている。同じ大学に通う一つ年下のイノギと知り合うが、過去に痛ましい経験を持つイノギとは、独特な関係を紡いでいく。そんな中、友人、ホミネの死以降、ホリガイを取り巻く日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。

出演:佐久間由衣 奈緒
   小日向星一 笠松将 葵揚 森田想
   宇野祥平 馬渕英里何 坂田聡
監督・脚本:吉野竜平
原作:津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』(ちくま文庫)
主題歌:小谷美紗子「眠れない」

©「君は永遠にそいつらより若い」製作委員会

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佐久間由衣

女優

1995年03月10日生まれ。2014年から俳優活動をスタートさせ、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017)、『”隠れビッチ”やってました。』(2019)、『ひきこもり先生』(2021)、『彼女はキレイだった』(2021)、『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(2021)など数々の話題作に出演。10月からスタートするTBS金曜ドラマ『最愛』にも出演。「ゼクシィ」10代目CMガールなど広告起用も多数。「第32回東京国際映画祭」東京ジェムストーン賞授賞など、今最も注目されている女優の一人。11月4日には初の写真集『佐久間由衣写真集 SONNET 奥山由之撮影』が発売される。

Photographer:Hirokazu Nishimura,Interviewer:Kozue Nakamura