共演の奈緒とは贅沢な出会いだった

――イノギを演じた奈緒さんとのお芝居が本当に素晴らしかったです。

佐久間 私がもともと奈緒ちゃんの作品をすごく見ていて。ドラマ「あなたの番です」、朝ドラ「半分、青い。」、映画『ハルカの陶』など、奈緒ちゃんが出演した作品への熱い感想を伝えました。仕事のことも、仕事に関係ないこともたくさん話す中で、信頼関係が出来ていった感じがします。言葉でお互いを知るというよりも、空気感というか、一緒にいて落ち着くところが、イノギさんとホリガイの関係だと思うんです。奈緒ちゃんとは初めて会ったときからそういう感覚があったので、贅沢な出会いだったと思います。

――佐久間さんも奈緒さんも、同世代で様々な作品に出演されていて、刺激を受けることもあったのではないでしょうか?

佐久間 たくさんありました。話していて思ったのは、私は物事を「自分にとってどうか」という基準で考えることが比較的多いのですが、奈緒ちゃんは、この映画のテーマでもあるように、他者に対して思いやりがあって、そういうところから自分が動く方だと感じました。だから尊敬できるところがたくさんあって、価値観が似ている部分もあって、出会えてよかったなと思います。

――特に好きなシーンはどこですか?

佐久間 気持ちがホッコリしたのは牡蠣鍋のシーンで、自分で観ても楽しそうだなと思いました。シリアスなシーンですと、ヨッシー(吉崎)の「人は朝起きて歯を磨くみたいに簡単に死ねちゃうんだな」というセリフは、現場でも鳥肌が止まりませんでした。今生きている人たちが、もういない人たちを考えて生きていくという時間を、あの一瞬で感じたというか、今生きていることも当たり前じゃないんだなと強く感じたシーンです。

――辛いシーンも多いですが、演じていて、気持ちが役に引きずられることはありましたか?

佐久間 あまりなかったです。ただ、その期間に会った友達からは「顔つきが違うね」と言われました。良い意味ですり減ってる部分があったんでしょうね。自分では意識していなかったですが、友達に気づかれました。

――ホリガイが目指す児童福祉司というお仕事については、ご自分でも調べたりされましたか?

佐久間 監督から頂いた資料だけでなく、ノンフィクション作品を読んで参考にさせていただきました。もともとノンフィクションの作品が好きで読んではいたのですが、特に石井光太さんというノンフィクション作家さんの本はネグレクト、なぜ児童虐待が生まれてしまうのかを取材されていて、よく読んでいました。

――とても難しいテーマが出てきますが、学びがたくさんありますよね。自分たちの悩みとも近いお話が出てくるというか。

佐久間 ホリガイの悶々とした自分に対してのコンプレックスとか、自信のなさとか、人間関係とか。そういうところから覚悟を持って成長していく話でもあるんですけど、いざ実際に自分が演じてみて、過去を振り返ってみると、悩んでいたことも苦しかったことも、すごく美しくて輝かしい思い出だったんですよね。

――改めて映画の見どころを聞かせてください。

佐久間 高校生や大学生は、特にこのご時世では考えることがたくさんあると思うんですけど、ただ毎日を一生懸命生きているだけで素晴らしいし、特別なことです。苦い出来事の先に、輝かしい自分になれることは絶対にあると思います。この映画からいろいろなことを、それぞれの感性で感じてほしいなと思います。