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「ハピネス」は自分の声と手を繋いでいるような曲

——デビューシングル『ハピネス』のリリースが決まったときはどんな気持ちでしたか?

岡咲 声優として活動してきて5年目。お仕事でキャラクターソングを歌わせていただく機会はありましたが、岡咲美保として歌を歌えるということに、新しい気持ちになり、また胸が高鳴りました。学生時代から憧れていた声優になるという夢が叶い、歌でも表現する居場所を作っていただけたのは本当にうれしかったです。

——自分の声で歌うのとキャラクターの声で歌うのは違いますか?

岡咲 全然違いましたし、難しかったです。キャラクターソングは、キャラクターを維持しながら楽曲を表現するという難しさはありますが、演じる上で、その子の性格や声の軸、使い所が固定されるので安定する部分があります。一方、自分の素の歌声で表現すると響きも変わってきますし、幅も広がってくるので、その曲に応じて、どう歌えばいいのかを探すところから始まりました。

——表題曲の「ハピネス」はどのように歌うことを心がけたのでしょうか。

岡咲 幸福感があって、明るく元気になれる楽曲だと思ったので、自分の中で明るい表現というのをベースに作っていって、制作スタッフさんや作詞作曲していただいたDECO*27さんに聴いていただきました。皆さんとの話し合いもあり、この曲をより面白くするためにいろんな色付けをしました。可愛く印象に残るような声色で、リズムで遊んでいくような歌い方をしました。逆にDメロはメッセージ性が強いので、言葉をより大切にした、しっとり浸るような歌い方にしました。1曲を通して聴いたときに、深みが出るように意識しました。

——改めて自分の歌声を聴いてみていかがでしたか?

岡咲 歌っているときは必死で、『限られた時間の中でいいものを作りたい!』という気持ちが大きかったです。出来上がった「ハピネス」を改めて聴いてみると、すごく自分の声にマッチしているというか、「ハピネス」という楽曲が、自分の声と手を繋いでいるなという感覚がありホッとして笑顔が溢れました!楽曲に寄り添った歌い方が、自分なりにできたのかなと思います。

——カップリング曲の聴きどころを、それぞれ教えてください。

岡咲 「Popping Moments」は青春感のある恋の歌です。女の子の弾けそうな気持ちを、バンドサウンドに乗せて気持ち良く歌わせていただきました。冒頭の「等身大でいいんだってさ」は歌いやすいところからサラっと入って、サビの「弾けそうな今は」という歌詞に向かって音程が上がっていくんですが、気持ちよく高音を聴かせられる部分はレコーディングでもこだわって表現しました。「MY SPIRAL」はキャッチーでデジタルな曲です。イントロから「なんだこの曲は!」というインパクトのあるサウンドで、歌い方もメロディーに合わせて可愛らしく、ぐるぐるな世界を冒険する本人自身が楽しんでいるような歌い方をしています。3曲の中では一番、声優として培ってきた引き出しの存在を感じる楽曲でした。ライブで歌ったら一体感が生まれる曲だと思うので、みんなと一緒に歌える日を考えるとワクワクします。

放送部での活動が声優のお仕事にも活きている

——声優という職業を意識し始めたのはいつ頃ですか?

岡咲 アニメの世界を知って、声優という職業に惹かれ始めたのは中学生の頃からです。そうして声優になりたいという夢を抱く中で、水樹奈々さんの存在を知り、声優としてのお芝居はもちろん、「紅白歌合戦」やテレビの歌番組で活躍されている姿を拝見していて、すごくかっこいいなと思いました。声優というお仕事を目指す上で水樹さんが、研究したい、目指したいという憧れの存在に変わっていきました。水樹さんを通してアニソンにも一層魅了されて、より歌うことも好きになりました。

——学生時代、人前で歌う経験はありましたか?

岡咲 高校1年生のときに『NHKのど自慢』に出演した思い出があります。高校では軽音楽部に入っていたので、バンドを組んで、ヴォーカルとして部の発表会や文化祭で歌っていました。

——人前に出るのはその頃から好きだったんですね。

岡咲 文化祭などで見てくれている皆さんが手拍子してくれたり笑顔になってくれたりするのがうれしかったです。私が歌うのを大勢の人が聴いて喜んでくださるのって、カラオケで歌う楽しさとは違う感覚があって、それがすごく大事だなと感じました。自分が将来、声優になって、声の表現を大勢の人に届けていく中で、この経験は糧になるだろうなというのは、学生時代から意識していました。

——バンドではどういう曲を歌っていたんですか?

岡咲 アニメ「けいおん!」の楽曲や、Supercellさんの楽曲、陰陽座さんの「甲賀忍法帖」もすごく好きで歌っていました。とにかくアニソンが歌いたいとバンドメンバーに気持ちを伝えていましたね!(笑)

——昔から声は特徴的だったんですか?

岡咲 そうですね。生まれたときの「おぎゃー」の声が、1人だけ「ほぎゅあー」みたいな感じで超ハスキーだったみたいで、面白い響きをした声の子がいるぞって話題になっていたと母に聞きました!(笑)中学校の頃にクリアで高い声に声変わりをして。「かわいい声だね」って言っていただけることもあったし、普通に友達と会話をしていても、私が話した声だけ他の人にも聞こえるみたいなんです。よく「美保ちゃんあそこで遊んでた?声としゃべり方ですぐ分かった」みたいに気づいてもらえることがより増えたように思います!

——声優を目指し始めてから、努力していたことはありますか?

岡咲 高校生のときに軽音楽部と掛け持ちで放送部に入って、朗読をしていたことです。通っていた学校の放送部は全国でも成績を残していて、そこに入れば勉強になるかなと思って、高校に入る前から入部しようと決めていました。

——軽音楽部と放送部を掛け持ちされていたのでしょうか?

岡咲 途中で忙しくなったので放送部に専念することになったんですが、しばらくは両立していました。それに加えて、高校が進学校で、進路を決めるギリギリまで大学進学を考えていたので、勉強も頑張っていました。ただ、放送部の活動が何より熱中できる好きなことだったので、そこに一番力を注いで、大会優勝を目指して頑張っていました。

——実際、放送部の成績はどうだったんですか?

岡咲 県大会で優勝したり、「全国高等学校総合文化祭」という全国大会に朗読で出場して、全国で8名だけ受賞できる「優秀賞」をいただけて。高校生活の中で1番良い成績を残して部活を卒業できたので、すごく嬉しかったのを覚えています!

声優は自分のやりたいことが詰まっている仕事

——大学進学ではなく、声優一本でやっていこうと思ったときに決め手になったのはどんなことですか?

岡咲 高校3年生から、日本ナレーション演技研究所という学校に通っていました。部活もあって忙しい中ではありましたが、学校が終わってから神戸までレッスンを受けに通っていました。その過程で事務所のオーディションを受けて、高校を卒業する頃には、自分が今所属しているアイムエンタープライズで、声優として活動できるチャンスをいただいたので、これは専念するべきだと思いました。大学とお仕事を両立できる方もいらっしゃると思うのですが、当時たくさん考えた結果、私は1本でやる方が自分に合っているのかなと思って決断しました。

——中学生の頃に抱いた声優になりたいという夢がブレなかったのもすごいことですね。

岡咲 確かにそうですね。でも、声優という夢に出会うまでは、パティシエのアニメを見たらパティシエになりたくなったり、いろんなものに影響を受けやすい子供でした。そんな中見つけた声優という職業は、演じる上でいろんな職業にもキャラクターにもなれて、時にはキャラクターとして大好きな歌を歌うこともできる。それに加えて、キャラクターとして歌うという活動もできる。自分のやりたいことが詰まっているお仕事だなと思い感動しました。そこからは夢はブレなかったですね!

——実際に声優になって、どんな驚きがありましたか?

岡咲 声優になって1年目に、アフレコでご一緒した先輩方の演技を聞いて、自分のお芝居との違いに衝撃を受けました。 それまで私は独学の時間が長かったのもあり、自分の役の台詞からの景色しか考えられていなかったんです。でも、先輩方は掛け合いをする中で、この方がこういうお芝居をするから、それを受けてこのキャラクターを表現しようというふうに、柔軟にお芝居を変えることができるんです。それに対して私は自分の世界だけで完結してしまっていて、アフレコが自分にとっての発表会みたいな場になっていました。そのため現場でディレクションをしていただいても、それに従って路線を変更するのに苦労しました。空気感を一瞬でつかまれている先輩方を見て、勉強になりましたし、実際に現場に立たないと分からないこともたくさんあることを学びました。

——そういうことに対応できるようになったのはいつ頃ですか?

岡咲 『転スラ(転生したらスライムだった件)』という作品で主人公のリムル役をいただいてから、自分のお芝居は大きく変わりました。とにかくたくさん喋る子なんです。その分いろんなキャラクターとの絡みも多く、先輩方のお芝居もすごく近い距離で感じられて、休憩時間にも会話の中心に入れていただいて、いろんなお話をさせていただく機会も多かったので、経験を積むことができました。現場作りの一環でアフレコの表現も変わっていくのが心に染みたというか、大事なものとして胸に刻みました。

——声優をめざす上で大切なことは何だと思いますか?

岡咲 一番大切なのは「好きな気持ち」です。技術を身につけるのは根気がいることで、独学の時間はどうしても必要になってきます。すぐに実力には繋がらないこともあり、無駄だったなと思うことがあるかもしれないですけど、そこに費やした時間は無駄にならないと思うんです。くじけそうになったり、辛い気持ちになったりしても、夢に向かって費やした時間は絶対に嘘をつかないんですよね。演技の学校などで、先生から教わったことで成長できることも多いと思います。でも、それを自分の中に落とし込んで、いかに一人の時間をそこに費やせるか、それを普段から意識して忘れずにいられるかというのは結構なエネルギーを要することですし、声優を目指す上でも必要不可欠です。

——一人の時間を独学に費やすのは孤独な闘いですよね。

岡咲 私もそうでしたけど学生時代は多感で、いろんな将来の道が見える時期でもあります。その中で自分が好きなこと、やっぱりここに行きたいという気持ちの大きさが、最後の決め手になりました。どれだけ好きでいられるか、そして、その好きって気持ちをどれだけ新鮮なまま維持できるかというのは、声優という職業に限らず、他の道でもそうだと思うので大事にしていただきたいです。

——最後に、進路に悩む読者にメッセージをお願いします。

岡咲 自分を振り返ってみても、高校時代は周りのことが気になる敏感で繊細な時期だと思います。自分がどういう人間なんだろうとか難しく考えなくてもいいので、改めて自分が好きなこと、得意なこと、何が結局やりたいかという自分の心の声に耳を傾けてほしいです。難しいとは思うんですけど、自分が進む道というものは、だんだんと固めていけたら納得できるはずです。私自身、声優としても、アーティストとしてもこれからなので、場所は違えど一緒に上を向いて頑張っていきましょう!

Information

岡咲美保デビューシングル
『ハピネス』
2021.9.15 Releace!
価格:1,980円(税込)(CD+Blu-ray盤) 1,430円(税込)(通常盤)
レーベル:キングレコー ド

1. ハピネス
2. Popping Moments
3. MY SPIRAL

Blu-ray(初回限定盤のみ)
・「ハピネス」MUSIC VIDEO
・MAKING

岡咲美保(おかさき・みほ)

声優

11月22日生まれ。岡山県出身。日本ナレーション演技研究所卒業後、2017年に声優デビュー。2018年10月に始まった『転生したらスライムだった件』で初主役を演じる。2020年、「第14回声優アワード」新人女優賞受賞。ラジオパーソナリティーやバラエティのナレーションなど幅広く活躍している。主な出演作に『音楽少女』(西尾未来)、『ロード・エルメロイII世の事件簿』(イヴェット・L・レーマン)、『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(メアリ・ハント)、『ゾゾゾ・ゾンビーくん』(イサム)、『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(鹿野琴美)、『あひるの空』(富永春美)、『鬼滅の刃』(てる子)、『炎炎の消防隊二ノ章』(サキ)など。

Photographer:Yuta Kono,Interviewer:Takahiro Iguchi