大学時代のプレゼンで苦い経験をした思い出

——撮影当時、古川さん自身もアミと同じ大学生でした。現役大学生であることが、演じる上でプラスになった部分はありますか?

古川 私は就活をする前にこの仕事を始めたので、就活に対する不安とか、周りの状況などはよく分からなかったんです。だからアミが今ぶつかっている壁というのは共感しづらいかなと不安でした。ですが、自分が好きなもので将来に進んでいこうとするところには共通するところがありました。それって自分に対する責任がすごく重いし、勇気がいることだと思います。その点に関する怖さや葛藤には共感しました。

——アミの描いた広告を講評するシーンでは、先生に酷評される様が生々しくて学生時代を思い出しました。

古川 やっぱり自分がいいと思っているものとか、自分が表現されたものが否定されるってすごく怖いですよね。自分が「こう思ってるんだ」と説明したことに対して、周りがどう思うかっていうことも怖いので、怖いこと尽くしというのを演じながら感じていました。

——実際に大学でそういう経験はありましたか?

古川 似たような経験がありました。具体的には恥ずかしくて言えないですが(笑)。少人数のクラスでプレゼンしたことがあったんです。私自身、自信がなかったというか、迷った状態でプレゼンしたので、「これに対してどう思っているの?」って問い詰められて……。自分が言いたいことと周りが思っていることがずれていて、私が本当に言いたいとこはそこじゃないけど、そこに着地できていない、という苦い経験でした。

——その後、自分の思いを言語化することは上手になりましたか?

古川 こういうインタビューとか、考えていることを言葉にする機会も増えたので、だんだんできるようになってはきたんですけど、まだ苦手意識はあります。

——『春』は数々の映画祭でグランプリを受賞して、古川さんも「TAMA NEW WAVE」 ベスト女優賞を受賞されました。それによって意識は変わりましたか?

古川 自分の作品を客観的に見られる状況ではなかったので、作品が完成した後も「本当にこれでよかったんだろうか」などと考えていました。でも、いろんな賞を受賞したと聞いてびっくりしました。改めて大森監督や周りの方々に支えられていたなと思いました。