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中学時代の悩みを思い出しながら役作り

――『リッちゃん、健ちゃんの夏。』の撮影は2年前だったそうですが、武さんは当時大学1年生で、中学2年生のリッちゃんを演じるのは大変だったと思います。初めて脚本を読んだときにどう思われましたか?

武 それまで大森歩監督とお会いしたことはなかったのですが、私とW主演の笈川健太君に合わせて脚本を書いてくださったんです。当て書きなのに「中学生でくるんだ!5、6年前の年齢の役を果たしてできるのかな……」って思いました。中学生当時、自分はどういうことに悩んでいたのかを思い出しつつ、探り探りという感じで役作りをしました。

――リッちゃんは笈川さん演じる国語教師の健ちゃんに思いを寄せます。武さん自身、学校の先生に思いを寄せた経験はありますか?

武 私自身はなかったんですけど、中学時代に若い先生のことが好きだった友達がいて、よく相談を受けていたんです。だから脚本を読んだときに、先生を好きになるのも普通にあるよなって思いました。その子には「先生を好きになってくれてありがとう」って感謝しています(笑)。私は中学生のときは塾に通っていたんですが、大学生の先生が多く、ちょっと大人に見えるし、かっこいいなって憧れみたいなものもあったので、友達の気持ちも理解できました。

――リッちゃんと武さん自身に共通している部分はありますか?

武 恋愛に関してはリッちゃんと一緒です。その人のことが好きだって自覚したら、駆け引きとかせずに、ストレートに気持ちを伝えるというか、よっぽど無理じゃない限りは「ワーッ!」って突っ走ってしまいます。自分で行動を起こさないと何も始まらないですからね。

――撮影は長崎県の佐世保市の市街地と、その離島の黒島で行われています。どちらも異国情緒が漂っていましたが、特に黒島は独特の空気感が伝わってきました

武 佐世保の市街地も黒島も初めてだったんですが、黒島は毎朝早くから島の人たちが教会でミサをしていて、日本じゃないような空気感がありました。撮影したのも、実際に島の人たちが使っている場所だったので、異質な雰囲気の中にいるだけで、いつもの自分と違うような気持ちになりました。

――リッちゃんと現地の子どもたちが触れ合うシーンは、すごく自然で微笑ましかったです。

武 島の子たちは天真爛漫で、「いい場所に育ったな。このまま成長していってほしいな」と思いました。最初は緊張していたのか、ちょっとだけもじもじしていたんですけど、一緒に「だるまさんが転んだ」をやったら、すぐに人懐っこく接してくれました。

――リッちゃんと健ちゃんが海中で抱擁するシーンが印象的でした。

武 撮影で一番苦労したのが、そのシーンでした。私は水恐怖症で泳げないですし、息継ぎもできない。脚本に「海に飛び込む」って書いてあったのを読んで、絶望的な気持ちになりました(笑)。5、6回は海に飛び込んだんですけど、そのたびに髪も服も乾かして、髪も長かったからへとへとでした。飛び込んだはいいけど、泳ぎ方も分からない。近くに海女さんが待機してくださっていたんですけど、カットがかかってからじゃないと来られないし。最初に飛び込んだときは、水の中で「がはっ!」ってなっちゃって、これで死ぬんだなって思いました。

――死まで覚悟したんですか(笑)。

武 泳げないから基本、笈川君に任せきりでした。けっこう海も深くて、「手前すぎるところから飛び込むと、貝に当たって血だらけになるから思いきり遠く飛び込め」って言われて余計に怖かったです。今でも、海に飛び込むなんて考えられないです!

――笈川さんの印象はいかがでしたか?

武 いつもニコニコしていて気さくな方です。先生っていつもはニコニコしていても、一瞬真顔になったりするじゃないですか。そんな瞬間が笈川君にもあって、「先生が憑依してる!」って思いました。当て書きだけあって、健ちゃんという役が馴染んでいて、「あんな先生いるよな」って思わせてくれました。

――武さんも映画初主演とは思えないほど自然な演技でした。

武 考えすぎちゃいけないと思いました。もちろん方言なんかはちゃんと言わなきゃいけなかったんですけど、そこまでセリフにとらわれず、その場で思ったように動くしかないなと。中学生の感情になり切って、余計なことは考えず、相手の言葉を聞いて反応するという演技を心掛けていました。

――大森監督の演出はいかがでしたか?

武 基本は委ねてくださって、私たちが演じた後に「ここは違うからこうした方がいい」って伝えてくださるような感じですね。私たちはそれを踏まえて演じていくという風に進んでいきました。

――完成した映画を見て改めていかがでしたか?

武 意外と自分が幼く見えました。髪も年齢に合わせて短くしたということもあると思うんですけど、意外と中学生役もイケてたなと(笑)。

芸能生活に必要なことを大学で学べている

――この世界をめざしたきっかけを教えてください。

武 小学生の頃にスカウトを受けて事務所に入ったんですけど、そのときは単なる好奇心で、本気でやろうと思っていなかったんです。でも中学生のとき、学校から帰ったら、たまたまテレビでドラマ『1リットルの涙』の再放送をやっていて。途中から観たのにめちゃくちゃ大号泣しました。そのとき、ふと人を泣かせることができるってすごい、人の心を動かすことってすごいことだなって思ったんです。それまでは映画を観ても「面白いな」で終わっていたんですけど、そのときに演技のお仕事を本気でやりたいと思いました。

――今は俳優だけでなくモデルのお仕事もされています。

武 モデルを始めたのは1年前ぐらいからなんですけど、俳優とは全然違うジャンルの仕事だと思います。同じ見せる仕事ではありますけど、見せ方は違いますし、どちらも難しいですけど、それぞれやりがいを感じています。

――現在、武さんは現役大学生ですが、大学へ行こうと決めた時期はいつですか?

武 高校生になって、漠然と大学には行きたいなと思っていたんですけど、別に大学でやりたいこともないからいいやと思っていました。でも進学か就職を考える時期に母に「絶対に大学は卒業したほうがいい」と言われて。将来を考えて、興味があった芸術系の大学に行ってみようと。母の「行った方がいい」という念押しは大きかったですね。

――芸術系の学科で学ばれているそうですが、仕事に活きている部分はありますか?

武 正直、現場での経験からのほうが学ぶことは多いですが、演者以外の視点で仕事を見ることができるという点で、芸能生活に必要なことを大学で学べていると思います。

――学業と仕事の両立はいかがでしょうか?

武 めちゃくちゃ難しい!今3年生なんですけどそろそろ楽になると思っていたんです。ところが、ここ1年くらいで、仕事の量がすごく増えたこともあって、単位を取れるか取れないかギリギリの出席率です。移動中に課題をやったり、レポートを毎週のように提出したり、今が一番大変かもしれません。せっかくここまで通わせてくれたので、絶対に卒業はしなきゃなと思っていて。大学卒業という称号をもらうために必死に頑張ってます。

――大学進学を検討しているティーン読者にアドバイスをお願いします。

武 高校生のうちにやりたいことを決めるっていうのはすごく難しいことだと思います。だいたいは決めたほうがいいと思うんですけど、大学に入ってからやりたいことじゃないなって感じたら、無理して通わなくてもいいと思います。ちょっと学ぶことが多くなって大変かもしれないけど、学科を変えてみるのもいいかもしれません。これだけをやっていくって決め込まずに、気軽に視野を広げてみる。他の分野にも興味があるのであれば、手を出してみるのもいいんじゃないかなって思います。

――最後に改めて『リッちゃん、健ちゃんの夏。』の見どころを教えてください。

武 10代の方からしたら中学生の頃の記憶は、ついこの間みたいな感じかもしれません。その記憶の中には、先生を好きになったり憧れを抱いたりした人も少なくないと思います。その当時の感情を思い出して、「甘酸っぱかったな」とかドキドキしてもらえればなと。もちろん、今まさに恋愛中の人は「分かる分かる」とか「こんなこと言われたら辛いよね」とか、深く共感してもらえたら本望です!

Information

『リッちゃん、健ちゃんの夏。』
10月1日(金)よりアップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開

[キャスト]
武イリヤ 笈川健太
大國千緒奈 藤原隆介

[スタッフ]
脚本・監督:大森歩
主題歌:「あの日」寺尾紗穂 P-VINE RECORDS

©渋谷TANPEN映画祭CLIMAXat佐世保2019 AOI Pro.

渋谷TANPEN映画祭CLIMAXat佐世保 オリジナル短編映画 第3弾
渋谷センター商店街・させぼ四ヶ町商店街プロジェクト 長崎県若者アート「LOVE♡ながさき」創造プロジェクト

配給:アルミード
2019/ 日本/ カラー/ 2Kビスタ/ DCP/ 30min

佐世保市在住の中学2年生のリッちゃんは、両親の離婚で、2学期から東京への転校が決まっている。夏休みの間に、恋する国語教師の健ちゃんを追って黒島にやってきたリッちゃん。迫害された潜伏キリシタンが逃げた黒島で、死んでもいいと思うほど愛する健ちゃんとの淡い恋は実るのか……。

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武イリヤ

モデル・女優

2001年3月23日生まれ。千葉県出身。映画『SUNNY-強い気持ち 強い愛-』(18)、ドラマ「刑事7人」(テレビ朝日)などに出演。雑誌「MAQUIA」(集英社)やアルビオン「IGNIS io」広告に出演するなどモデルとしても活動の幅を広げている。現在カネボウ「KATE」のビジュアルモデルを務めている。

Photographer:Hirokazu Nishimura,Interviewer:Takahiro Iguchi
衣装協力
JILL by JILLSTUART