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映画初主演でセリフの意味を理解することに苦労した

――岡本真希役として『光を追いかけて』で映画初主演が決まった時のお気持ちを聞かせてください。

長澤 鮮明に覚えているわけではないですが、台本を読ませていただいた時に、真希と私は性格や感情の出し方がまったく違う子だと思いました。自分に真希が表現できるのか、不安はすごく大きかったです。

――真希とご自身は真逆とおっしゃいましたが、そうなると役作りも苦労されましたか?

長澤 最初はセリフを覚えることはできても、セリフの意味というか、「真希がなぜその言葉を言っているのか」が、あまり分からなかったんです。でも、撮影に入って演じていくうちに意外と難しい子じゃないことが分かってきて。真希は悲しい時には泣いて、嬉しい時は笑う、喜怒哀楽の激しい子ではあるけど、それは自分とも少し共通しているところだと思いました。

――ロケも作品の舞台である秋田県まで行かれたとうかがいました。

長澤 もともと私がインドア派だということもあって、普段は旅行にも全然行かないんですけど、今回は撮影が始まる前からワクワクしていました。実際に行ってみると、お米はもちろんおいしいし、それ以外の食べ物もおいしい、景色も綺麗なんです。田んぼの稲の中で寝っ転がったりもしたんですけど、初めての経験でした。

――どのくらい滞在されていたんですか?

長澤 2〜3週間くらいです。親元を離れて一人で遠出をするのは初めてだったから最初は寂しかったです。でも、共演の中川(翼)くんや中島セナちゃん、柳葉(敏郎)さんたちもいらっしゃったので、暗くはならなかったですし、撮影が終わった後に「帰らないといけないのか」という寂しさがありました(笑)。

――むしろこのままずっといたいくらい。

長澤 それくらい思っていました(笑)。

――行く前に楽しみにしていたことはありましたか?

長澤 やっぱり食べ物です。食べることも大好きなので、「絶対おいしいだろうな」ってワクワクしていました。撮影中は、お弁当なども地元の方が作ってくださって嬉しかったです。空いている時間に地元の方とも話して、知らなかったこともたくさんあったので、全部が新鮮でした。

――撮影でも印象に残ることがたくさんあったと思います。例えば物語の序盤、真希が自宅の屋根の上に登っているシーン。

長澤 実は、高いところが得意じゃなくて、ちょっと怖かったんです。支えもほとんどなくて自分で立たないといけないから、「もしものことがあったら」ということばかり考えてしまいました。でも、登っているうちにだんだん撮影じゃなくても登りたくなりました(笑)。もちろん危ないから、そんなに登ってはいないですが、真希が屋根の上が好きな理由が少しわかりました。気持ちいいし、一人になれる場所でもあるから、個人的にはそこにいるだけで落ち着くんです。

柳葉敏郎さんの一言にほっとした

――劇中では民謡も歌われていますが、なかなか大変だったとお聞きしました。

長澤 1ヶ月くらいレッスンに通ったんですけど、基礎の肺活量がとにかく足りなくて。短いフレーズでも、長く伸ばす部分とか、一息で歌わないといけない部分がたくさんあるので、とにかく持たない。練習中に一度、酸欠で倒れかけてしまうこともありました。でも、屋根の上で歌う時に、ふらっとなったらダメじゃないですか(笑)。そこだけは気をつけないといけないと思って、先生にもたくさん指導していただきました。

――抑揚のつけ方も難しそうですね。

長澤 “こぶし”もそうですけど、音程やリズムも、伴奏がなくアカペラだから、自分でテンポを決めているとどうしても息が足りない。それでも徐々に余裕が出てくると、歌詞の意味や、風景を思い浮かべながら歌えるようになって楽しかったです。

――情感豊かに歌いあげていたので、さすがだと思いました。

長澤 先生に支えられながらじゃないですけど、ぎりぎりまで調整をしていただいたので、自信は持てましたし、成長もできたかなと思います。

――真希のおじである秀雄役は柳葉敏郎さんが演じていますが、共演されていかがでしたか?

長澤 言うことははっきりと言ってくださるので、あいまいなまま終わることは全然なくて。でも、怖い雰囲気でもなく、本当に自分のおじさんというような感じでしたし、ずっと支えられていたように感じます。それに私が間違えてNGを出してしまったときも、柳葉さんは「ドンマイ!」と言ってくださったんです。その一言にとてもほっとしたと同時に、今まで「完璧にやろう」「NGを出しちゃいけない」とか、そういうことばかり考えていたのが逆に失礼なんだということに気がついて。それまでは真希という子を理解するために、時間や思考を使うことの方が大事だということが分かってなかったんですよね。

――役を演じる意識もそこから学ばれたんですね。

長澤 自分にできることは「どれだけ真希を分かってあげられるか」。柳葉さんとの撮影が最初のころだったので、早い段階でそれに気づけてよかったです。

――映画の見どころを教えてください。

長澤 真希が成長していくストーリーはもちろんですけど、映画には秋田の魅力がぎゅっと詰まっているので、音や空気感など、そういうものも感じてほしいなと思います。

演じることが今は一番楽しい

――長澤さんは現在、女優を中心に活動されていますが、芸能界に入ったきっかけを教えてください。

長澤 オードリー・ヘプバーンさんがきっかけです。おばあちゃんの家に(オードリーの)写真が飾ってあって、それを初めて見たときに「すごく綺麗な人だな」と思って。それからオードリーさんの『ローマの休日』を観たり、伝記で人生をたどったりしていくうちに、綺麗なだけじゃなく、心も優しくて美しい方だということが分かったんです。だから、最初は女優になりたいというよりも、「オードリー・ヘプバーンさんみたいな人になりたい」と思っていました。

――長澤さんが芸能界で活動を始めたのはいつごろからですか?

長澤 本格的に始めたのは小学5年生くらいからです。この1〜2年間はいろんな現場を踏ませていただき、いろんな方と出会わせていただいていますが、まだまだこれからだなと思っています。

――この世界に入った当時、今でも覚えていることはありますか?

長澤 前は他人のことばかり気にしてしまっていたんです。同年代の子で、自分よりもっと活躍している子をオーディションで見かけると「あ……」って思っちゃったり(笑)。そういう些細なことではあるんですけど、自分のことを一番理解して考えてあげなきゃいけないときに、他の人のことばかり気にしていてはダメだと思いました。もちろんライバルがいて、切磋琢磨するのはいいことだけど、それが自分にとって悪い方向に働いちゃうようなら、しない方がいいと思いました。

――今年で16歳を迎えられますが、芸能界に入ってよかったなと思うことは何でしょうか?

長澤 女優として、演じることが今は一番楽しいですし、そういう自分の好きなことができるのはよかったなと思います。できないこともたくさんあるし、うまく表現できないことや、もどかしい感じもあるんですけど、それ以上に「楽しい」と思えるから、よかったと思っています。

――お仕事の息抜きにはどんなことをして過ごしていますか?

長澤 インドア派なので、あまりどこかに遊びに行くっていうことはないんですけど、ゲームをしたり、絵を描いたりするのが好きです。最近は料理にはまっています。調べながらなので、そんなにすごくうまくできるわけじゃないけど、楽しいですね。

――自分のできることを増やしているんですね。

長澤 それが役に生きたらいいなと思いつつ(笑)。どんなことも絶対に役に立つから、いろんなことをやっていきたいと思っています。

――これから役者として挑戦されたいことはありますか?

長澤 自分がやったことのない役をやってみたいです。簡単に言うとお金持ちの役とか。あとは、もっとたくさんのスタッフさんや監督さん、俳優さん、女優さん、いろんな方と出会いたいと思っています。

――最後にティーンのみなさんにメッセージをお願いします!

長澤 答えが見つからない時って、悩んで考えすぎちゃうから、どんどん別の方向に逸れていってしまって、ゴールが見つからなくなってしまうと思うんです。そうなったら、一回振り出しに戻って簡単に考えてみる。そうしたら意外と、「そんなに悩むことじゃなかった」と思えることもあります。進路も真剣に考えなきゃいけないことですけど、自分の好きなことをやった方がやっぱり楽しいし、その先も頑張っていけると思います。

Information

『光を追いかけて』
10月1日(金)グランドシネマサンシャイン池袋他全国順次公開

中川翼 長澤樹
生駒里奈 中島セナ 駿河太郎 小野塚勇人
下川恭平 木村聖哉 丹野未結 日向丈
柳葉敏郎

原作:成田洋一
脚本:成田洋一/作道雄
音楽プロデューサー:鮫島充 音楽:山下宏明/河内結衣/内山孝洋
主題歌:「心解く」湯木慧
配給:ラビットハウス
©2021「光を追いかけて」製作委員会

両親の離婚で父の故郷である秋田県鷲谷町に引っ越した、中学2年生の彰(中川翼)。田園風景が広がるこの町にも転校先のクラスにも馴染めず、憂鬱な日々を送っていた。そんな中で学校帰りに見た、民家の屋根に立つ不思議な少女に心惹かれる……。ある日彰は、空に浮かぶ謎の緑の光を目撃。それを追って田んぼにできたミステリーサークルに辿り着くと、屋根の上の少女と出会う。彼女の名は真希(長澤樹)。彰と同じクラスだったが、不登校を続けていた。そんな彼女も彰にだけは心を開き、共通の秘密を持った 2 人の仲は接近する。灰色だった日常が輝き始めた 2 人を、真希のおじで田んぼの持ち主である秀雄(柳葉敏郎)が優しく見守る。過疎化のため彰たちが通う中学校は、今年度限りで閉校となる。「閉校祭」という名の最後の文化祭に向けて、中学生たち、そして大人たちも揺れ動く。謎の緑の光は、彰と真希に果して何を伝えようとしているのか?

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長澤樹

女優

2005年10月24日生まれ。静岡県出身。2020 年公開の『破壊の日』で映画初出演。他に短編映画『卵と彩子』(20)、ドラマ「ノースライト」(20/NHK)、「閻魔堂沙羅の推理奇譚」(20/NHK)、「青の SP(スクールポリス)-学校内警察・嶋田隆平-」(21/関西テレビ)、「息をひそめて」(21/Hulu)に出演。日生劇場で上演された「INSPIRE 陰陽師」(20/12~21/1)で初舞台を踏んだ。CM では「パナソニックホームズ」、「INPEX」に出演。

Photographer:Hirokazu Nishimura,Interviewer:Tetsu Takahashi, Stylist:Risa Ueda
衣装協力
nagisa