浪人時代のコンプレックスの反動で役者生活にまい進
――学生時代のお話をおうかがいします。高校時代に夢中になっていたことはありますか?
藤原 特に何にもないですね…。本当にむなしい高校時代でした(笑)。剣道部には入っていたんですけど、1年目の夏でドロップアウトしてしまいました。剣道をやめなかったら部活の仲間といられたんですけど、やめたことで仲間に対して強いコンプレックスを持つようになって。小学1年生から始めたので、幼なじみたちがいっぱいいて、そいつらがどんどん強くなっていくのに自分はドロップアウトしていると思うと、どんどん精神的に落ち込んでいきました。
――剣道はどうして辞められたのですか?
藤原 剣道以外にできることがもっとあるんじゃないかと思ったんです。でも何もなかったんですよね。それまでは剣道一筋で、小学校6年間はずっと坊主でした。特に中学校の3年間はほとんど剣道漬けだったのに、それがなくなったので基本虚無でしたね。やることが本当になくて、ゲームをしたり、友人の家に行ってグダグダしたり、ひたすら時間を潰していました。何もかもが退屈でした。
――大学時代はいかがですか?
藤原 浪人して1年間予備校に通わせてもらってから、晴れて上京しました。今思えば、高校卒業してからすぐに上京すればよかった。でも当時は大学受験をすれば親を喜ばせられるし、上京もできるし、最高だなと思っていたんです。でも大学もすぐに中退しちゃうので結果的に親不孝でしたけど。
――大学にはいつまで通われたのですか?
藤原 1年も行っていないです。3ヶ月通ったあたりだったと思います。1日に何本も映画を見続けるみたいな生活をして、家から出なくなっちゃったんです。アルバイトもせずひたすら映画を見続けていました。
――もともと映画はお好きだったんですか?
藤原 小学校のときから大好きでした。ただ高校3年間は全く見ていなかったかもしれないです。
――大学を辞めたあとは、役者というお仕事に没頭していったのでしょうか?
藤原 浪人時代にあった強いコンプレックスの反動で、役者生活にまい進しました。でも誰でも役者になれるわけではないし、最初の7年くらいは地獄でしたね。好きなことで飯を食ってくのはこんなにしんどいんだって。僕より地獄を見てきた人はたくさんいると思うんで、あんまり大げさなこと言えないんですけど、少なくとも僕にとってはもう最悪でした。でもこれをやめたら、もう死ぬしかないみたいな気持ちがあって。どう生きていけばいいのかわからなかったし、社会生活はまともに送れない、剣道も大学も続けられなかったし、ここで辞めたらもうおしまいだろ、みたいな。崖っぷち状態でした。10年続けた今、やっと「飯食えるかな?」と思えるくらいです。
――これまでたくさんの映画をご覧になった中で、10代のうちに見ておいたほうがいいと思う作品はありますか?
藤原 邦画だと岡山天音くん主演の『ポエトリーエンジェル』(16)です。学校生活になじめない学生たちが、詩のボクシングという自分たちで詩を作ってステージ上で詠みながら戦う競技に目覚める物語です。高校のときにこの映画を見ていたら、ちょっと人生が変わっていたかもって思ったくらい、いい映画です。洋画だと『ウォールフラワー』(12)が素敵ですね。10代の時にどう楽しんでいいのか、どう恋愛していいのかも分からなかったんです。でも『ウォールフラワー』の主人公たちは、殻を脱ぎ捨ててなんとか人生を楽しもうとします。こんなに楽しい世界が広がっていていいんだという気持ちになれると思います。高校生にとって、楽しいことには自分から近づいてみようと思えるきっかけになればいいなと思う映画ですね。
――最後にティーン世代の読者にメッセージをお願いします。
藤原 俳優もそうなんですけど、チャンスなんてないんで、自分から作っていくしかないです。楽しい場を奪われたんだったら、自分でその場所を作っていくしかない。やるしかないんですよね、僕たちの世代は。令和は新世代で、みんなめちゃくちゃ賢いし、行動力もあるはずだし、もう自分からいくしかないです。好きな人がいるなら、自分から好きと伝えるしかない。
――選択肢が多い時代でもありますよね。
藤原 多いですよね。やりたいことがなんでもできちゃうというか、何でも手に入っちゃうので、みんな何を選んでいいか分からないと思います。だから、若いうちにあえて一番苦しい道を選択して、苦労しまくったら、本当の喜びが手に入るんじゃないかという気がします。でも偉そうなことは言えないですね、僕もまだまだ10代みたいなマインドなんで(笑)。
Information
『DIVOC-12』
絶賛公開中!
監督:藤井道人 上田慎一郎 三島有紀子
志自岐希生 林田浩川 ふくだみゆき 中元雄 山嵜晋平 齋藤栄美
廣賢一郎 エバンズ未夜子 加藤拓人
製作・配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© 2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.
『よろこびのうた Ode to Joy』
出演:富司純子 藤原季節
監督・脚本:三島有紀子
ポスティングのパートと年金で、ひとり細々と生きる75歳の冬海。ある日、海での散歩の途中、東北弁を話す優しい青年・歩と出会い、とある仕事に誘われる。もし100歳まで死ななかったらあと25年……生活の不安、ちょっとした贅沢をしたいという小さな欲望。怪しいと理解しつつも報酬に惹かれ、引き受けることに決める冬海。お金と安心を得るため、二人は背徳的な仕事へと車を走らせる。

藤原季節
俳優
1993年1月18日生まれ、北海道出身。映画『his』(20)、主演映画『佐々木、イン、マイマイン』(20)にて第42回ヨコハマ映画祭 最優秀新人賞を受賞。21年は映画『くれなずめ』『明日の食卓』『のさりの島』、大河ドラマ『青天を衝け』などに出演。現在映画『空白』が公開中。ドラマ『それでも愛を誓いますか?』が放送中。待機作に、舞台『ぽに』(作・演出:加藤拓也/2021年10月28日(木)~11月7日(日) KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ)、映画『わたし達はおとな』(加藤拓也監督/2022年6月10日(金) 公開)等がある。
Photographer:Hirokazu Nishimura,Interviewer:Sonoko Tokairin, Stylist:Shohei Kashima (W), Hair&Make:Motoko Suga
衣装協力
jacket ¥97,900、pants ¥52,800/共にAPOCRYPHA.(Sakas PR)
T-shirt ¥13,200/SEVEN BY SEVEN(Sakas PR)
その他スタイリスト私物
※すべて税込み
お問い合わせ先
Sakas PR(APOCRYPHA.、SEVEN BY SEVEN) TEL.03-6447-2762