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日本初のバーチャルプロダクション技術を使った撮影

――今回のプロジェクトに参加を決めたきっかけを教えてください。

松本 こういう大変な状況が続いているなかで、みんながいろんな気持ちを抱えていると思います。私はそういう状況に対してネットなどで発信しないタイプなので、こうやって作品という形で届けられるのはありがたいなと思いました。別の映画を1本撮り終えてからすぐの撮影で、時間がない中ではありましたが、こういう状況の中で誰一人欠けることなく作品が作れるのは普通のことじゃないんだなという思いをかみしめて、最後まで撮りました。

――『ユメミの半生』の脚本を読んで、どんな印象を受けましたか?

松本 すごい展開の速さだなと思いましたし、ひとつの短編映画の中でひとりの人生を使って映画の歴史を描くのも面白かったです。今回は日本で初めての技術(バーチャルプロダクション技術)を使っての撮影だったので、本当にやってみないと分からないし、できてみないと分からないという、ワクワクもありました。

――バーチャルプロダクション技術を使った撮影はいかがでしたか?

松本 いろんな場所で撮ろうとしたらすごく時間がかかるものを、ひとつの場所で、1日でぎゅっと撮れるので、これが普通になったらすごいなと思いました。やっぱり自然の中での撮影だと空気を感じられたり、飛んでいる鳥を見たりするという、その場にいることで広がる表現もあると思いますが、今回は技術さんの力を借りて作る部分が多いので、みんなで一丸となって作っている感は強かったです。お芝居する上では、普段とはあんまり変わらないのかなと思いました。

――完成した作品をご覧になった感想も教えてください。

松本 面白かったです。違和感がひとつもないと言ったら嘘になるんですけど、そのちょっとした違和感もいい仕上がりになっているというか。ちゃんと演じている人の表情に目がいったので、技術的にも成功じゃないかなと思います。ラストのシーンは、これから起こることにワクワクできるようなモノ作りをすることで、ネガティブもポジティブに捉えられるかなと思います。

――映画の歴史にならってさまざまな撮影をされていますが、その中でも気に入っているパートはありますか?

松本 今回、初めてカンフーをやりました。やっぱり初めてやることは楽しいなって思いました。あとは風が吹くなかで小関(裕太)くんと見つめ合って、寄り添って抱き合っていたときの格好は印象的です。クルクルと巻いた髪型は普段はやらないし、セリフの言い方とかも面白かったです。

――小関さんとは映画『みをつくし料理帖』でも共演されていますよね。

松本 『みをつくし』のときの役柄とは全然違ったので、「あのときは『食は人の天なり』とか言っていたのに、今度は二人でバイクに乗っているなんてなんか面白いね」と話していました。やっぱり一度共演したことがあるので、すごく自由に撮影ができました。

ターニングポイントになった朝ドラ出演

――短い撮影期間の中で、監督や共演者の方とコミュニケーションをとるのは難しかったですか?

松本 本当に撮影が一瞬で。普段から監督と話し合ったりするほうではないんですけど、今回はちょっと言葉を交わすだけで終わってしまいました。(映画館のシーンで)共演した男の子は、「映画が初めて」と話していてガチガチに緊張していたので、ちょっとでもほぐせないかなと思って「好きな女の子とかいないの?」と話しかけていました。余計にドギマギさせちゃった気もするんですけど(笑)。撮影後に花束を受け取って「花束をもらうの、初めてです」と話しているのを見たときには、彼の初めての作品になるんだなと思うと、すごく光栄でした。

――現場で先輩として後輩に接する上で意識することはありましたか?

松本 そんなに先輩って感じで接する方でもないのですが、私もこれまで先輩方の姿を見てきているので、お節介になりすぎず、現場では対等に、ちょうどいい感じでいられたらいいなと思っています。私もすごく緊張しちゃうこともあるんですけど、ちょっとでも現場にいる方と仲良くなれただけでも落ち着けることがあるので、余計な緊張が少しでもなくなれば一番いいのかなと思っていました。

――松本さんにも、現場でお互いに対等でいたいと思わせてくれた先輩がいらっしゃったのでしょうか?

松本 そうですね。朝ドラ「ひよっこ」で共演した和久井映見さんは、年下の私たちにも敬語で話してくださいましたし、他にも素敵だなと感じる姿をたくさん見てきました。だからこそ、そういう人になれたらいいなという思いはあります。

――これまでの半生を振り返って、今の自分を作ったきっかけになった経験はありますか?

松本 大きなきっかけだなと思うのは、「ひよっこ」です。あのとき感じられたことはきっとどこかに残っているんだろうなと、不安になったときに思い出せる経験になりました。自分でいろいろアイデアを出して、それがよかったと言ってもらえたのも「ひよっこ」が初めてで。役の上でも心の底から嬉しい気持ちになれたり、脚本に書かれている以上のものが自分の中から出てきたのは、なかなか体験できることじゃなかったなと思います。

――では、松本さんの半生で人に語りたくなるようなすごいエピソードをひとつ上げるとしたら何でしょうか?

松本 高校生のときにUSJに行って、その日にSMAPさんがサプライズでいらっしゃっていたのを見たことです。何で今これを思い出したんだろう(笑)。でもあれはすごかったです。普通に友だちとユニバに遊びに行って、そしたらいろんな人たちが急に走り始めて。よくわかんないけど、みんなが走っているからつられて走ったら、建物の屋上から木村拓哉さんが出てきたんです。そういう運のよさはありますね(笑)。

演劇部で自分だけ先走っていた高校時代

――松本さんは学生時代に今の事務所のオーディションを受けていますが、何が一歩踏み出すきっかけになったのでしょうか?

松本 多分、そのときの私にはそれ以外の道というか、選択肢がなかったんです。大学に行くのも違うなと思っていたし。本格的に女優として活動したいとまで考えていたわけではなくて、落ちたら落ちたで今と変わらないし、それなら動いてみようという感じでした。今思えばそれがあったから今の私があるんですけど、当時はそもそも一歩踏み出すという感覚は特になかったです。

――この仕事を続けていこうと思ったのはいつ頃ですか?

松本 「女優としてやっていこう」と思ったというより、「ここで頑張らなきゃ絶対にダメだな」と思ったのは、「ひよっこ」のときです。すごくたくさんの人に見てもらえる作品ですし、台本を読んでいてもすごく好きだなと思える役だったので、「やらなきゃ後悔する」「自分を追い込まないといけない機会をいただいたんだ」という感覚を持ちました。ただそのときだけではなくて、すべての現場でそう思っているような気もします。

――学生時代で印象的に残っている出来事を教えてください。

松本 高校のときは演劇部に入っていて、地区大会があると、部内でいろいろぶつかったりもしました。自分だけちょっと先走っているというか、盛り上がっちゃったりして、変に周りを傷つけちゃったこともあって。そのときは意見をはっきり言っていたけど、今思えばおせっかいだったのかなとも思います。

――松本さんが学生時代に好きだったものや夢中になっていたものはありますか?

松本 ドラマは見ていたほうだと思います。中でも『花より男子』が大好きで、今でもたまに見ています。あとは『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』とか、三浦春馬さんが出演していた『ラストシンデレラ』とか。特に意識してなかったですけど、みんなのあいだで流行っているものを見ていた感じです。学校でみんなと「あそこどうだった?」とかはしゃいでいたのを覚えています。

――今のドラマの好みはその当時から変化はありますか?

松本 変わらないかもしれないです。分かりやすく面白いものが好きで、『花ざかりの君たちへ』『花より男子』は今見ても面白いです。映画でも繰り返し観たくなるものは、前向きになれるハッピーな作品が多いです。『ヘアスプレー』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、一番好きなのは『耳をすませば』。いいものってきっと、ずっと面白いんだろうなと思います。

――最後に、ティーン読者にエールをお願いします!

松本 まだ人に何か言えるほどの年齢でもないですし、私も先のことを探っている途中です。でも最近、いろんな人と話す機会があったときに「若いうちに何をしたらいいですかね」みたいなことを聞いたら、「いっぱい苦しんだほうがいいよ」という言葉をくださった人生の大先輩がいらっしゃいました。その方は「それが自分の身になるし、いっぱい苦しんだ経験をしたほうが成熟して、そういう人のほうが面白みがある」「苦しい思いをするためには、いろんなことにちゃんと向き合っていかないといけない」ともおっしゃっていました。その言葉をもらって、いろんなことに向き合っていくことが大事だと思ったので、苦しいときはちゃんと苦しんでみてください。でもどうしても逃げなきゃいけないときは、逃げていいと思います。

Information

『DIVOC-12』
10月1日(金)公開

監督:藤井道人 上田慎一郎 三島有紀子
   志自岐希生 林田浩川 ふくだみゆき 中元雄 山嵜晋平 齋藤栄美
   廣賢一郎 エバンズ未夜子 加藤拓人
製作・配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© 2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

『ユメミの半生』
出演:松本穂香 小関裕太 石川春翔 カトウシンスケ 水沢朋美 濱津隆之 塚本晋也

監督・脚本・編集:上田慎一郎

とあるミニシアターのロビー。映画の上映開始を待つ中学生のカケルは、壁に貼られた「閉館のお知らせ」を見つめている。と、そこに見知らぬ女性スタッフ・ユメミが現れる。「聞いてるよ。常連に映画監督志望の中学生がいるって」。ユメミはカケルの隣に座り、波乱万丈だという自分の半生を語り始める。その半生の回想は白黒のサイレント映像から始まり、やがてそこに音がつき、色が加わっていき……。

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松本穂香

女優

1997年2月5日生まれ。大阪府出身。2015年、高校在学中に主演短編映画『MY NAME』で女優デビュー。2017年、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」に出演して注目を集める。2018年、ドラマ「この世界の片隅に」(TBS系)で連続ドラマ初主演。2019年、『おいしい家族』で長編映画初主演。主な映画出演作に『わたしは光をにぎっている』(19)、『酔うと化け物になる父がつらい』(20)、『君が世界のはじまり』(20)、『みをつくし料理帖』(20)。2021年11月19日、ヒロインを務める映画『ミュジコフィリア』が公開。2022年春には『桜のような僕の恋人』(Netflix)の全世界配信が控えている。

Photographer:Yuta Kono,Interviewer:Sonoko Tokairin, Stylist:Lee Yasuka, Hair&Make:Izumi Omagari