演劇部で自分だけ先走っていた高校時代
――松本さんは学生時代に今の事務所のオーディションを受けていますが、何が一歩踏み出すきっかけになったのでしょうか?
松本 多分、そのときの私にはそれ以外の道というか、選択肢がなかったんです。大学に行くのも違うなと思っていたし。本格的に女優として活動したいとまで考えていたわけではなくて、落ちたら落ちたで今と変わらないし、それなら動いてみようという感じでした。今思えばそれがあったから今の私があるんですけど、当時はそもそも一歩踏み出すという感覚は特になかったです。
――この仕事を続けていこうと思ったのはいつ頃ですか?
松本 「女優としてやっていこう」と思ったというより、「ここで頑張らなきゃ絶対にダメだな」と思ったのは、「ひよっこ」のときです。すごくたくさんの人に見てもらえる作品ですし、台本を読んでいてもすごく好きだなと思える役だったので、「やらなきゃ後悔する」「自分を追い込まないといけない機会をいただいたんだ」という感覚を持ちました。ただそのときだけではなくて、すべての現場でそう思っているような気もします。
――学生時代で印象的に残っている出来事を教えてください。
松本 高校のときは演劇部に入っていて、地区大会があると、部内でいろいろぶつかったりもしました。自分だけちょっと先走っているというか、盛り上がっちゃったりして、変に周りを傷つけちゃったこともあって。そのときは意見をはっきり言っていたけど、今思えばおせっかいだったのかなとも思います。
――松本さんが学生時代に好きだったものや夢中になっていたものはありますか?
松本 ドラマは見ていたほうだと思います。中でも『花より男子』が大好きで、今でもたまに見ています。あとは『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』とか、三浦春馬さんが出演していた『ラストシンデレラ』とか。特に意識してなかったですけど、みんなのあいだで流行っているものを見ていた感じです。学校でみんなと「あそこどうだった?」とかはしゃいでいたのを覚えています。
――今のドラマの好みはその当時から変化はありますか?
松本 変わらないかもしれないです。分かりやすく面白いものが好きで、『花ざかりの君たちへ』『花より男子』は今見ても面白いです。映画でも繰り返し観たくなるものは、前向きになれるハッピーな作品が多いです。『ヘアスプレー』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、一番好きなのは『耳をすませば』。いいものってきっと、ずっと面白いんだろうなと思います。
――最後に、ティーン読者にエールをお願いします!
松本 まだ人に何か言えるほどの年齢でもないですし、私も先のことを探っている途中です。でも最近、いろんな人と話す機会があったときに「若いうちに何をしたらいいですかね」みたいなことを聞いたら、「いっぱい苦しんだほうがいいよ」という言葉をくださった人生の大先輩がいらっしゃいました。その方は「それが自分の身になるし、いっぱい苦しんだ経験をしたほうが成熟して、そういう人のほうが面白みがある」「苦しい思いをするためには、いろんなことにちゃんと向き合っていかないといけない」ともおっしゃっていました。その言葉をもらって、いろんなことに向き合っていくことが大事だと思ったので、苦しいときはちゃんと苦しんでみてください。でもどうしても逃げなきゃいけないときは、逃げていいと思います。
Information
『DIVOC-12』
10月1日(金)公開
監督:藤井道人 上田慎一郎 三島有紀子
志自岐希生 林田浩川 ふくだみゆき 中元雄 山嵜晋平 齋藤栄美
廣賢一郎 エバンズ未夜子 加藤拓人
製作・配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© 2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.
『ユメミの半生』
出演:松本穂香 小関裕太 石川春翔 カトウシンスケ 水沢朋美 濱津隆之 塚本晋也
監督・脚本・編集:上田慎一郎
とあるミニシアターのロビー。映画の上映開始を待つ中学生のカケルは、壁に貼られた「閉館のお知らせ」を見つめている。と、そこに見知らぬ女性スタッフ・ユメミが現れる。「聞いてるよ。常連に映画監督志望の中学生がいるって」。ユメミはカケルの隣に座り、波乱万丈だという自分の半生を語り始める。その半生の回想は白黒のサイレント映像から始まり、やがてそこに音がつき、色が加わっていき……。

松本穂香
女優
1997年2月5日生まれ。大阪府出身。2015年、高校在学中に主演短編映画『MY NAME』で女優デビュー。2017年、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」に出演して注目を集める。2018年、ドラマ「この世界の片隅に」(TBS系)で連続ドラマ初主演。2019年、『おいしい家族』で長編映画初主演。主な映画出演作に『わたしは光をにぎっている』(19)、『酔うと化け物になる父がつらい』(20)、『君が世界のはじまり』(20)、『みをつくし料理帖』(20)。2021年11月19日、ヒロインを務める映画『ミュジコフィリア』が公開。2022年春には『桜のような僕の恋人』(Netflix)の全世界配信が控えている。
Photographer:Yuta Kono,Interviewer:Sonoko Tokairin, Stylist:Lee Yasuka, Hair&Make:Izumi Omagari