松本穂香は芯のある女優さん

――『DIVOC-12』はソニー・ピクチャーズによるクリエイター支援プロジェクトによって作られた作品ですが、お話を聞いたときにどういう印象を受けましたか?

小関 コロナに立ち向かいながら、若い才能にチャンスを与えて支援するという試みが素敵だなと思いましたし、この作品のテーマ、届けたいメッセージに共感しました。僕自身にとっても、上田(慎一郎)監督とご一緒できるのが大きくて。『カメ止め(カメラを止めるな!)』(17)を拝見したときに、単館映画から始まって口コミで広がっていくという世間の広がり方、物語の構成など、いろいろなものを含めて現場での結束力がすごいんだろうなと感じたんです。どんな過程で『カメ止め』を作ったのだろうか、どういう風にもの作りをする監督なんだろうかという興味があったので、現場でご一緒できるのが嬉しかったです。

――小関さんが出演した『ユメミの半生』は、日本初となるバーチャルプロダクション技術を使って撮影したそうですね。

小関 今回は最新技術を使ったことによって、現場を移動せずに同じ場所で、様々なシチュエーションを完結させるという面白さがありました。新しい技術を使った最初の作品ということで、現場で調整しながらの撮影だったので、時間はかかった方だと思いますが、これが標準になったら、短い時間でぎゅっと集中して撮れるなと感じました。

――実際にお芝居をする場所の背景にも、本編で使われている映像が投影されているんですか?

小関 そうです。大きな板の中にたくさんLEDが組み込まれていて、ものすごく近づいたらそれが分かるんですけど、引いてみると映像に馴染むんです。ブルーバックなどと違うので、映像をイメージしやすかったです。

――上田監督の演出はいかがでしたか?

小関 僕はもの作りが大好きなので、出演するというよりも、同じ作品に携われるという感覚が大きいんです。なので、台本を読ませていただいた上でアイデアも投げさせてもらいたいと思っていて。もし上田監督が厳しい方で、「いやいや君はそう考えるかもしれないけど」いうスタンスだったら怖いな……と思っていました(笑)。実際はとても素敵な方で、アイデアも聞いてくださるし、聞き入れた上で、さらに大きなアイデアを持ってきてくださるんです。

――柔軟に対応してくださるんですね。

小関 脚本自体も上田監督が書かれているので、僕が最初にアイデアを提案させていただいた際に、脚本のこだわりを教えていただきました。その上で僕が「では、これはどうですか?」と投げた後に、「ちょっと一回かみ砕いてみます」と言ってくださって、また新たなアイデアが現場で発案されるんです。柔軟に一人ひとりの意見に耳を傾けて、チームワークを大切にされる監督でした。

――『ユメミの半生』にはサイレント映画の時代にまで遡って、様々な名画のオマージュが数多く詰め込まれています。台本にはどの程度まで書かれていたのでしょうか?

小関 台本はシンプルに状況とセリフだけが書かれていたのですが、「このシーンは、この名作をオマージュしています」というような参考資料もあって、そこから話し合ってすり合わせていく感じでした。

――小関さんから上田監督にどのような提案をされましたか?

小関 いくつかあるのですが、今パッと思い出したのは、冒頭に出てくる単館映画館のロビーにいる男の子にとって、僕が演じているテツオにはどんな意味合いがあるのかなって深読みして考えてみたんです。テツオは主人公のユメミが男の子に語る登場人物なので、作品の中で対峙することはありません。なので、テツオは男の子にとって、理想の男性像かもしれない。そういったお話を上田監督にさせていただいて、しぐさなどの見せ方を提案させていただきました。

――主人公ユメミを演じた松本穂香さんは、映画『みをつくし料理帖』(20)でも共演されていますが、改めて印象をお聞かせください。

小関 すごく芯のある女優さんだなと感じました。『ユメミの半生』は、いろいろな名作をオマージュしているので、セリフ回しがオーバーになるときもありますし、そもそもシチュエーション自体がおかしい。本番は集中してやっていますが、素に戻った瞬間、ちょっと笑っちゃう自分がいたんです。ところが穂香ちゃんはクスリともしない。それを間近で見て一つモードが切り替わりました。