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その場で感じたリアルな感情通りに演じた

——今泉力哉監督映画作品の出演は『パンとバスと2度目のハツコイ』『mellow』に続き3度目になりますが、今回の『かそけきサンカヨウ』では初主演になります。

志田 以前から今泉力哉監督の作品で主演することが目標でした。まさかこんなに早く叶えていただけるとは思わなくて、すごく嬉しかったです。

——撮影現場はどんな雰囲気だったのでしょうか?

志田 温かい撮影現場はたくさんありますけど、その中でも特に温かいですし、丁寧な現場だなと今泉作品に参加するたびに思います。

——アドリブかと思うぐらい自然なセリフが今泉作品の特徴でもありますが、今回の映画でもそれを強く感じました。

志田 セリフは決まっていますが、たまに今泉監督が相手役の役者さんに耳打ちをするようなこともあります。そうすると、「アドリブで来るのかな?」って身構えてしまいます。今泉監督は、そういう私たちの生の反応を撮りたいのかなと思います。

——言葉に頼らず、表情で見せる場面が多いですよね。

志田 表情のお芝居についてはもっと勉強しなければいけないと思っていたので、自分の表情がどのように撮られているか意識して撮影に臨みました。自分の芝居を見るときは、表情ばかり見てしまいます。この映画をご覧いただく方にも、細かい表情の変化などを大きいスクリーンで見て何か気づいていただけたら嬉しいです。

——脚本を読んだときの感想を教えてください。

志田 台本を読む前に原作を読み、素敵な作品だと思いました。映画の台本では、さらに深く、丁寧に描かれていて、この世界の中で生きられるんだという楽しみと、こんなに素敵な作品の役をいただいたからには、お芝居をもっと頑張ろうと思いました。

——冒頭から昭和っぽいレトロな雰囲気に包まれている映画だなと感じました。

志田 昔のものって魅力的です。普段から昔ながらの喫茶店にも行きます。音楽は自分が生まれる少し前の楽曲を聴くのが好きです。だから撮影中も何となく落ち着くというか、すごく素敵だなって思いました。

——ストーリーが進むにつれて、人間関係がどんどん変化していきますが、演じる上で難しかったことはありますか?

志田 一緒に暮らしている父が再婚して、その再婚相手の子どもと初めて会って、少しずつ家族になっていくという、実生活で経験したことのないシーンが多かったです。また同級生の陸くんとの関係性もどんどん変化していきます。その部分を表現するのは難しかったんですけど、あまり考えこまず、その場で感じたリアルな感情通りに演じました。

——妹となる再婚相手の娘・ひなたとの絡みも、いろいろな感情が伝わってきてリアルでした。ひなた役を演じた鈴木咲さんとの共演はいかがでしたか?

志田 咲ちゃんは今6歳なのですが、その年齢の子と接する機会がなかったので、映画そのままに戸惑う面もありました。でも休憩時間に咲ちゃんが「お姉ちゃん、お姉ちゃん」って慕ってくれたので、徐々に距離感が縮んでいった気がします。

——距離が縮まっていくというのは、ストーリーの展開と共通するものがありますね。

志田 そうですね、どんどん近づいていきました。

——映画の冒頭は中学3年生という設定ですが、実際の年齢よりも下の学生を演じるのはいかがでしたか?

志田 そこまで抵抗はありませんでしたが、さすがに中学生役は少し不安でした(笑)。でも、同級生役のみんなと一緒にいたら、「自然とこういう感じだよな」と、自分の中学時代を思い出しました。みんなで話したりくだらないことで笑ったりして、なんとなく時間が流れていく、みたいなのは、すごくリアルで懐かしくなりました。

家族とは友達と同じような感覚で話せる

——志田さん演じる陽とご自身で、共通する部分はありますか?

志田 性格は少し違うところがあると思います。陽は口数が少ないながらも、人の話をちゃんと聞いてコミュニケーションを取ります。私は陽と違って口数の多いほうなんですが、人の話を聞くのは陽と同様に好きなので、そういうところは似ていると思います。

——陽は、自分の感情をあまり出しませんよね。

志田 そう言われると、感情的にならないところも似ているかもしれません。普段から怒ったりすることはないので、友達に「何したら怒るの?」って言われたりするくらいです(笑)。

——陽は、家族にもなかなか自分の気持ちを出さないところがありますが、志田さんはいかがですか?

志田 家族にはたまに怒ったりすることもあります。家族は絶対に嫌われない安心感みたいなものがあるので、そこに少し甘えてしまう部分があって、思ったことをなんでも言ってしまいます。友達と同じような感覚で話せるというか。高校時代も、学校から帰ってきたら今日一日何があったのかを話していました。

——高校生で、家族にそこまで話すのは珍しいかもしれませんね。

志田 周りの子たちにしてみれば家族に言いづらいような、たとえば恋愛のことも、両親にも兄にも昔から全部話しています。今でも仕事から帰ってきたら、「こんなことして、次にこういう仕事が決まって」みたいに、全部話します。

——理想的な家族ですね。後半、井浦新さん演じる父親との長回しのシーンは本作のハイライトですが、胸に響きました。

志田 あのシーンは、台本を初めて読んだときにも涙が止まらなくなってしまって。だから、あんまり読み込まないで撮影に臨んだほうがいいなと。読んで慣れてしまったら、自分の感情が出せないんじゃないかなと思いました。なので、そのシーンのページは開かないようにして、前日にセリフだけ覚えて、いざ現場に行ったら長回しだったんです。

——事前に長回しとは伝えられていなかったんですね。

志田 「セリフを間違えたら終わってしまう」と思いましたが、何とか乗り越えられてよかったですし、長回しだったからこそリアルな感情を出せた気がしました。新さんとのやりとりは、陽にとっても、お父さんにとっても、お互いにとってすごく大切だったんじゃないかなと思います。

——陸役の鈴鹿央士さんとは、ドラマ『ドラゴン桜』でも共演していますが、印象はいかがでしたか?

志田 『ドラゴン桜』でご一緒したのは今作の後だったので、央士君とは『かそけきサンカヨウ』が初共演でした。ただ、央士君が出演した映画『蜜蜂と遠雷』が話題になっていたので、知っていました。実際にお会いすると、思っていた以上に柔らかい方だなという印象でした。先に原作と脚本を読んで央士君に会って、この方は陸君そのものだなって。まさにイメージ通りの陸君だったので、安心感があって、頼ってしまった部分もあったと思います。

幸せな学生生活を送っていたので仕事との両立もできた

——芸能の仕事を始めたのはいくつのときですか?

志田 小学6年生で今の事務所に入りました。

——学校と仕事のバランスは上手く取れていましたか?

志田 芸能とは関係のない普通の中学・高校に通っていたので、学校は完全にプライベートみたいな感じで、お仕事と分けることができていました。だから普通の学校を選んでよかったと思います。

——同級生の反応はいかがでしたか?

志田 本当にみんな温かくて。私が芸能のお仕事をしていることを気にしないでいてくれていました。普通の幸せな学生生活を送っていたので、両立が大変ということはなく、どちらも楽しんでいました。ただ、高校の卒業間近の頃は、ドラマ「チア☆ダン」の練習が始まっていたので、あまり学校に登校できませんでした。でも先生たちが「頑張っているから卒業させたい」と協力してくださって、なんとか卒業させてもらえました。私も、絶対高校はちゃんと卒業したいっていう気持ちがあったので、嬉しかったです。

——女優一本でやっていこうと決めたのはいつ頃ですか?

志田 高校入学当時から大学に行く気持ちはなかったので、このままお仕事を続けて行くんだろうなぁと思っていました。ただ、高校を卒業して、周りの子が大学に行ったり就職していたので、初めて私もこのお仕事で食べていけるようにならなくちゃいけないんだ、と強く思いました。

——他の仕事に興味はなかったんですか?

志田 やりたいなと思うお仕事はありましたが、やはりこのお仕事が自分に合っていると思うし、やっていて楽しいです。今まであまり習い事も長続きしませんでした。好奇心旺盛な性格なので、「やってみたい!」って始めてはみますが、すぐに飽きてしまって、「もういいや」ってなってしまうことが多かったです(笑)。でも、このお仕事だけは飽きずにずっと続けられているので、私にとって天職です。

——最後に進路に悩む高校生にメッセージをお願いします。

志田 自分のやりたいことをやるのが一番大切だなと思います。両親に反対されたりする方もきっといると思います。でも自分の気持ちを優先して、やりたいことにどんどんチャレンジしてほしいです。これから私も、もっと自分のやりたいことに積極的にチャレンジしたいなと思っていますので、一緒に頑張っていきましょう!

Information

『かそけきサンカヨウ』
絶賛公開中!

志田彩良 / 井浦 新
鈴鹿央士 中井友望 鎌田らい樹 遠藤雄斗 石川 恋 鈴木 咲 古屋隆太 芹澤興人 海沼未羽
鷺坂陽菜 和宥 辻 凪子 佐藤凛月 菊池亜希子 / 梅沢昌代 西田尚美 / 石田ひかり

監督:今泉力哉
主題歌:崎山蒼志「幽けき」(Sony Music Labels)
原作:窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』(角川文庫刊)所収「かそけきサンカヨウ」
脚本:澤井香織 今泉力哉 音楽:ゲイリー芦屋
配給:イオンエンターテイメント
©2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

高校生の陽(志田彩良)は、幼い頃に母・佐千代(石田ひかり)が家を出て、父・直(井浦新)とふたり暮らしをしていたが、ふたり暮らしは終わりを告げ、父の再婚相手である美子(菊池亜希子)とその連れ子の4歳のひなたと4人家族の新たな暮らしが始まった。そんな新しい暮らしへの戸惑いを、陽と同じ美術部に所属する陸(鈴鹿央士)に打ち明ける。実の母・佐千代への想いを募らせていた陽は、絵描きである佐千代の個展に陸と一緒に行く約束をする。

公式サイト

志田彩良

女優

1999年7月28日生まれ。神奈川県出身。小学6年のときに芸能界入り。2013年から2015年まで『ピチレモン』専属モデルを務める。2014年、短編映画『サルビア』で俳優デビュー。2017年、『ひかりのたび』で長編映画初主演。主なドラマ出演に「チア☆ダン」(TBS)、「ゆるキャン△」(テレビ東京)、「ドラゴン桜」第2シリーズ(TBS)、主な映画出演に『パンとバスと2度目のハツコイ』(18)、『きらきら眼鏡』(18)、『mellow』(20)、『鬼ガール!!』(20)など。

Photographer:Yuta Kono,Interviewer:Takahiro Iguchi, Stylist:yamamototakashi(style3), Hair&Make:脇坂美穂(OTIE)