家族とは友達と同じような感覚で話せる

——志田さん演じる陽とご自身で、共通する部分はありますか?

志田 性格は少し違うところがあると思います。陽は口数が少ないながらも、人の話をちゃんと聞いてコミュニケーションを取ります。私は陽と違って口数の多いほうなんですが、人の話を聞くのは陽と同様に好きなので、そういうところは似ていると思います。

——陽は、自分の感情をあまり出しませんよね。

志田 そう言われると、感情的にならないところも似ているかもしれません。普段から怒ったりすることはないので、友達に「何したら怒るの?」って言われたりするくらいです(笑)。

——陽は、家族にもなかなか自分の気持ちを出さないところがありますが、志田さんはいかがですか?

志田 家族にはたまに怒ったりすることもあります。家族は絶対に嫌われない安心感みたいなものがあるので、そこに少し甘えてしまう部分があって、思ったことをなんでも言ってしまいます。友達と同じような感覚で話せるというか。高校時代も、学校から帰ってきたら今日一日何があったのかを話していました。

——高校生で、家族にそこまで話すのは珍しいかもしれませんね。

志田 周りの子たちにしてみれば家族に言いづらいような、たとえば恋愛のことも、両親にも兄にも昔から全部話しています。今でも仕事から帰ってきたら、「こんなことして、次にこういう仕事が決まって」みたいに、全部話します。

——理想的な家族ですね。後半、井浦新さん演じる父親との長回しのシーンは本作のハイライトですが、胸に響きました。

志田 あのシーンは、台本を初めて読んだときにも涙が止まらなくなってしまって。だから、あんまり読み込まないで撮影に臨んだほうがいいなと。読んで慣れてしまったら、自分の感情が出せないんじゃないかなと思いました。なので、そのシーンのページは開かないようにして、前日にセリフだけ覚えて、いざ現場に行ったら長回しだったんです。

——事前に長回しとは伝えられていなかったんですね。

志田 「セリフを間違えたら終わってしまう」と思いましたが、何とか乗り越えられてよかったですし、長回しだったからこそリアルな感情を出せた気がしました。新さんとのやりとりは、陽にとっても、お父さんにとっても、お互いにとってすごく大切だったんじゃないかなと思います。

——陸役の鈴鹿央士さんとは、ドラマ『ドラゴン桜』でも共演していますが、印象はいかがでしたか?

志田 『ドラゴン桜』でご一緒したのは今作の後だったので、央士君とは『かそけきサンカヨウ』が初共演でした。ただ、央士君が出演した映画『蜜蜂と遠雷』が話題になっていたので、知っていました。実際にお会いすると、思っていた以上に柔らかい方だなという印象でした。先に原作と脚本を読んで央士君に会って、この方は陸君そのものだなって。まさにイメージ通りの陸君だったので、安心感があって、頼ってしまった部分もあったと思います。