悩んだ時間が経験として役立つ日が来る

――声優さんを目指す読者に、アドバイスをいただけますか?

畠中 僕もまだ皆さんにそんなことを話せるような立場じゃないんですが……高校生活は謳歌しておいた方がいいと個人的には思います。芝居のときの引き出しとして、「あ!こういう感覚って自分も経験したことあるな」ってどんな作品でも、どんな世界観でもあると思うんです。例えば、『宇宙戦艦ヤマト2205』の土門竜介と僕は立場も生きている環境も全然違いますけど、彼の揺れる気持ちは理解出来たりします。そういう経験があるかないかの引き出しは多分10代の頃とか、学生時代に構成されていくのかな、と。一番多感で色々なことを感じるし、先生に色々言われたり、親にチクチク言われながら悩んだりする時間って、そのときは辛くても、経験として役立つ日が来ると思うんです。

――その時代に触れた作品とか読んだ本とか、ずっと覚えていたり、大切にしていますものね。

畠中 そう思います。本や映画を観て面白くないな、分かんないなっていう気持ちも、そのままとっておくと、何年か先にその作品に再会したときに、ものさしになってくれるというか。それでより自分を知れたりもするんですよね。僕も、小津安二郎監督の『東京物語』(53)を大学生のときに観て、静かすぎて、正直寝ながら見ていた部分があったんです。でも最近になって観直したら、めちゃくちゃ刺さるなって。すごく胸が締めつけられる、良い映画だったんだなって気づけたんです。

――一度観た経験があったからこそ、今になって違う感想を得ることができたのですね。

畠中 本当にそうなんです。あの独特のローアングルも、今観るとその視点が懐かしいというか、「幼少期の視点なのかな?」など、色々考えたりとか。役者の無表情の中にある切ない感じとか、たくさん気づかされました。大学の時に出会っておかないと、もう一回『東京物語』を観ようと思わなかったので、大事な出会いだったんだなと思います。学生のときに無駄なことは何一つないと思うので、できるだけ多くの経験をすることが、夢につながる大切なことなのかなと感じています。

Information

『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-』
2021年10月8日(金)劇場上映

◆スタッフ
原作:西﨑義展/製作総指揮・著作総監修:西﨑彰司/監督:安田賢司/シリーズ構成・脚本:福井晴敏/脚本:岡 秀樹
キャラクターデザイン:結城信輝/メカニカルデザイン:玉盛順一朗・石津泰志・明貴美加/音楽:宮川彬良

◆キャスト
古代 進:小野大輔/森 雪:桑島法子/真田志郎:大塚芳忠/アベルト・デスラー:山寺宏一/スターシャ:井上喜久子/デーダー:天田益男
土門竜介:畠中 祐/徳川太助: 岡本信彦/京塚みや子: 村中 知/坂東平次:羽多野 渉/坂本 茂:伊東健人

畠中佑

声優

声優・アーティスト。1994年生まれ。2006年に映画『ナルニア国物語』の一般公募オーデイションに合格し、 エドマンド・ペベンシー役の吹替えで声優デビュー。その後、多数の吹き替え・アニメ作品に出演中。 キャラクターソング等での歌唱力の高さに定評があり、 2017年7月に1stシングル『STAND UP』で、ランティスよりアーティストデビュー。 2019年3月27日には1stアルバム『FIGHTER』をリリースし同年7月27日には豊洲PITにて初のワンマンライブとなる「TASUKU HATANAKA 1st LIVE -FIGHTER-」を開催。 その後もTVアニメ『憂国のモリアーティ』や、自身もウルトラマンゼットの声を担当した特撮ドラマ『ウルトラマンZ』の主題歌を担当するなど、声優としてもアーティストとしても活躍中。

Photographer:Toshimasa Takeda,Interviewer:Kozue Nakamura