監督が現場で生まれるものを大事にしてくださった
――首藤凜監督の演出はいかがでしたか?
山田 こんなに年の近い監督(※首藤凜監督は1995年生まれ)は初めてだったので、たくさんお話しをさせてもらいました。首藤監督は高校生の頃に原作の『ひらいて』を読まれていて、ずっと映画にしたかったと伺っていたので、「愛が分からないんです」ということも全て伝えていました。
――山田さんの「分からない」に対して、首藤監督はどう仰っていたんですか?
山田 この映画が完成した後、「分からないまま演じてほしかった」という首藤監督のインタビュー記事を読んだんですけど、現場では「分からなくていいんだよ」とは一切仰らず、一緒に考えるようなスタンスで接して下さいました。首藤監督と共に、少しずつ愛というキャラクターを作っていきました。首藤監督の中には、「愛をこうしたい」というものがあったと思うんですけど、現場で生まれるものを大事にしてくださいました。
――共演の芋生悠さん、作間龍斗さん、それぞれの印象を聞かせてください。
山田 芋生ちゃんは5年ぐらい前から知っていて、お仕事でご一緒するのは3回目になります。本当に優しくて、「姉さん!」って言いたくなるようなタイプです。芋生ちゃんが先に帰るときは「残りの撮影頑張ってね。美雪」という役名を書いたメモをテーブルの上に残してくれたんです。「美雪だったらこうするだろう」ということを思ってのメモだと思うんですけど、可愛くて素敵な人です。
――作間龍斗さんとの共演は初めてですよね。
山田 作間君は、現場ではずっとたとえでした。本人は「すごく緊張していた」と言ってたんですけど、物怖じしないところや雰囲気もたとえっぽいなって。私たちは3人ともまったりしているというか、マイペースで落ち着いたテンションの人たちだったので、世間話をしているときも、すごくゆったりしていて居心地が良かったです。とてもいい空気感でしたね。
――映画では緊迫したシーンも多いですが、現場は和やかだったんですね。
山田 シーンによってはピシッとした空気でしたけど、映画の内容から想像するよりは和やかだったと思います。首藤監督もそうですけど、ゆったり喋る人たちが多かったんです。
――懐かしさを感じさせるロケーションも、和やかな雰囲気に一役買ったのではないでしょうか?
山田 足利市に1カ月ぐらい泊まり込みで撮影したんですが、地方ならではの空気感は、愛を演じる上でもいい場所だなと思いました。学校はよく撮影で使う場所だったんですけど、ここまでアクティブに動き回ったのは初めてです。
――『ひらいて』の撮影当時は山田さん自身、ほぼ愛と変わらない年齢だったんですよね。
山田 19歳でした。
――年齢が近いと、高校生役も違和感なく演じられるものですか?
山田 私は高校生の時から仕事をしていたので、普通の高校生活を経験したかと言われればそうじゃないんです。現役高校生の頃から、高校生を意識して演じていた部分があります。『ひらいて』の撮影では、すでに高校を卒業していたので、「高校時代にやりたかったこと」を思い出しながら演じていました。これからも見た目がいけるうちは「高校生!」って気持ちで演じたいです。
――改めて現役高校生に向けて、『ひらいて』の見どころを教えてください。
山田 愛もそうですけど、多くの高校生って「学校がすべて」みたいな限られたコミュニティーに生きていると思うんです。この社会の中で、自分はどうしていたいか、どうやっていこうかというヒントを、『ひらいて』の登場人物の誰かしらから見つけてもらえると思いますし、ふわっとでも考えてもらえるきっかけになるはずです。