初めての撮影現場で役者としての自覚を持てた

――映画『愛のまなざしを』は藤原さんにとって初の映画出演作です。

藤原 2年前の秋に撮影した作品なんですが、この作品が初めての芝居でした。何が何だか分からない中での撮影だったんですが、先日完成版を拝見させていただき、2年経った今、この作品の本当の意味が初めて分かった気がします。

――オーディション自体も本作が初めてだったそうですね。

藤原 自分でも「根拠のない自信」って言ってるんですけど、やったらできるっていう自信に満ち溢れてるんですよね。「できないかも」「失敗したらどうしよう」って気にすると緊張すると思うんですが、「やってやるぞ!」という気持ちでワクワクしながらオーディションを受けていました。

――もともと演技に興味はあったのでしょうか?

藤原 洋画が好きでよく観ていましたが、演じる側になるっていうのはあんまり考えていなかったです。事務所に入れたことがきっかけになって、芝居の楽しさを知りました。

――『愛のまなざしを』は、『UNloved』(01)、『接吻』(08)に続く、万田邦敏監督と脚本の万田珠実さんのタッグの3作目になります。前作をご覧になっていかがでしょうか?

藤原 前作はどちらもクランクインする前に拝見しました。作品には万田監督の雰囲気というか色がついていたので、今回もそんな色になるんだろうなと予想をしていました。台本を読ませていただいたときに、作品の匂いを壊さないよう、その世界に僕も入れるように考えました。

――藤原さん演じる滝沢祐樹は、妻に先立たれて新しい恋人と家庭を持とうとしている父親との関係に悩み、葛藤を抱く少年の役でしたが、どんな役作りをされましたか?

藤原 役作りはしなかったですね。正直いまだに役作りが何なのかよく分かってないんです。それでも今は自分の中で4~6割くらいの手札を作っていって、あとは現場に任せる、というやり方なんですけど、当時は初めての作品ということもあって右も左もわからない状態。自分なりに手札を作ることもできたけれど、それが正解かも分からない。僕の役割を考えた上で、9割くらいを万田監督と共演者の方に頼って、ほぼ現場に身を委ねる形でした。

――万田監督の演出はいかがでしたか?

藤原 「こうしてほしいんだけど、どう思う?」とディスカッションを大事にされるタイプで、僕にも意見を求めてくださいました。「普通の人間だったら、このときにどうするかな?」という感じの質問を毎回してくださるので、役者としてというより、一人の人間として「こうすると思います」という風に意見を言って進んでいきました。なので、たくさんの学びがありました。あと万田監督はクランクインの前に、「人間って言葉を発するときは動きながら発しているよね。今回の映画でも動きながらセリフを言ってほしい。難しいと思うけど、いろんなことをしながらセリフを言ってもらうように現場では指示をすると思う」と仰っていました。それは僕だけじゃなくて、主演の仲村トオルさんにも仰っていました。

――言われてみれば、一連の動作の中にセリフがあるシーンが多かったです。

藤原 台本に書いてあった訳ではないんですけど、携帯を触りながら立ち上がって、向こうに行って座って、みたいなことが現場で決まっていくんです。万田監督が「このセリフのタイミングで立ち上がってほしいんだけど感情的にできる?」と聞いてくださって、「はい、やれます!」という感じで進んでいきました。

――デビュー作から、ディスカッションを重ねて演じるという現場は貴重な体験ですね。

藤原 初めての現場で、しっかりと役者人生がスタートしたって感じられました。そこから映画を観るときの見方も変わりました。単純に楽しむだけではなくて、この人はこういう風にお芝居をするんだとか、この現場でカメラはどういう動きだったのかなとか、自分がその現場にいることを想像してみたり、役者としての自覚を持てました。

――本作は、いろいろと考えさせる結末でしたが、藤原さんはどのように受け止めましたか?

藤原 万田監督にしか出せない雰囲気でした。終わり方が万田監督らしくて、考えさせられる作品だと思いました。最後のピースはお客さんに任せるというのが万田監督の色だなと思います。

――「愛のまなざしを」は大人の恋愛をシリアスかつ粘着質に描いた作品ですが、高校生に向けて見どころを教えてください。

藤原 僕は本作について「光の見えないトンネル」と表現しているんですが、その中に入る感覚を一度味わっていただきたいです。この先、僕もキラキラ系の映画にも出させていただく機会があるかもしれないですが、そうなっていく役者の一作目であり、初芝居でもあります。僕は絶対に頑張ってビッグになるし、なれるように頑張ります。だからその役者の一作目がこれだったんだという風に楽しんでいただきたいです。上手いか下手かでいったら下手かもしれないですけど、初めてだからこそできる芝居でもあります。この映画の自分を見て、真っ白なキャンバスで、この作品の色だけに染まっているなという印象を受けました。初めての藤原大祐を見るという面でも楽しんでいただけたらなと思います。