CGやVFXでは表現できない映画の神様が降りてきた瞬間

撮影は2018年の2月に東京、北九州、台湾で行われた。

山田は「東京と北九州は極寒でしたね」と回想し、「北九州で、石橋さんの殺陣のシーンをNAOTOさんとモニターで拝見させていただいていたんですけど、石橋さんの白い息さえも美しかったです」と大先輩を称賛する。キラキラした瞳を向けられた石橋は照れ笑いを浮かべるばかり。そこでNAOTOが、「石橋さんは本番になると白い息を出さないように、寒い中、氷を口に含んでいたんですよ」と名優の苦労話を披露した。

幽霊でもあるヤクザを演じた石橋は、「私が組長宅に殴り込みに行くシーンで、(北九州の)小倉のでっかいお屋敷を借りて撮ったんですが、そこに、ちょうどそのシーンの撮影に合わせたかのように雪が降ってきたんです。CGだとかVFXじゃ表現できないような味わい深いシーンが撮れました。私は、映画の神様が降りてきた瞬間だと信じています」と話す。NAOTOと山田がうなずいて同意を示すと、SABU監督も「本当に何を着ても寒かったです。石橋さんはしかも入れ墨の入った裸でしたからね」とベテランの仕事を讃えた。

ここにいる俳優陣の第一印象を聞かれたSABU監督は、EXILE NAOTOについて「『ポストマン・ブルース』(SABU監督の97年作品)が大好きですと言ってくれて、すごくいい奴って思いました」と満面の笑み。

山田から感じたのは、「霊能力を持っていそう」という雪子役とダブるもの。

そして、「石橋さんはね、高校時代に(石橋がボーカルを務める)ARBの大ファンだったので、友達に自慢できるなと思いました」と括った。

EXILE NAOTOは先のSABU監督の発言を受けて「本当に『ポストマン・ブルース』大好きです」と強調し、「映画は観る側としてすごく好きで、こうして役者活動をさせてもらっている中で、いつか主演ができればと思っていたんですけれども、それがまさか僕がずっと若い頃から観ていたSABU監督の作品で初めての主演だなんて、本当に夢のようで……。若い頃の自分に自慢したいようなありがたいチャンスだったので、緊張感はあったんですけど、夢が叶った瞬間を毎日実感できた撮影期間でした」と振り返る。

霊能力がありそうと監督に言われた山田は、幽霊が見えるエスパーの役を演じるにあたって、「実体験しがたい役柄だったので、最初は霊が見えたらどんな感じなんだろうとか考えていたんですけど、特殊能力以前に、雪子って普通に皆さんと変わらない感情を持っている女の子だなと思ったので、まずそこを忘れないように意識して演じていました」と役作りを明かす。

ARBの大ファンと言われて顔をほころばせた石橋が、「私はこの作品を、SABU監督が日本の昔のヤクザを扱った任侠映画に対するオマージュだととらえてます」と言うと、SABU監督もニヤリとうなずく。意図的に古き良き昭和の任侠映画のテイストを盛り込んだようだ。