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監督が神尾楓珠と山田杏奈を起用した理由とは

一般公開に先がけ、映画『彼女が好きなものは』の完成披露試写会が11月2日に行われた。

浅原ナオトの小説『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』が原作で、ゲイであることを隠しながら生活する高校生・安藤純(神尾楓珠)と、BL好きを秘密にしている同級生・三浦紗枝(山田杏奈)の関係が描かれる。

ある日、純は書店で同級生の紗枝が、男性同⼠の恋愛をテーマとした、いわゆるBLマンガを購⼊している現場に遭遇。紗枝は「誰にも言わないでほしい」と純に口止めを求めるが、彼女は⽬の前にいる純がゲイであることを知らなかった。純には妻子ある同性の恋人・誠がいるが、書店での遭遇をきっかけに、純と紗枝が急接近する──という物語だ。

人気の若手俳優2人を主演に据えて演出したのは、『世界でいちばん長い写真』(18年)、『九月の恋と出会うまで』(19年)などを手掛けた草野翔吾。

上映前に舞台挨拶が行われ、神尾楓珠と山田杏奈、草野翔吾監督が登壇した。

まずは「嬉しさと緊張がすごい勢いで混じりあっている感じです」と草野監督が挨拶。プロデューサーからオファーを受けて、監督を引き受けるまでの経緯について、「原作は今まで生きてきた中で身近にあった話のはずなのに、自分には見えてなかったものや、言いづらかった本音みたいなものが赤裸々な言葉になっている小説。久しぶりに小説を読んで泣きました。ただ、これを映画にしたいという気持ちがあった反面、自分に背負えるのだろうかと悩みまして、一度プロデューサーとお会いして話をして決めようと思いました。そこで、プロデューサーの真剣な思いがわかったので、一緒にやればいい映画が作れるなと思って監督をすることになりました」と説明。

ゲイの純を演じた神尾は「実際に経験のないことなので最初は戸惑いがありました。だけど、悩みを隠して生きるとか、誰にも言えないことがあるとかは誰もが持っている感情だと思って、ゲイの役に向き合いました」と役ヘのアプローチを語る。

紗枝を演じた山田は、「紗枝は本当に真っ直ぐな子です。BLを読んでいて、身近で好きになった人がゲイだったということで、紗枝がどう受け止めていくのかをこれから皆さんご覧になるんですけど、私は紗枝がすごく好きです。台本を読んだときに、紗枝の思いを私が表現できるんだって最初に思って、それが嬉しかったです」と語った。

神尾と山田の共演は今回が3回目だ。神尾がまだ中学生だった山田に初めて会ったとき、「僕はまだ(俳優業を)始めたばっかりで、何もわからない状態で一緒にお芝居させてもらって、『めちゃくちゃうまい人がいる。こんな中学生いるんだ!?』と衝撃を受けたんです。僕は足を引っ張ってばかりだったんですよ。今回が3作品目なんですけど、どんどん洗練されていってるなと感じました。二十歳にして自分の芯というものがあるのだなってびっくりしました」と山田を絶賛。

「いえいえ」としきりに照れていた山田が「楓珠君は年上ですけど、私がフランクに接しても許してくださるし、スンとしているように見えるけど、けっこう面白い部分がある方です。今回は、楓珠君が純だったからこそ私は紗枝でいられたなという気持ちがすごくあって、素晴らしい時間だったなと今でも思います」と返すと、神尾は「ありがとうございます」とニッコリ。

そんな2人を起用した草野監督は、「純に関しては、脚本を推敲しつつ撮影に向けてキャスティングしていく中で、早い段階で神尾楓珠がピッタリだなと思ったんです。陰があるけど透明感もあるというイメージで」と話し、山田に関しては「原作の紗枝に、さらにしなやかで強い女性という僕が思う要素を足して、どんな人が役に合うんだろうと考え始めました。そんなとき、プロデューサーから『映画祭で山田杏奈さんにお会いして話したんだけど、彼女こそが紗枝だったよ』と聞いて、ぜひお会いしたいですと言って会ったら、もう現れた瞬間から紗枝だった」と振り返る。

山田が「プロデューサーさんと映画祭でお会いしてご挨拶させてもらって、どこが紗枝だったのかはわからないですけど、嬉しいです」と感想を話すと、神尾は「純を演じながら、(山田は)いるだけで元気をくれる存在だったので、すごくありがたいなと思ってましたね」と讃えた。

神尾と山田が「周りには言っていないけれど実は好きなもの」を告白

ここで本作にちなみ、「周りには言っていないけれど実は好きなもの」を、神尾と山田が観客に告白。2人が事前に書いていたフリップを手にする。

神尾は「僕はですね、実はですよ、こう見えて意外に」と、もったいぶってから「『恋バナ』が好きなんですよ」とフリップを開示すると、客席からは黄色い歓声がちらほら。「“ややウケ”ですね」と苦笑しつつ、「僕、高校生のときは恋バナ大嫌いだったんですよ。何でみんなが集まって恋愛のことを言うの?って。でも大人になって、めちゃくちゃ楽しいじゃんって思った」と明かすと、登壇者も観客も「へえ」と意外そうな様子。「人の恋バナを聞くのがすごい楽しい。それだけで幸せになれます。『恋愛できないんだよ』という友達がいて、そのときも変にアドバイスとかしちゃいましたからね」と、さらにハイテンション。山田が語った通りの、神尾の「面白い部分」が垣間見えた瞬間だった。

続いて山田は「実は私が好きなものは『知育菓子』」と発表。「“ねるねるねるね”とか。あと、昔はハンバーガーなのにイチゴ味とか甘いものばかりだったのが、今はちっちゃいサイズのハンバーガーの味のハンバーガーが作れたり、ピザの味がするピザが作れたりするんです。恥ずかしいから家で、ひとりで楽しんでます(笑)」と語り、「これなら言えるかなと思ったんですよ。実はまだあったんですけど、本当に言えないことは言えないですよね?」と周りの同意を求め、神尾も笑いながら深くうなずいた。

2人の話を聞いていた草野監督は、感想を求められて、「この数十分間で、神尾君のイメージが変わって戸惑っています」と客席の笑いを呼ぶ。そして「知育菓子は素敵な趣味だと思います」とヒロインを立てると、神尾が監督に「おいおい恋バナはスルー?」とツッこみ、会場の和やかなムードは最高潮に。

この作品は、純と紗枝がゲイと腐女子という表面上のラベリングを外し、人間として向き合っていくというのが重要なテーマ。そこで、「周りから見られているイメージと違って実際はこうなんだよというものはあるのか?」と問われる2人。

神尾は「真顔でいると、つまらなそうってよく言われますね。プライベートで感情を爆発させることってあんまりなくて、真顔でいると『帰りたいの?』って聞かれるんです。でも、心の中ではめちゃくちゃ楽しんでいるんです」と本音を語る。

山田は「顔が幼いし高校生の役が多いんですけど、コーヒーをブラックで飲むとよくびっくりされます。ブラックで飲めるんだ?飲めますよぉって(笑)」とお茶目な表情を見せた。

今から『彼女が好きなものは』を鑑賞するお客さんに向けて最後の挨拶。

神尾は「脚本を読んだときも、完成した映画を観たときも思ったんですけど、今まで自分の中で何となく思っていたけど言葉にできてなかったものが、作品の中でちゃんと言語化されています。普通って何だろう?幸せって何だろう?って考えて演じていたので、皆さんにも、何かを考えてもらえるきっかけになったらいいなと思ってます」と真摯に締めくくった。

山田は「純や紗枝の姿を見た皆さんが、自分だったらどうするかなとか、いろんな感情が湧いてくる作品だと思うので、真っ直ぐに向き合えてもらえたら、それ以上に幸せなことはないです。でも、とにかく楽しんでいただけたら嬉しいです」と丁寧にお辞儀した。

草野監督は「いつも作品を作るときは、テーマに向き合って考え過ぎるくらい考えて作っています。この作品もそうですが、爽やかな青春映画だと思うので本当に多くの人に楽しんでもらいたいです。韓国の釜山国際映画祭でひと足先に上映されたんですが、とてもいい反応をいただけたので、日本でも多くの人に観てもらって広がっていけばいいなという願いでいっぱいです。素晴らしいキャストとスタッフと一緒に作り上げた作品なので、どうかご覧ください」とメッセージし、会場は拍手に包まれた。

Information

『彼女が好きなものは』
12月3日(金) TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー

神尾楓珠 山田杏奈
前田旺志郎 三浦獠太 池田朱那
渡辺大知 三浦透子
磯村勇斗 山口紗弥加 / 今井 翼

監督・脚本:草野翔吾
原作:浅原ナオト『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』(角川文庫刊)
配給:バンダイナムコアーツ、アニモプロデュース ©2021「彼女が好きなものは」製作委員会

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Reporter:Takehiko Sawaki