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「玉野の自然が主役」渚が感じた映画の魅力

--渚さんが出演された『第二話 渚のバイセコー』は玉野の自然が本当美しくて、セリフが少ない中での渚さんの表現力が素晴らしかったです。

渚 ありがとうございます。『渚のバイセコー』は本当に玉野の自然が主役ですから。本当に綺麗すぎて最高でした。本当はお芝居は恥ずかしいし、得意じゃないし、やりたくない気持ちもあったんですよ。でも監督が私をイメージして書いてくれたという話も聞いて、「セリフもほとんど無い」っていう話を聞いてやらせてもらいました。

--セリフが無い中で感情を表現するのも難しいと思いました。

渚 本当の俳優さんたちはそんな中でも繊細な表現をされてるんでしょうけど、私は全然。セリフも覚えられないし。だから監督が言ってくれたように、そのまま。こんな映画になって、ありがたいですね。

--監督が渚さんをイメージして書かれたということですが、『渚のバイセコー』というタイトルもお名前からですか?

渚 監督が大島渚さんが好きで、大島渚さんが岡山県玉野市の出身だからだそうです。私もタイトルになるなんてすごいやんって思ったけど、それは違いました(笑)。

--本作では“大人の青春”が描かれていると思うのですが、渚さんの青春、高校時代はどの様に過ごしていましたか?

渚 高校の時は、しし座流星群とか、「何年に1回この流星群がありますよ」みたいな話を聞いたら、みんなで原付乗って山の方へ行って見に行っていました。流れ星がたくさん見られるなんて、絶対これ見なアカンやろって。別に星が好きなわけじゃなくて、自然が好きなんです。テンション上がるんですよ。身近にないから。ちょっと山の方行くと、嬉しくなりますね。

この映画の撮影をした玉野みたいに、自然が綺麗な町に住まれている方って見慣れていると思うんですけど、私はそういう環境じゃなかったから、自然の中に行けると嬉しい。東京とかでもすごく明るい街やけど、新宿でもね、星が見られるんですよ、2個。こんな汚い街でも星が見えんのやって思うと、ちょっと癒されるんです。

勉強が嫌いすぎて選んだ芸人の道 大工でお金を貯めてNSCへ

--渚さんが芸人さんになろうと思ったのはいつですか?

渚 もともとすっごい勉強が嫌いで。高校にも行く予定はなかったんですよ。でも、「高校はさすがに行っとかなあかんぞ」みたいになって。で、試験受けて、普通の高校に合格して。その後はもともと高校も行きたくなかったので、大学にいって勉強なんてしてられへんと思って。じゃあ何がしたいって考えたときに「芸人やな」って思ったから、今芸人やっているっていうだけなんです。こういう番組見てたとか、憧れの芸人がいたとか一切ないんですよね。

芸人になろうと思った時に「NSC(吉本総合芸能学院)」しか思い浮かばんかったから、入学金を貯める為に大工の仕事をしました。事務とか勉強とか、机に向かって何かするとかそういうのが全部好きじゃなくて。学校の教科でいうと図工が好きやったから、それで大工さんいいなって。

--大工さんでお金を貯めて、NSCに入って芸人さんになって。改めて振り返って良かったなと思いますか?

渚 他の仕事をしてないからわからない部分もあるんですが、色々な方と出会えるっていう良さはありますね。毎日知らん人、新しい人と会うっていう良さはあると思います。それは芸人じゃなくてもタレントさんとかもそう。知らない人と出会うのが好きやから、ロケに行って色々な人と話すことが楽しい。仕事って大変なことはありますけど、そうやって人と出会えることはこの仕事の良さですね。

--逆に大変なことはどんなことですか?

渚 「今の時代に合ったことをせなあかん」って思ってしまうことで、面白くない世界にしていっているような気がします。特にテレビに対する世間のルールが多くなってきて、方向性の選択肢も減ってきて、どんどん窮屈になってきてると思います。一部の「テレビおもんない」の意見は、自分たちで作ったルールの結果ちゃうかって。例えば私が昼の時間帯で、年上の方にタメ口使っても「こいつやったらええやろ」とはならなくて、不快に思う人がいる。またその意見を発信し易い世の中になってる。朝早い時間帯の番組に私みたいな眠たそうなだるそうなやつが出ていたら、客観的に見たときに私も嫌な気分になるから、私は朝の番組には出ない、出られない」っていうのをマネージャーさんとかにはいつも言っています。無理をしない。極力自分らしいこのスタイルで芸人をやりたいと思っています。

「今のままでいいですよ」と言ってくれる人との出会いを大切に

--やりたくないことを無理してやらないというのは良いと思います。勇気のいることでもありますよね。

渚 自分に向いてないことをできる人もいると思うんです。それって才能やから、すごいことだと思います。でも私はできない。自分で仕事を削っていく分、仕事が無くなっているわけやから、お金も入らなくなる。「嫌なことはしたくない」って、わがままを言ってるんだから、自分でちゃんとやっていかないと。そのリスクはとっているつもりです。

--好きなことを自分で選ぶ分、責任もとらないといけないということですよね。

渚 それと、「それでもいいですよ」っていう人と出会えているラッキーさはあります。この映画に関してもそうです。「岡山県出身じゃない人をなんで使うねん」っていう人もごく一部にはいると思うんですよ。でも、「それでも渚使おうや」っていう人が、提案し続けてくれたから実現しているので。そこのありがたさはあるし、そういう出会いがもっと出来るようになるために今は準備をしている部分があります。

--芸人さんだけではなくて、いろいろなお仕事に通じるお話ですね。

渚 やっぱり皆さん仕事やから、やりたくなくても、一緒にご飯行きたくなくても、たぶん行ったりとかするでしょうし。私はマジでいかないですよ、行きたくない人とは。芸人さんでも別に行きたない人は別に誘わへんし。そういう性格なんでしょうね。それが好きで行く人ももちろんおられるやろうし。できる人はやった方がいいと思う。私はできないから違うやり方をしてるっていうだけで。別に否定しているわけじゃなくて、できる人はすごいからそのままで。でも、できない人はしんどい思いまでして無理しないでいいんじゃないかなって思ったりしますね。

Information

『たまの映像詩集 渚のバイセコー』
2021年11月12日(金)全国公開
出演 三宅伸((一社)日本競輪選手会岡山支部所属) 渚(尼神インター) ゆりやんレトリィバァ 江西あきよし ネゴシックス ハロー植田 鈴井優 ジミー大西 鈴木もぐら(空気階段) 水川かたまり(空気階段) 園都 監督 蔦哲一朗 脚本 河村匡哉 蔦哲一朗

第一話 美しき競輪
街や競輪がクリーンなイメージを期待されている昨今。時代の狭間に取り残された中年競輪選手・大島(三宅伸)の物語。まだ引退する年齢ではないが、新しい流れに乗ることもできず、毎日をやきもきと過ごしていた。そんな大島に残されていたのは、結局は競輪場とライバルとなる仲間たちだった。

第二話 渚のバイセコー
三十路を過ぎた女性漁師の渚(渚・尼神インター)は、毎日海に出ていた。ある日、浜辺に打ち上げられていた自転車を見つける。渚はその自転車がすごく気に入り、海には出ずに、街中を乗り回して離れようとしない。しかし、そんな渚をよく思わない父(ジミー大西)が、渚の自転車を捨ててしまうのだった。ラストにファンタジーな展開が待ち受ける、童話のようなお話。

第三話 氷と油
造船所で働いている玉野市育ちの素直子(ゆりやんレトリィバァ)と浩(水川かたまり・空気階段)。ある日、浩が仕事を辞め、オシャレなカキ氷屋で働き始める。理由は東京から移住してきた美人のモモ(園都)だった。浩に片想いしていた素直子は、モモのことが気になって仕方がない。玉野市のことを卑下する素直子と、芸術あふれる瀬戸内の玄関口である玉野市を褒め称えるモモ。次第に素直子と浩の関係に亀裂が生じてくるが、彼らを繋ぎ止めてくれたのは、小さい頃から身近にあった町のシンボル・競輪だった。

(C)2021 たまの映像詩集「渚のバイセコー」

公式サイト

渚(尼神インター)

芸人

1984年08月06日、兵庫県尼崎出身。2007年 NSC大阪校 30期生。趣味、酒飲みながら海外ドラマ観賞。特技、大工あるある。「第32回ABCお笑い新人グランプリ」新人賞(2011) 「第46回上方漫才大賞」新人賞候補(2011年)。

Photographer:Yuta Kono,Interviewer:Kozue Nakamura