ジャズの本場ニューヨークで現地習得
――早くから音楽、ファッションと活動をする中で、学業との両立はどうされていましたか?
甲田 両立したかったのですが、勉強が得意じゃなかったので常に音楽を優先していました。ただ、英語は大好きで、洋楽も好きだったし、海外への憧れもあって、どんどんハマっていきました。ジャンポール・ゴルチェなどにインタビューするファッションの仕事もあって、海外の人と交流する機会も多かったので、英語を話すのも抵抗はありませんでした。ジャズピアニストとしてニューヨークに行きたかったので、英語ができないと話にならないなと思っていたんです。夢に繋がる英語の勉強だけは頑張りました(笑)。
現地ではおすすめのジャズスポットを調べて、2人でジャズクラブに行って、現地習得みたいな感じで勉強をしました。
――ジャンポール・ゴルチェみたいな大御所をインタビューするときにプレッシャーはありましたか?
甲田 人と話すのが大好きなので躊躇はなかったです。当時の私は若過ぎたので、どうしていいか分からない部分も多かったんですけど、周りも年齢のギャップを面白がって呼んでくれているので、楽しむしかないなという気持ちでやっていました。
――高校は通信制を選んだそうですね。
甲田 ギリギリまで悩んだんですけど、仕事もしていましたし、留学したい気持ちもあったので、通信制を選びました。ただ仕事が忙しくて長期の留学は難しかったので、カナダに一人で二ヶ月語学学校に通ったり、お母さんとNYに行ったり。
――日本のジャズクラブとは違いますか?
甲田 ジャズの本場なので、昔からのストイックさがバチバチに残っているんです。セッションにしても魂の込め方が違って、飛び入り参加した学生も必死に食らいついていくんですよね。できないとステージを降ろされることもあるらしくて、すごい緊張感でした。私も毎回参加していたんですけど、一回うろ覚えの曲があったんです。そのときにスマホでコードを調べようとしたら、「スマホ見るんだ?」みたいな感じに言われて、演奏も心もボロボロになりました(笑)。でもステージに立たないと始まらないので、その後もセッションに参加して。もっと頑張らなきゃ!ってお尻を叩かれた感覚でした。
――高校3年生のときにはバークリー音楽大学にも短期留学をされたとか。
甲田 18歳になった夏にサマープログラムの奨学金をもらって1ヶ月だけ行きました。ニューヨークに比べて雰囲気は穏やかでしたが、授業は厳しかったです。覚えている音楽用語も英語だとまた違うので、そこにも苦労しました。ただ世界中から若いミュージシャンが集まって、一緒に音楽理論を学ぶ経験は貴重でした。どうしても最初は同じ人種で固まりがちなんですけど、セッションした瞬間に「イエー!」って感じで距離が縮まって、すぐに仲良くなれました。
――さらに2019年に出演した映画『台風家族』を皮切りに、俳優の仕事も始めます。もともと演技に興味があったんですか?
甲田 その当時、私は一つのジャンルに絞って仕事をしていなく、音楽以外に興味のあることとして「映像の仕事をしたい」とずっと思っていたら偶然演技のオファーをいただき、新しいチャレンジとして受けさせていただきました。
――それまで演技経験はありましたか?
甲田 なかったです。レッスンを受けたこともありません。オーディションのときに、「感情を入れないで、とりあえず台本の文字を読んでください」と言われたんですけど、演技力がどうこうではなく、おそらく役の雰囲気に自分がハマったんだと思います。実際の撮影でも、私も含めたキャストたちに「全員基本は本人として入ってください」という指示がありました。最初の現場がそういう部分を大切にしてくださる監督とだったので、自然に演じられたのかなと思います。
――今後も演技への意欲はありますか?
甲田 今はやってないんですけど、やっぱり現場は楽しいんですよね。なので、もう一回映画に出たい気持ちはあります。ただ今は音楽が最優先なので、ライブをやりたい気持ちが一番です!
――最後に、進路を検討しているティーンにメッセージをお願いします。
甲田 私自身、常に手探りで不安を抱きながらやっています。でも、それをマイナスに捉えるのではなく、新しいことにチャレンジしている証拠だと思って、そこから絶対に何かが生まれると思ってやってきました。なので、不安なことや嫌なことを恐れずに、その感情を大事にしながらプラスに考えて、自分のやりたいことにチャレンジしてください。
Information
1st DIGITAL EP『California』
2021年11月5日リリース
M1. California
M2. Love My Distance
M3. California.pf
M4. California_demo@201113

甲田まひる
シンガーソングライター
シンガーソングライター、ファショニスタ、ジャズピアニスト、俳優。2001年5月24日生まれ。小学6年生のときに始めたInstagramをきっかけにファッションスナップサイトでブロガーデビューし、ファッションアイコンとして業界の注目を集め、ファッション誌の連載やモデルとして活躍。そして、幼少期から都内ライブハウスを中心にジャズピアニストとしての活動も行い、2018年にジャズアルバム『PLANKTON』を発表。2019年には映画『台風家族』を皮切りに俳優としての活動もスタートするなど様々な方面で活躍している。2021年、シンガーソングライターとしてワーナーミュージック・ジャパンよりデビュー。
Photographer:Toshimasa Takeda,Interviewer:Takahiro Iguchi