小説とエッセイの違いは、コントと漫才の違いに近い

又吉 (相方と)2人でするトークと漫才の違いって何やと思う?そこにエッセイと小説の違いを理解するヒントがありそうな気がする。

岩井 うーん。形式的には、明確な違いはないですね。

又吉 じゃあ爆笑トークライブと漫才の違いは?

岩井 爆笑トークライブはつまらなそう(笑)。

又吉 漫才はゴールが決まってるところがトークと違うよね。あと、エッセイはすごい広いんやろな。エッセイの中に笑い話があってもいいし、小説の要素もあってもいいし。

岩井 そのわりに何も賞はないって言われて。

又吉 エッセイ?あると思うよ。

岩井 校内マラソン1位くらいの賞しかないって聞いたんですけど、(小説とエッセイの)労力がそんなに変わらないとしたら、この差はなんなんだろうって思ったりしましたね。

又吉 たしかにね。エッセイ書くのもすごい時間かかるし、面白いエッセイって、岩井の今回の本もそうやし、いっぱいありますからね。

岩井 又吉さんはエッセイと小説、書くときの切り替えはどうしてるんですか?

又吉 エッセイは自分が感じたこと見たことを書くんだけど、小説のほうは書き始めても入っていけなくて書けないっていうことはある。今、こいつ(主人公)の気持ちに添えないないなぁっていうときがある。僕の書いた小説の主人公って自分の分身の部分もあるけど、全然違うところもあるから、そいつを理解していないと話す言葉が出てこない。

岩井 演技とも近いんですかね。そいつを演じるにあたっても、自分の中にないものは出せないじゃないですか。そう考えると、小説とエッセイの違いは、コントと漫才の違いに近いのかもしれないですね。漫才は完全に「自分」がやってるんですよ。コントはけっこう苦手なんです。

又吉 ライブのコントで、設定だけ決めてやろうってなって、岩井がすごい「優しい奴」の役を与えられたら、次どんな優しいこと言おうかなっていうよりは、自然に優しい言葉が出てきて優しい奴になるっていう感覚があるやろ?

岩井 うん、そうですね。僕は(役に)入り込む能力が低いのかもしれないですけど。

又吉 バリアがあるのかな。俺は岩井だっていう。

岩井 あと、すごく照れがありますね。ドラマとかちょこちょこ出たんですけど、その人になりきるというか、その人が言いそうなことを頭で考えて喋ってるって感じですね。で、『劇場』を読んでたとき、あ、又吉さんだなって感じる部分がけっこうありました。

又吉 あの変な奴として岩井は俺を見てたんや?

岩井 全然見てます。こいつ意地悪っていうか傲慢だなって(笑)。

又吉 俺、傲慢やと思われてたんか(笑)。まあ、そういう部分もあるやろうしね。

岩井 小説書くときも、(演じるのと同じく)自分にないものは人物に投影できないかもしれないですね。