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音楽を通してジェンダー問題を描いたミュージカルドラマ

―湯川さんが主演を務めるWOWOWオリジナルドラマ「FM999999WOMEN’S SONGS」の内容を教えてください。

湯川 最近、ジェンダーが社会問題になっていますが、「FM999」もジェンダーが大きなテーマになっています。私が演じる16歳になったばかりの女子高生・清美の目線で、「女性とは?」という疑問を持ちながら社会を見ていくストーリーです。ただ、堅い内容ではなく、問題定義をしつつ、音楽を効果的に使ったオムニバスドラマです。テーマは社会的ですが、気軽に楽しめるエンタテインメントに仕上がっています。

―ミュージカル的な要素も入っているんですよね。

湯川:はい、そうです。毎話、3曲が用意されていて、ゲストの方が歌を披露します。歌詞は脚本・総監督を務める長久允監督が書かれています。3人ずつゲストがいらっしゃって、清美が「女って何?」と呟いたら、脳内のDJと繋がって、それにまつわる曲を紹介する構成です。いろいろな分野で活躍されている方々がゲストなので、その方によって曲の表現方法、セリフの言い方、キャラクターの作り方も全然違っていて、それぞれの個性が出ています。

―ゲストは俳優、モデル、お笑い芸人、アーティストなど多岐にわたりますが、中でも印象的なゲストを教えてください。

湯川:私は宝塚が大好きなので、元宝塚の真矢ミキさんとご一緒させていただいたのが印象的でした。役作りの過程が魅力的で勉強になりました。

―宝塚のどういうところに魅力を感じるのでしょうか?

湯川:宝塚は厳格な規律の中で、並々ならぬ努力をしないと役をもらえません。そうした努力の上で演じる姿に感動します。女性が男性を演じても違和感を抱かせない完璧な世界観もすごいと思います。

―長久監督とは3回目のお仕事になりますが、どういう演出をされる方でしょうか?

湯川:よく長久監督が仰るのは、「誰がその役をやるかが重要で、その人に頼んだ時点で、ほぼ演出は終わっている」ということです。もちろん絵的に、こうしてほしいという指示もありますが、基本的にその人の持つ魅力が際立つような演出をされます。そこがとても面白いです。

―現場の雰囲気はいかがでしたか?

湯川:過密なスケジュールで、カット数もすごく多いのですが、面白いものを作るぞ!というワクワク感があって、とてもいい現場でした。

仕事よりも学業を優先するスタンスはずっと変わらない

―どういうきっかけで芸能界に入ったんですか?

湯川:小学生のときに、今の事務所にスカウトされたんですけど、人前に出て何かするのが苦手だったので最初はお断りしていました。でも、所属だけしていて、たまに連絡を取っていたんです。

―人前に出るのが苦手だったのに、どうして芸能活動を始めようと心変わりしたんですか?

湯川:小学校の頃からバスケをやっていて、中学校ではバスケ部に入っていました。そこで人間関係が上手くいかなくなって退部しました。それまで何よりも打ち込んでいたバスケを失ったことで絶望していたら、事務所からCMのオーディションがあるという連絡をいただきました。それでチャレンジしてみたら、合格してデビューすることになりました。

―部活を辞めて絶望していたとのことですが、芸能活動を始めて気持ちに変化はありましたか?

湯川:部活を辞めた時はどうやって人と繋がっていけばいいのか分からなくて、自信をなくしていました。仕事を始めてからは、大人の人と触れ合う機会が増えて、学校とは違う世界を知ることができました。学校と仕事、二つの世界があることは精神的に楽でしたし、自分を保つためにも必要だなと感じました。

―学業と仕事のバランスはどうしていましたか?

湯川:勉強が好きで、ちゃんと学校の授業を受けたい気持ちが強かったので、学業を優先していました。そのスタンスは今も変わらないです。

―高校時代は何か部活をやっていましたか?

湯川:またバスケ部に入りました。普通の高校に通って、部活もやっていたので、仕事をバリバリやる感じではなかったんですけど、それでも両立は大変でした。早くから大学進学を考えていたので、勉強もめちゃめちゃ頑張ってました。事務所が、仕事とバスケの試合が被らないように調整してくれたので、部活にも打ち込むことができました。

演技が楽しいと思えるようになったのは大学で「演技論」を学んでから

―演技の楽しさは、俳優を始めたときから感じていたんですか?

湯川:正直、大学に入るまでは楽しいと思わなかったです。ずっと演技は恥ずかしいものだと思っていたんですけど、それを変えたいなと思って、大学で「演技論」という授業を選択してみたら、すごく面白かったんです。授業を聞いてからは、演技も面白いものだと思えるようになりました。

―2016年に湯川さんが主演したショートムービー『そうして私たちはプールに金魚を、』で高い評価を得ましたが、そのときも演技に抵抗感があったということでしょうか?

湯川:そうですね。とにかく人前に出ることが苦手なので、演技をすることに葛藤がありました。でも自分の言葉で思ったことを人に伝えるのができなくても、決められたセリフがあって、監督の言われたとおりに動くことは、それほど苦ではなかったです。自由を与えられるとできないけど、演技は制限があるからこそ気持ちを表現できました。だから自分にとって演技は必要なことなのかなと思いながら続けていました。

―目指している役者像はありますか?

湯川:去年、自分にとって演じるとはどういうことか、苦手なのにどうして人前に出ているのか改めて考えました。それで出た答えが、俳優という仕事は、多くの人に何かを伝えられる可能性があるということでした。例えば今回の「FM999」はジェンダーの問題を扱っていますが、私自身が社会に対して〝こうなってほしい〞と考えている問題があったとき、人前に出て、自分はこう思っていると言えるような人間でありたいと思ったんです。もしも湯川ひなという名前が広まったときに、私が発言したことで、多くの人に関心を持ってもらえる可能性がある。でも、そのためにはもっと勉強をしないと説得力も生まれないので、大学での勉強も大切にしています。

―最後に読者のティーンにメッセージをお願いします。

湯川:とはいえ勉強も大事ですけど、まずは自分が興味のあることを優先したほうがいいと思います!映画を観たいと思ったら映画を観る、本を読みたいと思ったら読書をするなど、自分の欲求と向きあって、どんなことでも学びに繋がるので、広い視野で人生を見て、いろんな方面から吸収して欲しいです。私自身、高校時代に観たフランス映画が、今の大学を選ぶ大きなきっかけになりました。試験や大学受験にとらわれ過ぎないで、やりたいことをやってみてほしいです。

Information


『FM999 999WOMEN’S SONGS』
3月26日にWOWOWオンデマンドで配信。3月29日からWOWOWプライムで放送中。毎週月曜21:30 ~。※全10話。

湯川ひな 岡部たかし 倉悠貴/ TARAKO
第1話ゲスト 宮沢りえ メイリン 菅原小春
第2話ゲスト 塩塚モエカ 太田莉菜 八代亜紀
第3話ゲスト モトーラ世理奈 後藤まりこ ともさかりえ
第4話ゲスト アオイヤマダ 三浦透子 ゆりやんレトリィバァ

脚本・総監督:長久允/演出:中村剛 大熊一弘/音楽:三枝伸太郎/音楽プロデュース:愛印/制作プロダクション:ギークサイト/制作協力:電通/製作著作:WOWOW

16歳の誕生日を迎えた小池清美(湯川ひな)は不安や喜びなどぐちゃぐちゃな感情を抱いていた。「女って何?」という言葉がふと口に出た清美の頭の中にDJ(TARAKO)の声が聞こえだす。「女のうた! レイディオFM999、始まるよ」。頭の中のDJは清美の悩みに応えて曲をセレクトして届けるという。目を閉じる清美はその歌の世界でさまざまな女たちと出会い学び、葛藤を重ねていく。そんなある日、清美は放課後の教室で、進路や受験や男社会など将来の夢についていらだちを感じていた。そして思わず、「女って何?」とつぶやく。すると再び、頭の中にDJの声が響き、「FM999」が始まる。われに返ると教室でちょうど、清美の未来に大きな影響を与えることになる新海先輩(倉悠貴)と出会うのだが……。

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湯川ひな

女優

2001年2月26日生まれ。東京都出身。
趣味/読書、映画鑑賞。特技/バスケットボール、太鼓・小鼓。2014年、TVCM『ミサワホーム』でデビュー。2015年、映画『あえかなる部屋-内藤礼と、光たち』で等身大の役を演じ、女優としてのスタートをきる。2016年、ショートムービー『そうして私たちはプールに金魚を、』で主演を務め、第33回サンダンス映画祭短編部門に正式招待され、日本作品で初めてのグランプリを受賞した。その他の出演作に、映画『バースデーカード』(16)、舞台『K . テンペスト』(19)、映画『子供はわかってあげない』(21公開予定)などがある。

Photographer: Atsushi Furuya
Interviewer:Takahiro Iguchi
Stylist: 中井彩乃
Hair & Make: 伏屋陽子(ESPER)