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「悩んでいる人がいたらすぐに声をかける」役柄との共通点

--『フラ・フラダンス』の台本を読んだ感想、実際に声のお芝居をしてみていかがでしたか?

富田 長編アニメでの声優に挑戦するのが初めてで、普段自分がお芝居をするときの感覚とは違って、最初はどうしようと思いました。物語は純粋に素敵だったし、一人の福島出身の人間として「スパリゾートハワイアンズ」のフラガールたちがアニメーションの中で輝くっていうのはすごく素敵だなと思いました。でも、それを届ける側になるときに、どうすればこの世界を表現することができるんだろう?というのは、未知数だなと思ったんです。

--最初は不安というか、迷いの気持ちがあったんですね。

富田 声優さんに対するリスペクトがすごくあったので、声だけでお芝居をするということが難しくて。そんな中、監督をはじめとするスタッフの皆さんが、私の気持ちをすごく汲み取ってくださって。「一人の俳優さんとして、地元を愛する人として純粋に楽しんでもらえばそれでいいよ」「蘭子ちゃんってこういう声かなって意識しなくていいよ、あなたの声に合わせて蘭子ちゃんを作っていくから大丈夫」と言ってくださって。その一言で、自分の声優への関わり方の道が開けた感じがありました。

--「あなたの声に合わせて蘭子を作っていくから」というのは本当に心強いお言葉ですね。演じた蘭子と富田さんに共通する部分があったら教えてください。

富田 ムードメーカーなところとか、食べることが好きなところは、まず似ているなと思うのですが、何よりも仲間との関わり方みたいなところがすごく似ているなと思いました。仲間に誰よりも早く、数多く言葉をかけたりとか。蘭子ちゃんと仲間の関係と、私と友達の関係性が似ているなと感じました。

--富田さんは悩んでいる友達、仲間にはどのように声をかけますか?

富田 蘭子ちゃんほどナチュラルにできているかは分からないですけど、「よく声をかけてくれるよね」とか「すぐ気づいてくれるよね」って言われることもあります。1回、「もう何も気にしない!」って思った時があったんですよ。「声をかけられるほうが迷惑かな?」とか思っちゃって。「人を気にするのをやめよう、気を遣うのをやめよう」って意識したのですが、そっちの方がしんどくて。私は声をかけるほうが性に合っているんだなと思います。

地元・福島への想い「初めて“憧れ”の気持ちを抱いたのがフラガール」

--富田さんご自身が福島出身ということでオファーがあったそうです。

富田 東日本大震災から10年という節目の年に、フラガールを題材にしたアニメーションをやるっていうのを聞いて、すごく早い段階からお話をいただいていました。

--ハワイアンズには行ったことはありましたか?

富田 初めてハワイアンズに行ったのは、覚えていないほど小さい頃なのですが、「こんなお姉さんたちいるんだ、キレイ、かっこいい!」って、憧れの気持ちを抱いたのがフラガールのダンサーさんでした。お話をいただた時も家に帰ってすぐに母と祖父母に「フラガールのアニメのお話をいただいたんだよね」って伝えました。こんなにテンション高く家族に報告したのは久しぶりで、家族も喜んでくれました。私はフラガールのダンサーさんでもないし、目指していたわけではないのですが、やっぱりすごく大切な場所なので。声優のお仕事に対する不安もありましたけど、脚本を読む前に「やります!」って即答しました。

--実際にフラダンスを踊った経験はありましたか?

富田 2年前に実写映画「フラガール」の舞台版に出演していて、フラダンスもタヒチアンも、お芝居の稽古の倍くらいダンスの練習をしました。フラってステップと踏み込んだ時に腰が上がるんですけど、すごく体力を使います。この映画の中で、蘭子ちゃんがダンスのトレーニングを経て最初のぽっちゃり体型が変わっていくんですけど、私もそうでした。。なぜかくびれができたり、食べてもきれいな体になっていくんですよね。

--本作は、震災から10年という節目の意味もこめられた作品ですが、震災を知らない世代の方も多く観るでしょうし、それも意義のあることだなと感じました。

富田 震災を生々しく伝えることじゃなくて、「この映画のフラガールたちの様に頑張っている子たちが、本当にたくさんいるんだよ」ってことを分かってもらうきっかけになる映画だと思いました。まずはシンプルに素晴らしい、グッとくるアニメ映画なのですが、ここで描かれている場所は実在していて、私が知ってほしい地元の姿なんです。それが詰まっていたことが本当に嬉しかったです。

キャラクターそれぞれに葛藤や悩みがあって。それは震災があってもなくても人間誰しも持つものだと思うから、それがリアルだなって思いました。震災がきっかけで人生とか考え方とか、目指す夢も変わっていくし、ある意味、傷みたいなものをちゃんと乗り越えていける力をくれるような作品だなって、一人の地元民として思いました。

「女優さんとして生きていかなきゃ」と決意したきっかけ

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--本作は、バラバラな場所から集まった女性たちがフラガールを目指す物語ですが、女優のお仕事でやっていこう思ったタイミングはいつですか?

富田 「芝居をしていこう」って思ったのは、養成所に入った時ではなく、一番最初の作品「ソロモンの偽証」に出会った時です。「ソロモンの偽証」も最初は仕事っていう感覚はなくて、「いかに普通の中学生でいてくれるか」っていうのをすごく大切にしながらの撮影でした。映画が完成して、いわきの映画館で、私と監督で舞台挨拶をさせていただく機会があって、その時に監督が「富田はこの役と、この作品と、ここで出会った仲間に出会うために福島を離れる運命だったと思うから、みなさま応援してあげてください」と、観客の皆さんに頭を下げてくださったんです。その時に「ああ、女優さんとして生きていかなきゃ」って思いました。その瞬間だったと思います。使命感みたいなものがありながらも、プレッシャーはなくて。今も大切にしている言葉です。

--素晴らしい瞬間ですね。お話を聞いているだけで胸が熱くなりました。富田さんは高校生のころどういう生徒でしたか?

富田 高校の時は”お仕事お仕事”でしたね。高校を卒業するくらいまで恋したいと思ったこともなかったです。勉強は提出物の期限は守り、卒業できる標準ラインはクリアしながら、とにかく仕事をやりたい、という感じでした。よく勉強とお仕事の両立は大変ですよねと言っていただくのですが、好きなことができるって幸せですよね。

--高校生におすすめの作品はありますか?

富田 自分が出演した作品だとしたら「SUNNY強い気持ち強い愛」という作品です。今と時代は違うんですけど、響く部分も多いのではないかなと思います。高校の青春時代って本当に一度きりなので、勉強も大切だけど、楽しいと思える時間を過ごしてほしいなと思います。友達との時間とかちょっとやんちゃなことした瞬間とか、大人になるとできなくなると思うので、日々を楽しんでくれたらいいなって思います。

--この作品は「笑顔」も一つのキーワードになっていると思います。ご自身が最近笑顔になった瞬間はありますか?

富田 ちょうど私の同級生が就活の時期なんです。地元の友人で東京の大学に通っていた同級生が「いわきに帰っていわきの会社で就職することにした」というのを聞いて嬉しかったです。

--富田さんが憧れている方、尊敬している方はいらっしゃいますか?

富田 最近だと「ウエンディ&ピーターパン」という舞台をやっていて、黒木華さんに憧れるようになりました。本当に素敵な方で、女性としても素敵ですし、私のデビュー作「ソロモンの偽証」の担任の先生を演じられていて、映画の大先輩という感覚もあります。

黒木さんは「映画の人」という感覚があったんですけど、舞台でご一緒した瞬間に「舞台の人」に変わって。そして普通の華さんは普通の一人の素敵な女性なんです。それはすごいなと思いました。

Information

『フラ・フラダンス』

<声の出演>
夏凪日羽:福原遥
鎌倉環奈:美山加恋
滝川蘭子:富田望生
オハナ・カアイフエ:前田佳織里
白沢しおん:陶山恵実里
平和人:山田裕貴
鈴懸涼太:ディーン・フジオカ

総監督:水島精二「鋼の錬金術師」「機動戦士ガンダム 00」
監督:綿田慎也『劇場版 アイカツスターズ!』「ガンダムビルドダイバー ズ」
脚本:吉田玲子「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」『きみと、波にのれたら』
音楽:大島ミチル「鋼の錬金術師」「のだめカンタービレ」
主題歌:フィロソフィーのダンス「サンフラワー」
制作:BN Pictures「アイカツ!」「銀魂」
配給:アニプレックス

福島県いわき市に暮らす高校生・夏凪日羽。 卒業後の進路に悩む日羽は、かつて姉・真理 が勤めていた「東北のハワイ」こと「スパリゾートハワイアンズ」のポスターを見て衝動的に、新人ダンサー=フラガールの採用試験に応募する。 未経験ながらも採用された日羽は、鎌倉環奈、滝川蘭子、オハナ・カアイフエ、白沢しおんたち同期と共にフラガールへの道を歩み始めるが、個性豊かすぎる5人の足並みはそろわず、初ステージで、ある大失敗をしてしまう。 「今までで、一番ざんねんな新人たち」と呼ばれ、落ち込む彼女たちだったが、恋、ダイエット、そしてフラ…と、いいことも辛いことも分かちあいながら、フラフラしながらも絆を深めていく―――。

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富田望生

女優

2000年2月25日福島県生まれ。趣味 ピアノ、ドラム、クラリネット、パーカッション、歌、ダンス。映画「ソロモンの偽証」で注目を集め、「私がモテてどうすんだ」「SUNNY強い気持ち強い愛」「HiGH&LOW THE WORST」「なつぞら」など次々と話題作に出演。テレビドラマ、映画にとどまらず、舞台、CM、MVへの出演、モデル、ラジオ番組など活動の幅を広げている。

Photographer:Mayuko Yamaguchi,Interviewer:Kozue Nakamura