初めて脚本を読んだときから、今でも悩み続けている
――『彼女が好きなものは』の脚本を読んで、どんな印象を受けましたか?
前田 どうやって亮平という役と向き合えばいいんだろうと、初めて脚本を読んだときから、今でも悩み続けています。正解がない話だと思うので。僕の周りには、知らないだけかもしれないですがゲイの友達がいなかったので、当事者のことや、どう向き合い、接するのが最適解なのかなど、かなり調べて考えて撮影に臨みました。
――BLの存在は知っていましたか?
前田 高校時代、紗枝みたいにBL好きの女の子がけっこういたので知ってはいたんですけど、自分としてはあまり理解できないジャンルでした。
――役作りではどんなことを意識しましたか?
前田 テーマは重いんですけど、映画のタッチとしてはめちゃくちゃ暗いという感じではないので、そこはすごく意識しました。亮平も普段は明るいキャラクターですけど、シーンによっては話している内容が難しいテーマなので、暗く、重くなりがちでした。それをアウトプットするときに、明るい亮平らしさを出しながらも、亮平の考えが見え隠れするような演技を心がけました。
――純がゲイであることを知る前と後では、亮平の接し方も微妙に変化します。どういうことを意識して演じましたか?
前田 僕自身、亮平と同じようにどうやって純と接したらいいのか悩んでいたからこそ、必要以上に表現しなくても、自然とセリフの言い回しが変化しました。
――生徒同士で同性愛についてディスカッションするシーンは本当の授業のようで生々しかったです。
前田 あのシーンは僕自身、一番好きです。あれがセクシュアルマイノリティを取り巻く今の社会をリアルに表していると感じました。あの状況を客観的に、映画として見るのは本当に大切なことです。撮影が終わった後の映像チェック中に、草野監督と2人で「気持ち悪いシーンになりましたね」というお話をしたんですけど、それぐらい違和感のある空気が流れていて、この映画のテーマについて、ちゃんと考えようというきっかけを与えてくれる、誰の心にも刺さる大事なシーンだと思います。
――撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
前田 撮影現場はめちゃくちゃ明るいというか、学校でのシーンではクラス全員が和気あいあいと喋っていて本当に楽しかったです。草野監督自身が率先して賑やかな雰囲気を作ってくださったので、みんなでワイワイしてましたね。
――主演の神尾楓珠さんにはどんな印象を受けましたか?
前田 楓珠は純という役がぴったりだと思いました。純がしゃべってなくても、純の目を見るだけで、すごく伝わるものがあるというか。抱えているものの重さと、ずっと悩んで苦労してきたことが、楓珠の目を見るだけで伝わってくるんです。ただ意外だったのは、普段の楓珠はめっちゃ明るくて、純とは全然違いました。
――ヒロインを務めた山田杏奈さんの印象はいかがでしたか?
前田 もともと仲が良くて。2020年は3本連続で共演しました。一緒にいるとほっとしますし、安心感があります。お互いに信頼関係もあるので、お芝居をしていてもやりやすいところがたくさんあります。