地元に根付いている、地元に愛されている「ハワイアンズ」を舞台に
--本作はオリジナルアニメですが、総監督の構想から生まれたのでしょうか?
水島 フジテレビが東日本大震災の被災者支援として展開しているプロジェクト「ずっとおうえん。プロジェクト2011+10...」の一環で、「福島県を舞台にフラダンスをやっている女の子たちのお話を作ってほしい」というところまでは決まっていて、具体的なストーリーはまだない状態で声をかけていただきました。
--そこからフラガールのことを調べたりされましたか?
水島 実写映画「フラガール」を観ていましたのでフラガールの存在は知っていました。映画制作がスタートしてすぐに「取材に行きましょう!」ということで、舞台となったスパリゾートハワイアンズに行きました。若い方は知らないと思うんですけど、スパリゾートハワイアンズって昔、「常磐ハワイアンセンター」という名前で、「日本のハワイ」というTVCMが流れていました。子供の頃、気にはなっていたものの行く機会に恵まれず。で、今回行ってみたら、非常に地元愛あふれる素敵な施設だと思いました。
--どんなところに地元愛を感じましたか?
水島 温泉施設があるので、地元のおじちゃんおばちゃんが、日々のお風呂として利用していたり。湯本駅からハワイアンズまで無料送迎バスが出ているんですよ。そのバスは主に遠方から来た人たちがハワイアンズに行くために乗るんですけど、直通ではなく途中のバス停にも止まるんですよね。不思議に思っていたら、途中でおじちゃんとかおばちゃんが乗ってくるんです。従業員の方かな?と思ったら、普通にお風呂に入りに来る人たちで。従業員の方とも親しくて、仲良くお話をしていて。地元に根付いているんだと感じました。
ダンサーとか職員も地元の方が多く、地元の企業に就職する形としてスパリゾートハワイアンズで働いている。昔、常磐炭鉱が閉山になる時に雇用を生み出すために常磐ハワイアンセンターが作られたという経緯があるから、長い間地元に根付いていて、それが守られているんですね。
--雇用が都市部に集中してしまう中、理想的な形ですね。
水島 この映画の情報が解禁になった際、東北出身の仲間からも結構反応をもらいました。柏原くん(陸上選手・柏原竜二)が福島いわき出身で「僕もハワイアンズには子どもの頃から行っていました」と連絡をくれて。それ以外にも仕事仲間が「子どもの頃から行っていた場所がアニメの舞台になるのはすごくうれしいです」って言ってくれています。
--キャスト陣の中でも、蘭子を演じた富田望生さんだけは出演が最初から決まっていたそうです。
水島 せっかくなので福島ゆかりの人とか、東北出身の方にやっていただけたらいいよねという話がありました。富田さんに関しては伊藤プロデューサーが「蘭子というキャラクターを作っていく中で、とてもピッタリな女優さんがいる。しかも福島出身だからアタックしたい」と言われて、それが富田さんでした。
僕もその後に彼女が出ているドラマや映画を拝見して、すごく明るくて雰囲気ある女優さんだから素晴らしいなと思いました。ディーン・フジオカさんも福島生まれで快く引き受けていただきました。普段のアニメ作品でしたら、キャラクターに合った声の人を自分のわかるところからオーディションかけたりして選んでいくという感じですが、今回は全体で東北を応援するためにも、ゆかりの人が入ってくれて、それが力になっていると思います。