友人の言葉がきっかけで歌を志すようになった

――ここからはmiletさんのキャリアについてお話を伺います。音楽を始めたきっかけを聞かせてください。

milet 歌自体を始めたのはデビューする少し前ぐらいだったんですが、もともと小学校のときからフルートをやっていたんです。私が小さいときから、家族がクラシック音楽を聴かせてくれて、オーケストラのコンサートにもよく連れていってくれました。将来オーケストラに入ろうって思ってフルートを吹き続けていました。その後、高校生の頃に映画に出合い、すごく惹かれて、映画のサウンドトラックにも興味を持ち始め、映画と音楽、どちらも学べる進路を選びました。

――歌を始めた経緯は?

milet アコースティックギターを始めて間もない頃のある日、落ち込んでいる友達を家に招いたときに、「何か弾いて」と言われたのがきっかけです。全然上手くはなかったんですが、弾き語りをしたらとても感動してくれて、「miletちゃんの歌声で心のモヤモヤが飛んだ気がする。すごい力を持っている声だと思うよ」って言ってもらえました。自分の声に特別なものがあるなんて感じたことがなかったのでうれしくて、そう言ってくれる人がいるなら歌に挑戦してみようと思いました。自分の歌を録音して「この歌声じゃダメだな」「もうちょっと特徴がないと聴いてもらえる声にはならないな」などと歌声を研究しました。今の歌声を掴めてから、歌を志すようになりました。

――影響を受けたアーティストを教えてください。

milet クラシックで育ったのでベートーベンとパガニーニが大好きです。クラシックでも沼から抜け出せないようなダークさがある人たちが好きで、それが自分の曲にも出ていたりします。映画音楽だとバーナード・ハーマンが好きで、一番好きなサントラは『タクシードライバー』です。映画自体も一番好きな作品です。ロックを聴き始めたのは、シガー・ロスやmúmなどのポストロックからです。そのあと、クーラ・シェイカー、レディオヘッド、ゴリラズなどのUKロック、同時期にスリップノットやコーンとかメタルも好きになりました。中学、高校生ぐらいからポップスや邦楽を聴くようになって、そのときに出会ったのがSalyuさんです。Salyuさんの声に惹かれましたし、自分の歌声を作り上げるときに影響を受けました。

――歌を始めたときからアーティストを目指されたのでしょうか?

milet いえ、私が歌い始めたきっかけが、ひとりの友人のために歌うことだったので、アーティストになろうとは思っていなかったです。どんなときでも目の前のひとりのために歌える人でありたいという気持ちは今も変わりません。ライブでお客さんがたくさんいても、1対1がいっぱい繋がっているという感覚で歌っています。

――miletさんが曲作りで大事にしていることを教えてください。

milet 人に届くものを作るということを一番に心がけています。人をネガティブにしたり後ろ向きにしたりする曲は絶対に作りたくない。誰かの力や糧になる曲、暗くてもその暗さの中で寄り添える曲を作りたいと思っています。セッションの中で即興で作っていくので、気持ちの鮮度はとても大事にしています。その場の気持ちの波形がメロディにそのまま出た方が、臨場感があってリアルになります。自分が人に抱いている違和感や喜びなどをそのままメロディに出せるような、感情の記憶を大事にしています。