エロというのは自分にとって一つの発見だった

――若手のミュージシャンにインタビューすると、音楽に目覚めたきっかけのバンドとしてクリープハイプの名前を挙げる人が多いのですが、音楽制作をする過程で若い世代を意識することはありますか?

尾崎 全く意識していなくて、やりたいことをやっているだけです。あと流行りを本格的に取り入れるというのも個人的に恥ずかしいんですよね。たとえばジャズっぽくしてみようと思った時に、「ジャズっぽいだけじゃかっこ悪いから、そこに特化したアレンジャーさんを呼んで本格的にやってみよう」ということは、ちょっと照れがあってやらないんです。あくまで、それっぽいというところに、こだわっています。だからこそ多くの人に届く部分があると思っていて、そこの恥ずかしさのようなものは消さないようにしています。

――尾崎さんの書く歌詞には際どい内容も多いですが、ローティーンやミドルティーンにも届いているのはすごいことだと思います。

尾崎 人前で言うのをためらうような言葉を歌詞に入れたりもするので、そういう意味では、どこかエロ本を見るような気持ちで聴いてくれているのかもしれないです。その感覚は過去に自分も経験しているのでよく分かるし、年齢を重ねていった時に必要なことだったんだと分かってもらえたら嬉しいですね。かと言って、強く印象を残したいからそういう言葉を使ったことは一度もありません。周りがまだ使っていない言葉がたくさんあったから、こんなに強い言葉なのになと思って歌詞に入れたんです。10代の頃に書いた歌詞は、なんとなく書けてはいるけれど、自分のものじゃなくて、本から抜き出した言葉を並べているだけだという感覚があって。そう感じていたときに、エロというのは自分にとって一つの発見だったんです。エロいことを歌詞に入れて歌った時に初めて、自分の言葉になったという感覚がありました。当時、ちょっとフザけた感じでエロを使っている歌もあったんですけど、もっと切実に歌ってみたらどうかという考え方に変化していって。それをライブハウスで歌ったら、「あの曲すごくいいね」と周りにいたバンドマンが反応してくれたんです。ちゃんと曲を聴いていない人が、そこだけを切り取って、「こういうバンドだろう」と決めつける事もあります。ただ、クリープハイプを初めて聴く人の糸口というか、引っ掛かりがエロというキーワードで、そこから開けるというのは、いまだに大切にしています。

――ニューアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』では、エロいテイストの歌詞は控えめですよね。

尾崎 直截的な表現を使わずに、もうちょっと分かりにくくしていますが、結局そういうことを歌っています(笑)。

――3年3か月ぶりのアルバムとなりますが、どんなコンセプトで制作したのでしょうか?

尾崎 できた曲を並べていったという感覚ですね。よくコンセプトという言葉を使うけれど、そんなかっこいいものは、たぶんないと思うんですよね(笑)。メロディーもほとんど意識していなくて、とにかく1曲1曲作っていって、その意識をくぐり抜けたようなものがいいものだなと思っているんです。歌詞を書く時も、立ち上がりが早い言葉に思考が追いつかなくて、何かいいなという気持ちだけがあって、これはこうだからと意味を紐づけて、後から追いかけていきます。さらに、こうやってインタビューをしていただいて喋りながら、ああそうだったんだなと思うこともあるんですよね。取材を受けながら固まっていくというか。すべての取材が終わった時に、本当に作品のことが分かるということも多いので、こういう場は自分にとって大事ですね。