初めての中国ロケで中国語の発音に苦戦
――『安魂』は日中合作映画ですが、日本人キャストは北原里英さんだけです。オファーを受けたときは、どんな気持ちでしたか?
北原 ロケで中国に行く約1ヶ月前にお話をいただいたんです。準備期間が短い上に、全編中国ロケでセリフも全部中国語で正直「大丈夫かな?」という思いはありました。ただ私には常に追い込まれたいみたいなものがあるので、全力で挑戦させていただきました。
――AKB48在籍時代から、よく北原さんは海外に行かれていましたよね。
北原 当時は海外担当と自分で言ってたくらいで(笑)、「Japan Expo(ジャパン エキスポ)」があったら、ほぼ100%行ってました。
――そのときに中国語を話す機会はあったんですか?
北原 「ニーハオ」「シェイシェイ」といった挨拶や「あけましておめでとうございます」「お年玉ください」は、そのときに言えるようになりました。でも言えるのはその程度だったので、準備期間の1か月で中国語教室に通って猛特訓して撮影に臨みました。
――中国語教室の成果は現地で発揮できました?
北原 会話は全然伝わらなかったです(笑)。やっぱり1か月程度だと、最低限レベルの言葉と、セリフしか覚えられませんでした。現地でのコミュニケーションは英語でした。ただ、『安魂』の撮影が終わった後も、そのまま中国語教室に継続して通い続けました。現地に2週間滞在して中国語に耳が慣れていたこともあって、かなりしゃべれるようになりました。
――現地の役者さんと呼吸を合わせながら演技するのはいかがでしたか?
北原 難しかったです。台本は読み込んでいたので、相手が何を言っているかは理解できますが、完璧には分からないんですよね。あと発音に一番苦しめられました。ほとんどアフレコだったので、1日のシーンを撮り終わった後、その日のうちにホテルでオンリー録り(※一人でセリフを録音すること)がありました。実際の撮影では、相手の俳優さんと対面しているので流れで言えたことが、一人では言えなかったりして、オンリー録りの時間は本当に大変でした。感情を込めると発音も変わりますし、正しい声調じゃないと中国語は伝わらないんです。毎回追い込まれていましたが、張爽役のルアン・レイインに教えてもらって助けられました。
――初めて『安魂』の台本を読んだときは、どんな印象を受けましたか?
北原 中国の文化が色濃く出ている場面が多くて、日本人からすると馴染みがない部分もありました。ただ根本は家族愛の話なので、初めて台本を読んだときからしっかり理解できました。家族愛の話だけではなく、そこにサスペンス的な要素なども入ってくるので、そのバランスもいいなと思いました。
――重厚なテーマですが、北原さん演じる日本人留学生の星崎沙紀はポジティブな性格で、緊張感を緩和する役割も果たしていました。
北原 沙紀は訳の分からないまま事件に巻き込まれて、大事な局面に立たされますけど、めちゃめちゃおせっかい焼きで、自ら見知らぬ人のトラブルに介入していきます。実際、私も初めて中国で映画の撮影を経験して、よく分からないけど、なぜかそこにいるというような状況に近かったんです。私自身、おせっかいなところがあるので、おそらく沙紀と同じ状況に置かれたらやりすぎちゃうタイプという気がするんです。なので、自分自身が持っているマインドで行けたところがありますし、沙紀の行動も理解できました。そこがうまくマッチして演じられたのかなと思います。