堤幸彦監督は女の争いを撮るのがものすごく得意

――元ヤンでシングルマザーのマロン(福宮あやの)、セレブな医師・さな(河野知美)、美貌を武器に受付の仕事をしている野心家の真弓(広山詞葉)という配役ですが、最初からキャスティングは決まっていたんですか?

河野 脚本の段階では決まっていなくて、後で堤監督が決めてくださいました。

広山 私はあんまりやったことのない役だったから、マロンをやりたかったんです。でも真弓なんだろうなという気はしていました。

――真弓に共通する部分はありましたか?

広山 あんまりないですね。真弓みたいに、ブランド物がどうとか、高級ホテルがどうとかは、あんまり興味がないんです。でも三浦さんが私に書いてくる役は、「リモート女子ドラマ♥ナイト用」でも「ザ・女」という役だったんですよね。ただ共通項がないからこそ、客観的に演じやすい部分はあったかもしれません。

――福宮さんはマロンという役柄にどんな印象を抱きましたか?

福宮 友達になりたいタイプで、けっこう好きな子です。子どもがいるという共通点もありますし、言いたいことを言って、やりたいことをやって生きてきたところは自分にも重なるところがあって、わりと考え方も似ているところがあります。ただ、この作品は亡くなった1人の男性を巡って、誰が一番愛されていたかを3人の女性が争うドラマで、マロンは3人とも愛されているでいいじゃん?みたいな感じなんですけど、おそらく私は真弓タイプなので、「いやいや私が一番だし!」ってなると思います。

――河野さんが演じたさなは一見するとクールな医師で、本作のテーマでもある「精子バンク」について理路整然と語る姿が様になっていました。

河野 精子バンクについてのセリフがものすごい量で……。言葉の羅列を覚えることは簡単かもしれないですけど、理解しないと繋がらない言葉のオンパレードだったので苦労しました。最初はさながどんな人なのか掴みきれなくて、三浦さんに「さなってどんな人ですか?」って聞いたら、「優しい人です」って答えだったんです。実際に映画を見た人が、どんな印象を持つか分からないですけど、私は三浦さんの言葉がすごく理解できたんです。確かに第一印象は冷たい印象ですけど、言葉の端々に優しさを感じました。難しい役だったんですけど、「あ、大丈夫だ!」と感じたのを覚えています。

――河野さんと広山さんのケンカシーンは白熱の演技で圧倒されました。

広山 堤監督が別の取材でおっしゃっていたんですけど、普段はアクションシーンって全部振りをつけるんですけど、今回は全くつけずにガチでやったので、いろんなハプニングがありました。

河野 広山のストッキングはビリビリでしたし、お互いにあざだらけでした。

福宮 私は撮影当時、妊娠4カ月だったので堤監督も三浦さんも気遣ってくれて。ヤンキーで一番手が早そうなんですけど、どちらかというと見ている人になりました(笑)。

――堤監督の演出はいかがでしたか?

広山 女の争いを撮るのが、ものすごく得意だなと。三浦さんと堤監督が組んでらっしゃった映画『2LDK』もそうだったんですけど、女性の気持ちに寄り添ってということではなく、女の争いを描くことに長けていらっしゃると思います。

――女心を理解しているのとはまた違うんですか?

福宮 堤監督が女心を分かっていると思ったことはあまりないです(笑)。

河野 たぶん堤監督が女性の感情を分かっちゃうと、今回の映画みたいにならないなと個人的に思っていて。三浦さんが書く言葉と、演じる側の女性がいて、それをすごく客観的に見てる映画だなって思うんです。誰が悪いとか、誰に共感するとか、そういうところじゃなくて、堤監督は外野から、「行け行け!」みたいな感じで、コミカルにリズミカルに撮った作品になっています。

福宮 前に堤監督が「『ロッキー』みたいな男同士の殴り合いには全然興味がないし、面白みを感じない」とおっしゃっていて。そういう意味で言うと、こういう女性同士の戦いに面白さを感じているのかもしれないですね。

――最後に改めて『truth〜姦しき弔いの果て〜』の見どころを教えてください。

広山 私たちは、この映画のジャンルをコメディーと言っているんですけど、堤監督の手がけた『TRICK』や『SPEC』の世界観のように小ネタ満載の「ザ・堤作品」です。何秒かに1回はクスッと笑えるんですけど、その奥にはきちんと女性の抱えているものや本当に伝えたいものが隠されていて、笑いながらもそこを見ていただきたいです。

福宮 3人のキャラクターが三者三様なので、皆さん誰かに少しでも感情移入していただけるところがあるんじゃないかなと思います。その人の目線を通じて映画を見ていただいて、じゃあ自分だったらこうするだろう、みたいなことを考えながら見ても面白いのではないかなと。広山も言ってましたけど、最後に女性の決意みたいなものがある映画なので、そういうものが少しでも伝われば嬉しいです。

河野 2人が真面目なことを言ってくれたので……私が、この映画の見どころを一つ言うんだったら、劇中の(佐藤)二郎さんの顔に注目です!

Information

truth〜姦しき弔いの果て〜
新宿シネマカリテほか全国順次公開予定

広山詞葉 福宮あやの 河野知美
忖度出演:佐藤二朗
監督&原案:堤幸彦 脚本:三浦有為子

©2021 映画「truth〜姦しき弔いの果て〜」パートナーズ

突然亡くなった恋人(佐藤二朗)の部屋で 3 人の女性たちが鉢合わせ。元ヤンでシングルマザーのマロン(福宮あやの)、セレブな医師・さな(河野知美)、美貌を武器に受付の仕事をしている野心家の真弓(広山詞葉)……異なる個性の 3 人と恋人は同時につきあっていて、亡くなる直前、それぞれに「帰ったら大事な話がある」と留守電を残していた。大事な話があったにもかかわらずなぜ恋人は亡くなったのか。また、彼が残した首のない裸婦像は誰をモデルにしたものなのか。3 人は我こそ彼に最も愛された女だと主張をはじめる。女たちの壮絶なマウント合戦の結末は。

公式サイト

広山詞葉
1985年生まれ。広島県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒業後、映画、ドラマ、舞台、落語と幅広く活躍。主な出演作品に映画『ヘルタースケルター』、『ファーストラヴ』、ドラマ『最後から二番目の恋』、倉本聰作品『やすらぎの郷』、『SPEC』シリーズ、舞台『後家安とその妹』等。2017年より女優業と並行し、映画の企画・プロデュース活動を開始。自身初のプロデュース兼主演映画『今夜新宿で、彼女は、』では、渋谷TANPEN映画祭2017ブロンズバーガー賞/最優秀主演女優賞、山形国際ムービーフェスティバル2017大西金属賞/最優秀俳優賞、西湘映画祭2018グランプリ/最優秀女優賞、中之島映画祭2018優秀賞を受賞。2022年は本作のほか、主演映画『ひとつぼっち』、映画『無音のレテ』が公開。

福宮あやの
1983年生まれ、兵庫県西宮出身。University of Auckland(New Zealand)への留学を経て関西大学卒業。2011年に声優としてデビュー以降、映画『Marriage Story』(19)、『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』(18)、海外ドラマ『The Good Fight/ザ・グッド・ファイト』、『グッド・ワイフ』、『ボルジア家 愛と欲望の教皇一族』、『オースティン&アリー』、『アメリカお宝鑑定団ポーン・スターズシリーズ』など多くの作品の声の吹き替えを担当する。2児の母。

河野知美
迫⽥公介監督作品『⽥の愛⽥』(13 年)で映画初主演。同作にてビバリーフィルムフェスティバル(USA)でベストアクトレス賞を受賞。NHK大河ドラマ『西郷どん』(18)、『霊的ボリシェヴィキ』(18)、『呪怨:呪いの家』(20/Netflix)などに出演。またネイティブレベルの英語⽥を生かし近年では海外ドラマシリーズにてレギュラーキャストとして出演を果たす。2022年はエグゼクティブプロデューサー、主演として制作した『ザ・ミソジニー(仮)』の公開が控えている。

Photographer Toshimasa Takeda,Interviewer Takahiro Iguchi