大学デビューに失敗してボクシングに打ち込む日々

――お笑いを目指したきっかけを教えてください。お二人は大学卒業後に、NSC(吉本総合芸能学院)に入られたんですよね。

松本 そうですね。今の時代は大卒の芸人が多いですね。NSCを卒業して、今も残っている人は大卒ばっかだし。

市川 僕らの代(NSC東京18期)はそうだね。

松本 高卒の子もいたけど、大卒組が多いです。あとは大卒で1年間社会人やってからとか大学中退とか。個人的な意見ですが、大学受験を経験している人としていない人ではめっちゃ差があるなと思うんです。大学受験を経験している人は、机に向かってネタを書くのがそこまで苦じゃないというか、勉強に比べれば自分の好きなことやっているんで頑張れるんですよね。それに、いろいろ選択肢があった中での芸人だから、世界は広がっている気がしますので、僕は芸人を目指すにしても、大学は行った方がいい派です。

――いつ頃からお笑いの世界に進もうと思われたんですか?

松本 人気者だった大学の同級生に誘われたからです。僕自身は人気者でもなかったんですけど、「面白いから一緒にコンビ組んでお笑いやろう」って誘われました。ずっと何者かになりたい、一旗あげたいという気持ちでいたんです。

――お笑い自体も好きだったのでしょうか?

松本 やろうって言われてから見始めた感じです。その友達とは高校からの付き合いで彼は高校の頃から人気者でしたが僕は何もしてなくて。同じ大学に行くことになって、高校時代に何もしてなかったから、絶対大学デビューしようと思って大学に入った瞬間に髪を七色に染めました。新勧でゆってぃさんのモノマネをして、それ一発で代表まで上り詰めたんです。

――サークルの代表まで上り詰めたということは、大学ではかなりイケてたんじゃないですか。

松本 最初はそうでした。でも途中からそうでもなく。中高はヤンキーと無縁の生活だったのに、大学に入って映画『クローズZERO』の小栗旬さんを見て、ヤンキーに憧れたんです。僕が所属していた農学部では、ゆってぃさんのモノマネで天下を獲ったので、次は工学部と教育学部も制覇したいなと思ったんです。ところがヤンキーにケンカを売ったらボコボコにされて。

市川 大学時代の話ですよ。普通は高校で経験するやつだろ!

松本 工学部にも僕らと同じような一大グループがあって、イケイケの目立ってる奴らがいました。そこの代表が金髪の坊主で農学部のみんなで、「工学部の金髪坊主グループに喧嘩売りいこうぜ」となったんです。おそらく農学部のグループは全員が大学デビューなんですけど、金髪坊主は元ヤンキーで喧嘩売りに行ったら、「3日後に駐車場で待ち合わせな」という話になって。

市川 何度も言いますけど大学時代の話ですよ。

松本 で、駐車場で待ち合わせていたら、その金髪坊主がボンボンボンボンボンって、バイク20台ぐらいでやってきて僕たちを取り囲みました。

――松本さんのグループは何人いたんですか?

松本 僕らは農学部の精鋭6人です。向こうは20人。そして金髪坊主が「代表の松本っていうのはどいつだ!」ってバイクから降りてきて。ただ『クローズZERO』が頭にあったんで、ケンカしたことなんて一度もないのに、もしかしたら俺強えんじゃないかという根拠のない自信もあって。「松本は俺だー!」って金髪坊主グループに向かって走り出したんです。当然、農学部のみんなも同じ気持ちだと思ったんですが、パッと後ろを振り向いたら僕以外みんな正座していて。

市川 かっこいいよ!一人で立ち向かったんだね。

松本 金髪坊主に向かって「うわー!」って叫びながら、生まれて初めて思い切り人を殴ったつもりだったんですけど、相手の顔に僕のパンチがペチンと当たっただけ。そしたら金髪坊主は僕の首根っこを持って、その場にバンと倒されて。そこで僕はすべての地位を失って、農学部も工学部の傘下になったんです。

―――天国から地獄じゃないですか。

松本 それからは『はじめの一歩』みたいに、いじめられっ子がいじめっ子に勝つために強くなろうとボクシングを始めました。強い怒りがあるのでどんどん強くなっていって、2~3年でプロの人と戦えるぐらいになりました。大学4年生のときに「今だったらリベンジできる」と思い、一人で金髪坊主たちがたむろしている喫煙所に行きました。

――一発かました訳ですね。

松本 金髪坊主に「もう一回喧嘩してリベンジさせてくれや」って言ったら、金髪坊主が一言「就活中だから」って断ってきたんですよ。いつの間にか、あいつは前に進んでいて、僕は「就活って何?」という状態でした。

市川 長年、山にこもってた奴みたいになってるよ。

松本 僕はただただ強くなりたい一心でしたから。そもそも金髪坊主は、髪も黒くしていましたからね。結局、金髪坊主グループは「何あいつ?」みたいな感じで去っていって、あいつらが残したタバコの煙だけがゆらゆら揺れているという。

市川 めちゃくちゃバッドエンド!

松本 そんなこともあって就活もしてないから、誘われるままNSCに行くしかなかったんです。