年の離れた年下の役者や バンドマンとすぐに打ち解けられた

――『ミラクルシティコザ』の脚本を読んだ印象はいかがでしたか?

桐谷 切り口が面白いし、今までの沖縄映画とは違った新鮮さがあるなと。平監督が感想メールをくださいとおっしゃったので「ここの部分はもうちょっと沖縄の思いみたいなものが見えたらもっといいかなって思うんですけど」と自分の意見を伝えたら、「じゃあ書き直します!」とすぐに返信があって。とにかく情熱がすごかった。脚本は監督のものなので、最初は遠慮もあったんですけど、「いっぱい言ってください。言っていただいた方がありがたいんで!」ということだったので、箇条書きにして伝えたりしました(笑)。ディスカッションのように何度か繰り返して、そのたびに書き直した脚本が送られてきましたね。

――やりとりの中でかなり内容も変わったのでしょうか?

桐谷 ベースは同じですけど、変わりました。最初は全体的な流れとか、ハルと翔太が入れ替わってタイムスリップするとか、コメディーの部分はすごく伝わってきたんですけど、もっと沖縄の思い、コザで撮る意義が感じられたらいいなと思ったんです。さらに現場でも、どんどん内容は変わっていきました。

――コメディー要素とシリアスな要素が入り混じっていて、そのバランスが絶妙だなと感じました。

桐谷 「これはコメディー映画です」と平監督は言っていたんですが、もちろん沖縄のいろいろな歴史や思いが描かれています。でも、それを教材みたいにはしたくないし、説教じみたことは言いたくない。哀しみをアピールしたい訳でもない。そういう思いを伝えてくれました。ただコメディーにはできない歴史もあるし、そこはすごく素敵なバランスだなと思いました。

――桐谷さんが演じたのは、主人公のハルと、ハルが乗り移った翔太の、いわば一人二役です。役作りはどのようにされましたか?

桐谷 乗り移る前の翔太は、(津波)⻯⽃という役者が演じているんですが、クランクインするまで会ったことはなかったんです。監督を通じて、「翔太だったらどんな感じなのか、セリフを言ってみてほしい」というリクエストをして動画を送ってもらって、動きやしゃべり方を寄せました。俺が演じた翔太を見て、竜斗の昔からの友達から「めちゃくちゃ似ています」と言ってもらえました。

――ちょっとおどおどしたような立ち居振る舞いも、⻯⽃さんが演じた翔太に似ているなと感じました。

桐谷 俺が芝居をするときは、自分の出番がないときでも常に竜斗が現場に来てくれていたんです。「この場面だったら、こんな座り方やしゃべり方になってもいいよな?」「そうっすよね」みたいなやり取りがあって。竜斗はそれほど映画の経験がないのに、俺から「どうする?」と聞かれるから、「自分が健太さんに教えているのはすごく不思議な感覚でした」と言っていました(笑)。もちろん俺が演じる翔太の気持ちを第一にしてアクションをするんですが、そうすると撮影後にぐわーって竜斗が近寄ってきて、「めっちゃ良かったです!僕もあんな感じになると思います」と感想を伝えてくれました。だから翔太が乗り移ったハルは、竜斗と作り上げた役だと感じています。竜斗を始め、バンドメンバー、スタッフさんまでも、前から知っていたみたいな関係になれました。

――翔太からハルに切り替わるときはどのように演じましたか?

桐谷 年を取ったハルを演じてくださった⼩池美津弘さんは、俺が現場に入る前に演じてくださっていたんです。ただ⼩池さんの演じたハルと、俺が脚本でイメージした若い頃のハルはイメージが違っていて。小池さんの演じた年を取ったハルの、ほんわかした感じに寄せすぎると、翔太との差がつきにくいなと。若い頃は勢いのあったハルが、いろいろな経験を経て、小池さんが演じたハルになっても全然おかしくないので、そこは俺の感覚でやらせてもらいました。