山田涼介のヒーローとしての資質

――怪獣処理の任務を負うことになる特務隊の帯刀アラタに、山田涼介さんをキャスティングされた理由を教えてください。

三木 帯刀アラタという役は、ある種ヒーローになってもらわなきゃいけない。ヒーローの立ち方ができる役者はなかなかいなくて、いくつかの選択肢の中から、山田涼介がいいんじゃないかなという話になりました。

――山田さんにどのような演技を要求されましたか?

三木 山田君は「監督からは、現場でそんなに指示はなかったです」と取材で言っていましたが、確かにそうかもしれません。彼が元々もっているものが大きかった。夕方の崖の上で長いカットを撮らなきゃいけなかったんですが、一番良いマジックアワーのタイミングは3分もない。山田君はヒロイックな立ち方を身につけているので、そんな状況でもきちんと決めてくれました。

――立ち方というのは役者さんによってそれほど違うものなんですね。

三木 ポケットに手を突っ込んで斜めに立つような立ち方なら、できる役者は多いんです。でも問題に立ち向かうように、すっと立てる役者さんは意外と少ない。アラタはセリフ量がそれほど多くないので、主役として与えられた難題に対してどう立ち向かうかを表す立ち方が一つのポイントになりました。

――山田さんがそういったヒロイックな立ち方が可能なのは、どんなところに理由があると思われますか?

三木 僕の予想ですが、運動神経もあるでしょうし、あとは体幹のコントロール。山田君はジャニーさんが演出された公演で、やったことないのにいきなり綱渡りをやらされたことがあったそうで、そのときに体幹が鍛えられたようなことを話していました。

――環境大臣秘書官の雨音ユキノ役に、土屋太鳳さんをキャスティングした理由を教えてください。

三木 目です。映画の中でまっすぐ見る感じがほしくて。「土屋太鳳は目線をどういうふうに取ってくるのかな、もしかしたら面白いかもな」と思いました。どの作品でも、主役のキャスティングを決定する前にはお会いして、渡した脚本に対してどう感じてくれているのかという話を聞いてから、最終的にGOを出します。彼女に会ったときの目線の取り方・目の表情が、ユキノにふさわしいと思いました。

――そこに総理秘書でユキノの夫である雨音正彦を演じる濱田岳さんが加わり、そのアンサンブルが話の中心になります。

三木 雨音正彦は、気持ちは純粋なんだけれど、国に奉仕していく上で歪んでいったキャラクター。濱田君に関しては、演技面で今まで使っていないチャンネルを使えたらイメージが変わって面白いんじゃないかなと。

――濱田さんはリハーサルをしっかりやったことで役を掴めたとおっしゃっていました。

三木 僕の芝居の作り方は、リハーサルの段階で動きやタイミングを伝えて、段取りは作っておき、現場では役者の創造性に委ねる感じです。例えばある大事なシーンで、目線を動かさないというアイデアは山田君が持ってきてくれました。

――役者のアイデアを積極的に取り入れていらっしゃるんですね。

三木 役者は手ぶらで来ないですから。今回の二階堂ふみやオダギリジョーにしてもそうです。話すときに手をどこに置いているのか、どういうセリフの落とし方をするのか、さすがに手ぶらでは来ない。それは染谷(将太)も菊地(凛子)もそうですし、内閣の面々についてもそう。段取りは組んでいるけど、プラスアルファについては役者が持ち込むものだろうと思っています。

――今回は特撮班が入り、今までとは違った映画の作り方になったかと思います。特撮シーンの撮影にもほぼ立ち会われていたそうですね。

三木 そうですね。基本的には共同で作ります。僕はこういうイメージがあるからこうしたいというリクエストに対して、彼らの技術で「こういうときにはこうした方がいい」と言ってくれます。向こうが譲歩してくれたのか、やりにくさは全くなかったです。

――改めて巨大怪獣を撮ってみていかがですか?

三木 すごく楽しかったです。SF的な想像力の自由さというか。最近の日本映画でこんなに自由に作っていいのかなというぐらい自由にやらせてもらったので、その意味では幸せでした。